相続税の基礎知識を税理士が解説!⑦〜特定居住用宅地等〜
2025/04/25
はじめに
相続税は、亡くなった人から相続人等が相続や遺贈などにより財産を取得した場合に課税される税金です。厚生労働省の「人口動態統計」によると、2022(令和4)年の死亡者数は1,569,050人で、そのうち相続税が課税された割合は9.6%と、約10人のうち約1人が相続税を支払っているということとなります。
相続税は所得税や消費税などとは異なり、一生のうちに何度も経験することはなく、難しい印象があるかと思います。実際に相続税の計算をするまでには、遺産分割から財産評価、特殊な税法の知識などの理解が必要です。
当ブログでは、今回から複数回にわたって、相続税に関して間違えやすいポイントを解説していきます。
第7回は小規模宅地の特例の一つである、特定居住用宅地等についてです。
小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例とは、個人が相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人等の事業の用または居住の用に供されていた宅地等のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分について、相続税の課税価格が減額できる制度をいいます。相続人がこれらの宅地等を相続した場合、事業や居住の継続が不安なくできる様に配慮した特例となっています。この特例は宅地等が「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」に該当する場合にのみ適用可能となっています。
特定居住用宅地等とは
特定居住用宅地等とは、一定の要件を満たした相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた(自宅として使っていた)宅地のことを指します。要件に関しては、当該宅地を相続する相続人の続柄によって異なります。
① 配偶者の場合
配偶者が被相続人の自宅の相続を受ける場合は、要件はありません。無条件で特例を受けることが可能です。
② 同居親族の場合
同居親族が被相続人の自宅の相続を受ける場合は、相続開始前から相続税の申告期限まで引き続き当該自宅に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで所有していることが要件となります。つまり、親が亡くなる直前だけ同居するのでは、特例は適用されません。
③ ①②以外の親族
上記以外の親族が被相続人の自宅の相続を受ける場合は、下記のすべての要件を満たす必要があります。
A. 制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと。
B. 被相続人に配偶者がいないこと。
C. 相続開始の直前において同居相続人がいないこと。
D. 相続開始前3年以内に相続人、相続人の配偶者、相続人の3親等内の親族または相続人と特別の関係がある一定の法人が所有する日本国内の家屋に居住したことがないこと。(ただし、相続開始直前に被相続人が住んでいた家屋を除きます。)つまり、3年以上特定の親族以外から借家で暮らしていること。
E. 相続開始時に相続人が居住している家屋を、過去に所有していたことがないこと。
F. その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。
当該要件は、3年以上借家暮らしをしている親族を対象にしていることから、別名「家なき子特例」と呼ばれることがあります。
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の計算例
小規模宅地等の特例を適用することによって、被相続人が所有していた家屋の評価額を引き下げることができます。特定居住用宅地等を相続する場合における控除割合は下記の通りです。
| 選択する宅地等 | 限度面積 |
特定居住用宅地等の評価額が減額される割合 |
| 特定居住用宅地等のみの場合 | 330㎡ | 80% |
| 特定居住用宅地等と特定事業用等宅地等を併用する場合 | 合計730㎡ | 80% |
| 特定居住用宅地等と特定事業用等宅地等と貸付事業用宅地等を併用する場合 |
『(特定事業用等宅地等の面積)×200/400+特定居住用宅地等の面積×200/330 +貸付事業用宅地等』の合計200㎡ |
80% |
(計算例)
・被相続人の所有していた自宅の面積:400㎡
・被相続人の所有していた自宅の評価額:5,000万円
⇨(減額される評価額):5,000万円 × 330㎡ / 400㎡ × 80% = 3,300万円
⇨(評価額):5,000万円 - 3,300万円 = 1,700万円
相続税の申告時に必要な添付書類
小規模宅地の特例を適用するためには、相続税の申告が必要です。相続税の申告の際に必要となる書類は下記の通りです。
| 条件 | 必要書類 | 備考 |
| 全員 |
戸籍の謄本又は図形式の法定相続情報一覧図の写し |
戸籍謄本は、相続開始日から10日以後に作成されたものである必要があります。 |
| 全員 |
遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し |
遺産分割協議書の場合、印鑑証明を受けている印鑑を各相続人が押印する必要があります。 |
| 全員 |
相続人全員の印鑑証明書 |
|
| 全員 |
申告期限後3年以内の分割見込書 |
申告期限内に分割ができない場合のみ必要になります。 |
| 配偶者でない場合 |
住民票の写し |
相続人がマイナンバーを有する場合は提出不要です。 |
|
同居親族・配偶者のいずれにも該当しない場合 |
登記簿謄本又は賃貸借契約書 | 相続開始前3年以内に相続人が住んでいた家屋すべての提出が必要です。 |
| 被相続人が養護老人ホーム等に入所していた場合 |
被相続人の戸籍の附票の写し |
|
| 被相続人が養護老人ホーム等に入所していた場合 | 介護保険の被保険者証の写し又は障害者福祉サービス受給者証の写し | 被相続人が要介護認定若しくは要支援認定又は障害支援区分の認定を受けていたことを明らかにする必要があります。 |
| 被相続人が養護老人ホーム等に入所していた場合 | 施設への入所時における契約書の写し | 被相続人が相続開始の直前に入居していた施設が一定の老人ホームに該当するかを明らかにする必要があります。 |
その他の留意事項
相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等
相続時精算課税に係る贈与によって取得した宅地等がある場合、当該宅地等は小規模宅地の特例を適用することができません。相続時精算課税は一度選択すると撤回できないため、慎重に検討する様にしましょう。
完全分離型の二世帯住宅の場合
例えば、同じ建物内であっても、1階と2階で区分所有登記をしている場合は、被相続人と同居していないと判断されます。同居の判定は建物の構造上独立しているかなどは関係がないため注意しましょう。
単身赴任をしている場合
住民票上は同じ住所であっても、単身赴任等によって当該住所にはほとんど帰省しない場合は、被相続人と同居していないと判断されます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
小規模宅地の特例は、宅地の評価額を大幅に削減できる制度ですが、場合によっては要件が複雑となり、提出しなければいけない書類も多くなります。万が一不備があり特例が適用できなくなってしまうと、追加で多額の相続税を支払わなければいけなくなってしまう可能性もあるため、適用にあたっては専門家に相談することをお勧めします。
次回は小規模宅地の特例のうち、特定事業用宅地等について解説します。
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