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意外と知らない年次有給休暇の落とし穴について社労士が解説!⑤〜年次有給休暇に関する過去の裁判例〜

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意外と知らない年次有給休暇の落とし穴について社労士が解説!⑤〜年次有給休暇に関する過去の裁判例〜

意外と知らない年次有給休暇の落とし穴について社労士が解説!⑤〜年次有給休暇に関する過去の裁判例〜

2025/04/21

はじめに

 近年、コロナ禍で加速した働き方改革をはじめ、人手不足による労働環境の見直しの観点から、休暇に関する企業の考え方が変化しつつあります。その中でも年次有給休暇は労働基準法上規定された労働者の基本の権利です。

 年次有給休暇は、一定の要件を満たす従業員に対して付与されるもので、労働基準法では、労働者の健康を守るために、休日のほか毎年一定日数与えることを規定していますが、当ブログでは今回から、年次有給休暇に関して、意外と知られていない論点や間違えやすい事項を複数回にわたって解説します。

 第5回は年次有給休暇の法的性質に関する過去の裁判例についてです。

 

年次有給休暇の法的性質に関して争われた事件 〜林野庁白石営林署事件

(最2小判昭和48年3月2日)〜

 判旨

 労基法三九条一、二項の要件が充足されたときは、当該労働者は法律上当然に右各項所定日数の年次有給休暇の権利を取得し、使用者はこれを与える義務を負うのであるが、この年次休暇権を具体的に行使するにあたっては、同法は、まず労働者において休暇の時季を「請求」すべく、これに対し使用者は、同条三項但書の事由が存する場合には、これを他の時季に変更させることができるものとしている。かくのごとく、労基法は同条三項において「請求」という語を用いているけれども、年次有給休暇の権利は、前述のように、同条一、二項の要件が充足されることによって法律上当然に労働者に生ずる権利であって、労働者の請求をまって始めて生ずるものではなく、また、同条三項にいう「請求」とは、休暇の時季にのみかかる文言であって、その趣旨は、休暇の時季の「指定」にほかならないものと解すべきである。
 (中 略)
 年次有給休暇に関する労基法三九条一項ないし三項の規定については、以上のように解されるのであって、これに同条一項が年次休暇の分割を認めていることおよび同条三項が休暇の時季の決定を第一次的に労働者の意思にかからしめていることを勘案すると、労働者がその有する休暇日数の範囲内で、具体的な休暇の始期と終期を特定して右の時季指定をしたときは、客観的に同条三項但書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、右の指定によって年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解するのが相当である。すなわち、これを端的にいえば、休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生するのであって、年次休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」の観念を容れる余地はないものといわなければならない
 (中 略)
 年次有給休暇の権利は、労基法三九条一、二項の要件の充足により、法律上当然に労働者に生ずるものであって、その具体的な権利行使にあたっても、年次休暇の成立要件として「使用者の承認」という観念を容れる余地のないことは、第一点につき判示したとおりである。年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であると解するのが相当である。
 〔年休―年休の自由利用(利用目的)―一斉休暇闘争〕
 いわゆる一斉休暇闘争とは、これを、労働者がその所属の事業場において、その業務の正常な運営の阻害を目的として、全員一斉に休暇届を提出して職場を放棄・離脱するものと解するときは、その実質は、年次休暇に名を藉りた同盟罷業にほかならない。したがって、その形式いかんにかかわらず、本来の年次休暇権の行使ではないのであるから、これに対する使用者の時季変更権の行使もありえず、一斉休暇の名の下に同盟罷業に入った労働者の全部について、賃金請求権が発生しないことになるのである。
 しかし、以上の見地は、当該労働者の所属する事業場においていわゆる一斉休暇闘争が行なわれた場合についてのみ妥当しうることであり、他の事業場における争議行為等に休暇中の労働者が参加したか否かは、なんら当該年次休暇の成否に影響するところはない。けだし、年次有給休暇の権利を取得した労働者が、その有する休暇日数の範囲内で休暇の時季指定をしたときは、使用者による適法な時季変更権の行使がないかぎり、指定された時季に年次休暇が成立するのであり、労基法三九条三項但書にいう「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断は、当該労働者の所属する事業場を基準として決すべきものであるからである。

 

 解説

 白石営林署事件は従業員が他企業の抗議闘争に参加するため2日間の年次有給休暇を申請し、出勤しなかったものの、会社側が当該請求を不承認として2日分の賃金をカットしたことから、従業員が賃金支払いを求めて提訴したものです。年次有給休暇の取得に使用者の承認が必要かが争点となりました。

 判決では、従業員が年次有給休暇の取得時季を具体的に指定したときは、会社側の承認という考えが入り込む余地はなく、会社側が時季変更権の行使をしない限り、年次有給休暇は成立するとしています。

 また、休暇をどのように利用するかは、従業員の自由ですが、業務の正常な運営を阻害する目的で、従業員が一斉に年次有給休暇を取得する行為(一斉休暇闘争)はストライキと同義であるため、本来の年次有給休暇ではなく、賃金の請求権は発生しないともしています。

 さらに、労働基準法第39条第5項但し書きに記載される、事業の正常な運営を妨げる場合に認められる時季変更権については、その従業員が所属する事業場の事業の正常な運営を妨げるか否かで判断されるため、当事件のように、他の会社のストライキに参加したものは、従業員が所属する会社の事業の正常な運営に支障を与えることもないため、年次有給休暇は有効に成立すると判断されました。

 

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 年次有給休暇は、使用者の承認という考えが入り込む余地がないというところは、初めて聞いた方もいらっしゃったのではないでしょうか。従業員の申請した年次有給休暇はその事業場の正常な運営を妨げる場合にのみ認められるということを覚えておく様にしましょう。

 次回は出勤率に関する代表的な裁判例について解説します。

 磯会計センターでは、茨城でお困りの中小事業主様や個人事業主様に、会計・税務・労務から補助金・融資など幅広くサポートをしておりますので、お悩み事がございましたらぜひお気軽にご相談ください。

 

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