意外と知らない健康保険の落とし穴について社労士が解説!⑩〜育児休業等終了時改定・産前産後休業終了時改定〜
2025/07/14
はじめに
健康保険は、企業に勤める従業員やその被扶養者が業務上以外の理由で病気や怪我、死亡、出産をした場合に、保険給付を行うことを目的とした社会保障制度のひとつです。健康保険制度は医療保険制度の基本であり、高齢化の進展や、疾病構造の変化、社会経済状況の変化等に応じて定期的に改正がなされているため、情報を常にアップデートする必要があります。当ブログでは、複数回にわたって健康保険に関する基本的な知識や、間違えやすい論点などを解説していきます。
第10回は育児休業等終了時改定・産前産後休業終了時改定についてです。
標準報酬月額とは 【第7回掲載済み】
標準報酬月額とは、健康保険料の金額を算出する際に用いる、従業員の給与を段階的に区分して表したものです。
標準報酬月額による健康保険料は都道府県や健康保険組合ごとに異なります。例えば茨城県の協会けんぽにおける令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険料の保険料額表は下記のとおりです。

標準報酬の対象となる報酬は、基本給のほか、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当等、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるすべてのものを指します。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、報酬から除かれます。現物給与に関しては、都道府県ごとに定められた、その地方の時価によって決定されます。
また、2以上の事業所にて勤務している従業員は、それぞれの事業所で受け取る報酬を合計したものをもって、1つの標準報酬月額を決定し、それによって決定した健康保険料を、報酬の割合によって按分します。
育児休業等終了時改定とは
育児休業等終了時改定とは、育児休業などで休んでいた従業員が職場復帰し、報酬が変動した場合に社会保険の標準報酬月額を見直すことができる制度をいいます。育児休業後の時短勤務などで報酬が減るケースが多く、そのままでは高い標準報酬月額が残ってしまうことから、実態に合った健康保険や厚生年金保険の保険料にするための手続きとなります。
育児休業等終了時改定によって標準報酬月額が改定できるのは、原則3歳未満の子の育児する被保険者が育児休業から復帰した場合となります。なお、育児休業終了の翌日から、新たに産前産後休業を開始するケースにおいては、後述する産前産後休業終了時改定を適用することから、育児休業等終了時改定は適用できません。
育児休業等終了時改定は、随時改定の場合のような要件はありませんので、固定的賃金の変更がなくてもよく、2等級以上の差が生じてなくても改定することができます。また、標準報酬月額の計算にあたっては、職場復帰した日の属する月以後3月間に受けた報酬を使用しますが、報酬支払基礎日数が17日(4分の3未満短時間労働者は11日)未満の月は計算から除かれるため、報酬支払基礎日数が17日未満の月があっても大丈夫です。
育児休業等終了時改定の改定月・届出
育児休業等終了時改定の改定月
育児休業等終了時改定は、職場復帰した日の属する月の4ヶ月目から改定されます。そして改定月が1月〜6月の場合、その年の8月までが有効期間となり、改定月が7月〜12月の場合、翌年の8月までが有効期間となります。ただし、これらの有効期間内に、他の改定がなされる場合には、他の改定による改定月の前月までが有効期間となります。
育児休業等終了時改定の届出
育児休業等終了時改定を行うか否かについては、被保険者の意向が考慮されることから、手続きとしては被保険者本人が事業主を経由して保険者に申し出るという形をとります。
育児休業等終了時改定の届出は、特に期限が定められているわけではありませんが、被保険者からの申出を受けた事業主が速やかに、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出することとされています。記載方法については、下記を参考にしてください。

(出典:日本年金機構 健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額相当額変更届(記入例))
産前産後休業終了時改定とは
産前産後休業終了時改定とは、出産で休んでいた従業員が職場復帰し、報酬が変動した場合に社会保険の標準報酬月額を見直すことができる制度をいいます。産休からの復帰後は、時短勤務などで報酬が減るケースが多く、そのままでは高い標準報酬月額が残ってしまうことから、実態に合った健康保険や厚生年金保険の保険料にするための手続きとなります。
産前産後休業終了時改定によって標準報酬月額が改定できるのは、産前産後休業に係る子を養育する被保険者が産前産後休業から復帰した場合となります。なお、産前産後休業終了の翌日から、育児休業を開始するケースにおいては、前述した育児休業等終了時改定を適用することから、産前産後休業終了時改定は適用できません。
産前産後休業終了時改定は、随時改定の場合のような要件はありませんので、固定的賃金の変更がなくてもよく、2等級以上の差が生じてなくても改定することができます。また、標準報酬月額の計算にあたっては、職場復帰した日の属する月以後3月間に受けた報酬を使用しますが、報酬支払基礎日数が17日(4分の3未満短時間労働者は11日)未満の月は計算から除かれるため、報酬支払基礎日数が17日未満の月があっても大丈夫です。
産前産後休業終了時改定の改定月・届出
産前産後休業終了時改定の改定月
産前産後休業終了時改定は、職場復帰した日の属する月の4ヶ月目から改定されます。そして改定月が1月〜6月の場合、その年の8月までが有効期間となり、改定月が7月〜12月の場合、翌年の8月までが有効期間となります。ただし、これらの有効期間内に、他の改定がなされる場合には、他の改定による改定月の前月までが有効期間となります。
産前産後休業終了時改定の届出
産前産後休業終了時改定を行うか否かについては、被保険者の意向が考慮されることから、手続きとしては被保険者本人が事業主を経由して保険者に申し出るという形をとります。
産前産後休業終了時改定の届出は、特に期限が定められているわけではありませんが、被保険者からの申出を受けた事業主が速やかに、「産前産後休業終了時報酬月額変更届」を提出することとされています。記載方法については、下記を参考にしてください。

(出典:日本年金機構 健康保険・厚生年金保険 産前産後休業終了時報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者産前産後休業終了時報酬月額相当額変更届(記入例))
まとめ
いかがだったでしょうか。
育児休業等終了時改定や産前産後休業終了時改定は、職場復帰後の従業員の保険料負担を軽減させる大切な規定ですので、適用漏れのないように、従業員から適用するか否かのヒアリングを怠らないようにしましょう。現在は便利な電子申請(参考:日本年金機構H P)による提出も可能となっていますので、こちらも併せて確認いただくと良いかと思います。
次回は、任意継続被保険者等の標準報酬月額について解説します。
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