【所得税】住宅ローン控除の論点を税理士が解説!〜⑪災害を受けた場合〜
2024/05/22
はじめに
皆様は住宅ローン控除を利用したことがありますでしょうか。
マイホームの購入等に当たっては、通常金融機関から借入を行うこととなりますが、住宅ローンは人生においてとても大きな決断であり、相当なプレッシャーがかかるものかと思います。さらに住宅ローンは通常長期間にわたって金利負担が大きくのしかかり、経済的にも圧迫を受けることとなります。こうした負担を軽減するために制定されたのが住宅ローン控除(正式名称は「住宅借入金等特別控除」と言います。)です。
今回はこの住宅ローン控除について、細かい論点を含め解説いたします。なお、今回は令和5年度の所得税の申告時点に基づく法令にて解説を行いますので、令和6年度の確定申告にあたって改正されたものが公表された場合には、順次解説いたします。
なお、住宅ローン控除の基礎的な情報をまとめたものや、年末調整時に記入する「住宅借入金等特別控除申告書」の書き方などを、別途当ブログにて解説していますので、ぜひそちらも併せてご覧ください。
【基礎論点】所得税の仕組みを税理士が解説!⑮税額計算及び税額控除(住宅借入金等特別控除)
【2023年】年末調整の全てを徹底解説!⑤〜住宅借入金等特別控除申告書の書き方〜
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得または増改築等(以下「取得等」といいます。)をした場合で、一定の要件を満たすときに、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除する制度のことをいい、細かく「住宅借入金等特別控除」と「特定増改築等住宅借入金等特別控除」に分かれます※ 。
第11回は災害を受けた場合の住宅ローン控除の取り扱いについて解説します。
※ 令和4年以後に住宅ローン等を利用し、特定の増改築等を行い居住の用に供した場合には、特定増改築等住宅借入金等特別控除を受けることができません。
災害を受けた場合の住宅ローン控除
住宅ローン控除の要件には、「その年の年分の12月31日まで引き続き居住の用に供していること。」というものがあるため、この要件に該当しなくなった場合にはその年以降、住宅ローン控除の適用ができなくなってしまいます。しかし、災害により引き続き居住することができなくなってしまう場合には、次の場合を除き、住宅ローン控除を引き続き適用することができます。
①災害により居住できなくなった住宅、土地、その土地に新しく建築した建物等を事業の用・賃貸の用・親族等に
無償での貸付の用に供した場合
②災害により居住できなくなった住宅、土地等を譲渡し、居住用財産の譲渡損失の特例及び繰越控除を使用する場合
③災害により居住できなくなった者が新たに取得した住宅につき住宅ローン控除の適用を受ける場合
なお、③については、再建支援法適用者※ が住宅を新たに取得等をした場合には、災害により居住できなくなった住宅等に係る住宅ローン控除と、新しく取得等をした住宅に係る住宅ローン控除等を重複して適用できます。この重複適用の特例を受けるためには、確定申告の際に次の書類を確定申告書に添付する必要があります。
・従前の住宅の被害の状況等を証する書類(り災証明書)(写し可)
・従前の住宅の登記事項証明書(滅失した住宅については閉鎖登記記録に係る登記事項証明書)(原本)
※ 再建支援法とは、自然災害により10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村において、自身の居住していた住宅が一定の状態に該当した場合に、生活の再建をするために支援金の支給を受けられる制度です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
災害によって被災した方々は生活を立て直すことが第一優先であり、実際に被災した後で細かな税制について検討している時間や余裕はないかもしれません。そのため、事前に様々な優遇税制について頭の片隅に入れておいていただき、いざという時に有効活用できるようにしておいていただければと思います。
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