意外と知らない年次有給休暇の落とし穴について社労士が解説!④〜年次有給休暇の賃金〜
2025/04/14
はじめに
近年、コロナ禍で加速した働き方改革をはじめ、人手不足による労働環境の見直しの観点から、休暇に関する企業の考え方が変化しつつあります。その中でも年次有給休暇は労働基準法上規定された労働者の基本の権利です。
年次有給休暇は、一定の要件を満たす従業員に対して付与されるもので、労働基準法では、労働者の健康を守るために、休日のほか毎年一定日数与えることを規定していますが、当ブログでは今回から、年次有給休暇に関して、意外と知られていない論点や間違えやすい事項を複数回にわたって解説します。
第4回は年次有給休暇の賃金についてです。
年次有給休暇の賃金
労働基準法において、年次有給休暇の賃金に関しては次のような条文があります。
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第三十九条 ⑨ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。 |
年次有給休暇の賃金に関して、ほとんどの会社では有給休暇の時間については働いたものとみなして賃金を支払っているかと思いますが、法律上はそれ以外にも複数の選択肢があります。ただし、労働者それぞれでその都度選択するものではなく、就業規則等で有給休暇中の賃金について規定した上で、継続的に適用される必要があります。
① 平均賃金
② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③ 標準報酬月額の30分の1に相当する金額(労使協定の締結が必要で、時間単位の付与をした場合はさらに所定労働時間で除した金額となります。)
上記のいずれかの方法で賃金を支払う必要があり、これに違反している場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の罰金規定がありますので特に注意しましょう。
年次有給休暇の買上げ
年次有給休暇を与えない代わりに、年次有給休暇の賃金に相当する金額を与えることを「年次有給休暇の買上げ」といいます。年次有給休暇というのは本来、労働者をリフレッシュさせるための制度であり、年次有給休暇の買上げをしてしまうと有給休暇を与えたことにならないため、違法となります。
ただし、下記の場合には年次有給休暇の趣旨に反しないことから例外的に認められています。
① 法律で定められている日数を上回る年次有給休暇を付与している場合に、当該上回る部分を買い取る場合
② 時効(2年)によって消滅する年次有給休暇を買い取る場合
③ 退職時に残存している年次有給休暇を買い取る場合
逆をいうと、時効で消滅する年次有給休暇や退職時に残存する年次有給休暇の買取りは義務ではありません。トラブルを避けるためにも年次有給休暇の買取りに関するルールを制定するようにしましょう。
また、年次有給休暇の買取りを行なった場合、当該支払金額は賞与として扱われるため、支払い後5日以内に「被保険者賞与支払届」を管轄する年金事務所に提出することを忘れないようにしましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
年次有給休暇の賃金や年次有給休暇の買取りについて、誤った取り扱いをしてしまうとトラブルに発展してしまいます。ルールを正しく理解して労働者が有給を取得しやすい環境、労働者が働きやすい環境を整備するよう心がけましょう。
次回は年次有給休暇の法的性質に関する代表的な裁判例について解説します。
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