相続税の基礎知識を税理士が解説!⑩〜貸付事業用宅地等〜
2025/05/15
はじめに
相続税は、亡くなった人から相続人等が相続や遺贈などにより財産を取得した場合に課税される税金です。厚生労働省の「人口動態統計」によると、2022(令和4)年の死亡者数は1,569,050人で、そのうち相続税が課税された割合は9.6%と、約10人のうち約1人が相続税を支払っているということとなります。
相続税は所得税や消費税などとは異なり、一生のうちに何度も経験することはなく、難しい印象があるかと思います。実際に相続税の計算をするまでには、遺産分割から財産評価、特殊な税法の知識などの理解が必要です。
当ブログでは、今回から複数回にわたって、相続税に関して間違えやすいポイントを解説していきます。
第10回は小規模宅地等の特例の一つである、特定同族会社事業用宅地等についてです。
小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例とは、個人が相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人等の事業の用または居住の用に供されていた宅地等のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分について、相続税の課税価格が減額できる制度をいいます。相続人がこれらの宅地等を相続した場合、事業や居住の継続が不安なくできる様に配慮した特例となっています。この特例は宅地等が「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」に該当する場合にのみ適用可能となっています。
貸付事業用宅地等とは
貸付事業用宅地等とは、一定の要件を満たした相続開始の直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業および準事業に限ります。以下「貸付事業」といいます。)の用に供されていた宅地等のことを指します。しかし、相続開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地であっても、当該宅地が「3年以内貸付宅地等」の場合には、小規模宅地の特例を適用することができません。
「3年以内貸付宅地等」とは
「3年以内貸付宅地等」とは、相続の開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等を指します。しかし、被相続人が相続開始前3年を超えて継続的に事業的規模で貸付事業を営んでいる場合は、3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等であっても、「3年以内貸付宅地等」には該当しません。「事業的規模の貸付事業」とは、いわゆる「5棟10室基準」と言われる、『貸家などの独立家屋5棟以上、貸マンションやアパート10室以上』等の基準と同様と考えられます。
貸付事業用宅地等の適用要件
貸付事業用宅地等について、小規模宅地の特例を適用するためには、次の区分によっていくつかの要件があります。
① 被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等の場合
生前、被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等であった場合は、その宅地等の上で営まれていた被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限まで、その宅地等の上で貸付事業を営んでいることが要件となります。また、相続した宅地等を相続税の申告期限まで保有している必要があります。
② 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等の相続を受ける場合は、相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で貸付事業を営んでいることが要件となります。また、相続した宅地等を相続税の申告期限まで保有している必要があります。
小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の計算例
小規模宅地等の特例を適用することによって、被相続人が所有していた貸付事業用宅地の評価額を引き下げることができます。特定事業用宅地等を相続する場合における控除割合は下記の通りです。
| 選択する宅地等 | 限度面積 |
貸付事業用宅地等の評価額が減額される割合 |
| 貸付事業用宅地等のみの場合 | 200㎡ | 50% |
| 貸付事業用宅地等とそれ以外の宅地等を併用する場合 |
『(特定事業用等宅地等の面積)× 200/400 +(特定居住用宅地等の面積) × 200/330 +貸付事業用宅地等』の合計200㎡ |
50% |
(計算例)
・被相続人の所有していた貸付事業用宅地の面積:500㎡
・被相続人の所有していた貸付事業用宅地の評価額:5,000万円
⇨(減額される評価額):5,000万円 × 200㎡ / 500㎡ × 50% = 1,000万円
⇨(評価額):5,000万円 - 1,000万円 = 4,000万円
相続税の申告時に必要な添付書類
貸付事業用宅地等について小規模宅地の特例を適用するためには、相続税の申告が必要です。相続税の申告の際に必要となる書類は下記の通りです。
| 条件 | 必要書類 | 備考 |
| 全員 |
戸籍の謄本又は図形式の法定相続情報一覧図の写し |
戸籍謄本は、相続開始日から10日以後に作成されたものである必要があります。 |
| 全員 |
遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し |
遺産分割協議書の場合、印鑑証明を受けている印鑑を各相続人が押印する必要があります。 |
| 全員 |
相続人全員の印鑑証明書 |
|
| 全員 |
申告期限後3年以内の分割見込書 |
申告期限内に分割ができない場合のみ必要になります。 |
| 全員 | 確定申告書等、被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて特定貸付事業を行っていたことを明らかにする書類 | 貸付事業用宅地等が相続開始前3年以内に新たに被相続人等の特定貸付事業の用に供されたものである場合のみ、提出する必要があります。 |
その他の留意事項
相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等
相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等がある場合、当該宅地等は小規模宅地の特例を適用することができません。相続時精算課税は一度選択すると撤回できないため、慎重に検討する様にしましょう。
貸付宅地等に空室がある場合
貸付宅地等の敷地にアパートやマンションを建設しており、同様に貸付けを行っている場合、貸家のうち空室に相当する部分には、原則として小規模宅地等の特例は適用できないこととなっています。ただし、継続的に賃貸されていて、1ヶ月程度の一時的な空室である場合は、賃貸しているとみなしてよいことになっています。そのため、空室がある場合には速やかに新規入居者を募集し、空室を減らす対策が必要です。
駐車場を運営している場合
駐車場にも小規模宅地等の特例を適用することができますが、小規模宅地等の特例を適用するためには、宅地等の上に建物または構築物が建設されている必要があります。そのため、単純な青空駐車場では小規模宅地等の特例は適用できず、最低限コインパーキング等の設備を配置して、駐車場業と判断される規模で行う必要があります。
なお、所得税法における「5棟10室基準」においては、駐車場は概ね50台以上の駐車スペースがある場合、事業的規模があると判定されます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
小規模宅地の特例は、宅地の評価額を大幅に削減できる制度ですが、場合によっては要件が複雑となり、提出しなければいけない書類も多くなります。万が一不備があり特例が適用できなくなってしまうと、追加で多額の相続税を支払わなければいけなくなってしまう可能性もあるため、適用にあたっては専門家に相談することをお勧めします。
次回は相続する債務について解説します。
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