意外と知らない健康保険の落とし穴について社労士が解説!⑦〜標準報酬月額の定時決定〜
2025/06/23
はじめに
健康保険は、企業に勤める従業員やその被扶養者が業務上以外の理由で病気や怪我、死亡、出産をした場合に、保険給付を行うことを目的とした社会保障制度のひとつです。健康保険制度は医療保険制度の基本であり、高齢化の進展や、疾病構造の変化、社会経済状況の変化等に応じて定期的に改正がなされているため、情報を常にアップデートする必要があります。当ブログでは、複数回にわたって健康保険に関する基本的な知識や、間違えやすい論点などを解説していきます。
第7回は標準報酬月額の定時決定についてです。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、健康保険料の金額を算出する際に用いる、従業員の給与を段階的に区分して表したものです。
標準報酬月額による健康保険料は都道府県や健康保険組合ごとに異なります。例えば茨城県の協会けんぽにおける令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険料の保険料額表は下記のとおりです。

標準報酬の対象となる報酬は、基本給のほか、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当等、労働の対償として事業所から現金又は現物で支給されるすべてのものを指します。ただし、臨時に受けるもの及び3月を超える期間ごとに受けるものは、報酬から除かれます。現物給与に関しては、都道府県ごとに定められた、その地方の時価によって決定されます。
また、2以上の事業所にて勤務している従業員は、それぞれの事業所で受け取る報酬を合計したものをもって、1つの標準報酬月額を決定し、それによって決定した健康保険料を、報酬の割合によって按分します。
定時決定とは
標準報酬月額は、毎月算出されるものではなく、4月〜6月の3ヶ月間の報酬をもとに算出されます。これを定時決定といいます。決定した標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。
定時決定は原則、7月1日現在で使用している全被保険者について算定されますが、下記の従業員は対象外となります。
・6月1日以降に資格取得した従業員
・7月改定の月額変更届を提出する従業員
・8月または9月に随時改定が予定されている旨の申し出を行った従業員
4月〜6月の3ヶ月間の報酬について
算定に用いられるのは、4月〜6月に実際に支払われた報酬です。また、その月の報酬支払いの基礎となった日数が17日未満である月は除いて算定されることとなります。
例えば、月末締め翌月払いの企業において、4月15日入社の社員がいた場合、4月の報酬はゼロであるため算定からは除かれ、5月の報酬は4月15日から4月30日までの15日分のみのためこちらも除かれます。結果的に6月に支給される5月分の報酬をもって標準報酬月額が算定されることとなります。
なお、4月〜6月の報酬支払いの基礎となった月がいずれも17日未満の場合は、従前の標準報酬月額を用いることとなります。
一時帰休が発生した場合
一時帰休(企業の業績悪化などで仕事量が減った際に、従業員を解雇せずに一時的に休業させること)が発生した場合、休業手当が支払われることとなりますが、標準報酬月額の決定にあたっては、当該休業手当をもって、報酬月額を算定することとなります。しかし4月〜6月のいずれも休業手当が支払われている場合は、従前の標準報酬月額を用いることとなります。また、一時気球の期間が3ヶ月以上続いている場合には随時改定の対象になる場合があります。(随時改定の詳細は後日解説します。)
4月〜6月の報酬が著しく高くなる場合
繁忙期の関係で、4月〜6月の3ヶ月間に受ける報酬の額のみ著しく高額になってしまうと、年間平均で見た場合に、通常よりも標準報酬月額が高くなってしまい、不利になってしまうケースがあります。
よって、4月〜6月の報酬(報酬支払いの基礎となった日数が17日未満の月は除きます。)の平均額から算出した標準報酬月額と、前年7月から当年の6月までの報酬(報酬支払いの基礎となった日数が17日未満の月は除きます。)の平均額から算出した標準報酬月額に 2 等級以上の差が生じた場合であって、その差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合には、前年7月から当年の6月までの報酬の平均額から算出した標準報酬月額を用いることができます。
短時間就労者、短時間労働者の定時決定
短時間就労者(パートやアルバイトなど、正規社員より短時間の労働条件で勤務する従業員)の定時決定は、次の方法により行われます。
・4月〜6月の3カ月間のうち支払基礎日数が17日以上の月が1カ月以上ある場合
該当月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。
・4月〜6月の3カ月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合
3カ月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。
・4月〜6月の3カ月間のうち支払基礎日数がいずれも15日未満の場合
従前の標準報酬月額にて引き続き定時決定します。
また、短時間労働者※の定時決定は、4月〜6月のいずれも支払基礎日数が11日以上で算定することとなります。
※ 短時間労働者とは、通常の労働者の1週間の所定労働時間または1月の所定労働日数が4分の3未満である従業員で、以下のAからDのすべてに該当する従業員を指します。
A. 週の所定労働時間が20時間以上
B. 所定内賃金が月額8.8万円以上
C. 高等学校の生徒、大学または短期大学の学生、専修学校に在学する生徒でないこと
D. 短時間労働者を除く厚生保険の被保険者の総数が、50人を超える事業所(特定適用事業所)もしくは任意特定適用事業所に属していること
定時決定の届出
定時決定の届出は、毎年7月10日までに算定基礎届を管轄の年金事務所に提出することによって行われます。算定基礎届の記載方法については、下記を参考にしてください。

(出典:日本年金機構H P 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届 (記入例))
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は標準報酬月額の算定の原則である定時決定について解説しました。算定基礎届出の届出用紙は、6月中旬以降順次、事業所あてにお送りされているかと思いますので、当記事を参考に誤りの内容に提出できるようにしましょう。
次回は、標準報酬月額の資格取得時決定について解説します。
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