【所得税】住宅ローン控除の論点を税理士が解説!〜⑦住宅ローンの種類〜
2024/05/13
はじめに
皆様は住宅ローン控除を利用したことがありますでしょうか。
マイホームの購入等に当たっては、通常金融機関から借入を行うこととなりますが、住宅ローンは人生においてとても大きな決断であり、相当なプレッシャーがかかるものかと思います。さらに住宅ローンは通常長期間にわたって金利負担が大きくのしかかり、経済的にも圧迫を受けることとなります。こうした負担を軽減するために制定されたのが住宅ローン控除(正式名称は「住宅借入金等特別控除」と言います。)です。
今回はこの住宅ローン控除について、細かい論点を含め解説いたします。なお、今回は令和5年度の所得税の申告時点に基づく法令にて解説を行いますので、令和6年度の確定申告にあたって改正されたものが公表された場合には、順次解説いたします。
なお、住宅ローン控除の基礎的な情報をまとめたものや、年末調整時に記入する「住宅借入金等特別控除申告書」の書き方などを、別途当ブログにて解説していますので、ぜひそちらも併せてご覧ください。
【基礎論点】所得税の仕組みを税理士が解説!⑮税額計算及び税額控除(住宅借入金等特別控除)
【2023年】年末調整の全てを徹底解説!⑤〜住宅借入金等特別控除申告書の書き方〜
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得または増改築等(以下「取得等」といいます。)をした場合で、一定の要件を満たすときに、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除する制度のことをいい、細かく「住宅借入金等特別控除」と「特定増改築等住宅借入金等特別控除」に分かれます※ 。
第7回は住宅ローン控除の適用の前提となる、住宅ローンの種類について解説いたします。
※ 令和4年以後に住宅ローン等を利用し、特定の増改築等を行い居住の用に供した場合には、特定増改築等住宅借入金等特別控除を受けることができません。
住宅ローンの借入先の種類
住宅ローンの借入先は大きく「公的融資」と「民間融資」と「フラット35」に分けられます。
公的融資
公的融資はさらに「財形住宅融資」と「自治体融資」に分けられます。
「財形住宅融資」は、企業が福利厚生制度として設けている融資で、当該制度を導入している企業に勤務している人のみが借りることができます。
「自治体融資」は、地方自治体が設けている融資で、当該制度を導入している都道府県や市町村に居住している人のみが借りることができます。
民間融資
民間融資はメガバンクや地方銀行、信用金庫のほか、ネット銀行等や住宅ローン専門の金融機関、JAバンクローンなどがあり、それぞれ様々な特徴を持った住宅ローンです。
フラット35
フラット35とは、公的融資と民間融資の中間に位置する融資の形態です。住宅金融支援機構が提供している住宅ローンで申込条件も緩く、後述する全期間固定型の金利である点が特徴です。
住宅ローンの金利の種類
住宅ローンの金利は、大きく「変動金利」と「固定金利」に分けられます。
変動金利
変動金利は、通常半年ごとに金利が見直されるタイプです。
固定金利に比べると金利が低く設定されており、金利が下がると、将来の返済額はさらに少なくなりますが、金利が上がると、将来の返済額は多くなるのが特徴です。実際は、半年ごとに金利が見直されても実際の返済額の見直しは5年に一度であることがほとんどで、また、見直される返済額も、見直し前の額から125%を超えてはならないというルールが設けられる場合がほとんどです。
固定金利
固定金利はさらに「固定期間選択型」と「全期間固定型」に分けられます。
固定期間選択型は、契約時に2年、3年、5年、10年などの期間を決め、その期間について金利を固定するタイプです。
当初の期間が終了した後は、変動金利型にするか、再び固定期間を選択するかを選ぶことができます。
変動金利に比べると金利が高く設定されていますが、後述する全期間固定型よりも金利が低く設定されていることが特徴です。
全期間固定型は、その名の通り、返済開始から完済まで毎月の金利が固定されているタイプです。
金利の種類の中では一番金利が高く設定されていますが、返済額が変わらず安心感があるのが特徴です。
住宅ローンの返済方法の種類
住宅ローンの返済方法は、「元利均等返済」と「元金均等返済」に分けられます。
元利均等返済
元利均等返済は、利息を含む毎月の返済額が一定である返済方法です。返済開始の初めは元金均等返済よりも返済額は少なくなりますが、総返済額は元金均等返済よりも多くなるのが特徴です。
元金均等返済
元金均等返済とは、元金部分の支払いが一定である返済方法です。返済開始は借入残高が大きいため、元利均等返済よりも利息が高く返済額が多くなりますが、返済が進むにつれ返済額が少なくなり、総返済額も元金均等返済より少なくなるのが特徴です。
住宅ローンの借入金額を増やす方法
住宅ローンは単独で借りるよりも、配偶者等と協力して借りた方が借入金額を大きく設定することができます。2人で住宅ローンを借りる際の方法としては、「連帯債務型」「連帯保証型」「ペアローン」の3種類があります。
連帯債務型
連帯債務型は、夫婦の収入を合算して審査を行い、一人が住宅ローンの主債務者となり、もう一人もその住宅ローンの連帯債務者となる方法です。
連帯債務型の場合、連帯債務者も住宅や土地の所有権の持分を登記できるため、住宅ローン控除の適用を受けることができるのがメリットである反面、取り扱っている金融機関が限られており、フラット35以外だと連帯債務者は団体信用生命保険に加入できないというデメリットもあります。
連帯保証型
連帯保証型は、夫婦の収入を合算して審査を行い、一人が住宅ローンの債務者となり、もう一人がその住宅ローンの連帯保証人となる方法です。
連帯保証型の場合、債務者は団体信用生命保険に加入することができるため、万が一債務者が死亡してしまった場合に、連帯保証人は住宅ローンの支払いが免除されるというメリットがある反面、連帯保証人は住宅ローン控除が適用されないというデメリットもあります。
ペアローン
ペアローンは、夫婦それぞれに別の住宅ローンを組み、お互いが住宅ローンの債務者と、さらにもう一方の住宅ローンの連帯保証人となる方法です。
ペアローンの場合、どちらも債務者であるため団体信用生命保険に加入することができ、さらに住宅ローン控除の適用も可能となるメリットがある反面、それぞれ別の住宅ローンであるため、印紙代や事務手数料などの費用が2倍になるというデメリットもあります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は住宅ローンの種類について、様々な観点から違いを解説しましたが、ご覧いただけたように一口に住宅ローンといっても、特徴は様々です。生涯に何度もない選択だと思いますので、事前にしっかり確認してから借入を行うことをお勧めします。
次回は住宅を共有名義とした場合について解説します。
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