健康保険の保険給付について社労士が解説!⑧〜傷病手当金〜
2025/10/13
はじめに
健康保険は、企業に勤める従業員やその被扶養者が業務上以外の理由で病気や怪我、死亡、出産をした場合に、保険給付を行うことを目的とした社会保障制度のひとつです。健康保険制度は医療保険制度の基本であり、高齢化の進展や、疾病構造の変化、社会経済状況の変化等に応じて定期的に改正がなされているため、情報を常にアップデートする必要があります。当ブログでは、複数回にわたって健康保険に関する基本的な知識や、間違えやすい論点などを解説していきます。
前々回から健康保険の保険給付についての解説をしています。保険給付は病院で診察等を受ける以外にも、下記の通り多くの種類があります。
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保険事故 |
被保険者に関する保険給付 |
被扶養者に関する保険給付 |
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疾病または負傷 |
療養の給付 |
家族療養費 |
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入院時食事療養費 |
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入院時生活療養費 |
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保険外併用療養費 |
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療養費 |
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訪問看護療養費 |
家族訪問看護療養費 |
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高額療養費 |
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高額介護合算療養費 |
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移送費 |
家族移送費 |
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傷病手当金 |
ー |
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出産 |
出産育児一時金 |
家族出産育児一時金 |
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出産手当金 |
ー |
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死亡 |
埋葬料(埋葬費) |
家族埋葬料 |
このうち、今回は傷病手当金について解説します。
傷病手当金の要件
傷病手当金とは、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。傷病手当金が支給されるための要件は下記の通りです。
① 任意継続被保険者及び特例退職被保険者ではないこと
任意継続被保険者については、資格喪失後の傷病手当金の継続給付を受ける際には、傷病手当金を受けられる可能性があります。資格喪失後の傷病手当金の継続給付については後日解説します。
② 業務外の事由かつ保険事故となる病気や怪我の療養のための休業であること
業務上の事由による病気や怪我は労働保険の対象となるため、傷病手当金は支給されません。また、美容整形手術等の保険事故でないものについても、傷病手当金は支給されません。
反対に、自費で診療を受けた場合や、自宅療養であっても、相当の証明がある場合には支給対象となります。
③ 労務に服することができないこと
障害状態となった者が、症状が固定し、療養の必要がなくなった場合、その時点で障害が残っていても支給停止となります。
また、コロナウイルスやインフルエンザウイルスの濃厚接触者であるため、事業主が休業を命じた場合は、症状がない場合については傷病手当金は支給されません(ただし休業手当は受けられます。)
反対に、休業を要する程度のものでなくても、通院のため事実上労務に服せない場合や、本来の業務ではなく、代替的性格を持たない軽微な他の労務に服する場合には、傷病手当金の対象となります。
④ 継続した3日間の待期を満たしたこと
傷病手当金は、仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。また、就労時間中に業務外の事由で発生した病気や怪我について仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算されます。
傷病手当金の支給額
傷病手当金の1日あたりの支給額は、原則として下記のⒶで計算した額となります。しかし、支給開始日以前の加入期間が12ヵ月に満たない場合は、ⒷⒸのいずれか低い額が支給額となります。

なお、傷病手当金は、同一の疾病または負傷に関して、支給を始めた日から通算して1年6ヶ月間を限度としています。欠勤と出勤を繰り返している場合には、欠勤が合計で1年6ヶ月間になるまで、支給が認められているということです。
傷病手当金の併給調整
傷病手当金は、下記の場合には支給額が調整されることとなっています。
① 出産手当金が受けられる場合
傷病手当金と出産手当金の両方を受けることができる場合、出産手当金が優先され、傷病手当金は支給停止されます。しかし、出産手当金よりも傷病手当金の金額の方が大きい場合は、差額が傷病手当金として支給されます。
出産手当金については、後日解説します。
② 報酬が受けられる場合
傷病手当金を受けることができる期間で報酬を受けることができる場合、傷病手当金は支給停止されます。しかし、報酬よりも傷病手当金の金額の方が大きい場合は、差額が傷病手当金として支給されます。
報酬には、就業規則等で定められた休業手当や災害見舞金等も含まれますが、何ら成文もなく、慣例として恩給的に支給しているものは含まれないこととなっています。
③ 障害厚生年金または障害手当金が受けられる場合
傷病手当金を受けることができる期間で、同一の病気や怪我で障害厚生年金を受けることになったときは、傷病手当金は支給停止されます。ただし、障害厚生年金の額(同時に障害基礎年金を受けられるときはその合計額)の360分の1よりも傷病手当金の金額の方が大きい場合は、差額が傷病手当金として支給されます。また、厚生年金保険法による障害手当金が受けられる場合は、傷病手当金の額の合計額が、障害手当金の額に達する日まで傷病手当金は支給されません。
④ 休業補償給付が受けられる場合
過去に労災保険から休業補償給付を受けていて、その際の先天性の疾病が悪化して傷病手当金の支給要件を満たすことがありますが、この場合、傷病手当金は支給停止されます。また、業務外の理由による病気やケガのために労務不能となった場合でも、別の原因で労災保険から休業補償給付を受けている期間中は、傷病手当金は支給停止されます。しかし、休業補償給付よりも傷病手当金の金額の方が大きい場合は、差額が傷病手当金として支給されます。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は傷病手当金について解説しました。傷病手当金は働けない期間の生活を支える非常に重要な制度です。要件の1つである継続した3日間の待期などは、とても見落としがちですので、うっかり傷病手当金を支給できなくなることのないようにしましょう。
次回は埋葬料及び埋葬費について解説していきます。
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