意外と知らない労働時間の落とし穴について社労士が解説!①〜原則の労働時間(労働時間となるもの・ならないもの)〜
2024/12/05
はじめに
企業の労働時間問題に関しては、コロナ禍で加速した働き方改革をはじめ、最近ではさまざまな業種での残業の上限規制が制定されたりと、日々変化が激しい論点であり、かつ適切に労働時間を管理することは、継続的な企業の発展の根底となる事項です。
当ブログでは今回から、このような労働時間問題の中でも、意外と知られていない論点や間違えやすい事項を複数回にわたって解説します。
第1回は原則的な労働時間の定義についてです。
労働時間とは
労働基準法第32条において、労働時間は次のように定められています。
(労働時間) 第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。 ② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。 |
参照元:労働基準法|e-Gov法令検索
この条文では、「法定労働時間」を1週間40時間まで、1日8時間まで、と定めており、それを超える労働時間の設定は、原則としてできないとしています。
なお、ここでいう『労働時間』とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。反対に休憩時間は、労働者が権利として労働から離れていることを保障されている時間をいいます。例えば外見上労働していなくても、来店対応や電話対応をしている手待時間は、たとえ昼休み中であっても労働時間となってしまうため注意しましょう。
そのほか、過去の裁判例や通達をもとに、労働時間か否かについて論点となった主なものを下記にて紹介します。
論点 | 労働時間か否か | 参考 |
使用者の実施する教育訓練等のうち、強制力がなく、参加が任意と なっているものに参加する時間 |
労働時間ではない |
行政通達 (昭63.3.14基発150号) |
貨物自動車に2人で乗り、交代で運転を行う際の、運転しないものが 助手席で仮眠している時間 |
労働時間となる |
行政通達 (昭33.10.11基収6286号) |
夜行バスの交代運転手の車中仮眠時間 | 労働時間ではない |
東京高裁 (平成30.8.29判決) |
使用者の指示で行う業務時間前の着替えの時間 | 労働時間となる |
最高裁 (平成14.3.9判決) |
会社の寮から仕事場までのバスによる送迎時間 | 労働時間ではない | 高栄建設事件東京地裁判決 |
配送ドライバーが荷下ろしの順番を待っている待機時間 | 労働時間となる |
大阪地裁 (平成29.3.21判決) |
休憩時間に事務所外に行くことを届出制にしている場合 | 労働時間ではない |
行政通達 (昭22.9.13基発17号) |
また、『一週間』とは、就業規則等に別段の定めがない場合は、日曜日から土曜日までの暦週を指します。
それと、『一日』とは基本的には午前0時から午後12時までの24時間をいいますが、例えば22時から翌朝の5時までの勤務のように、2暦日にまたがるような場合には、始業時刻の属する日の労働とみなされます。
労働時間の例外
上記にて、1週間40時間、1日8時間を超える労働時間の設定は、原則としてできないと記載しましたが、労働基準法第32条の労働時間の規定にかかわらず、下記の場合には別途労働時間の規定が定められています。それぞれの詳細は後日解説します。
概要 | |
労働時間の特例 (労基第40条) |
常時10人未満の① 商業、② 映画演劇業、③ 保健衛生業、④ 接客娯楽業は一週間の法定労働時間が44時間になる。 |
変形労働時間制 (労基第32条の2~5) |
特定の期間における一週間の平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲において、特定の日や特定の週について法定労働時間を超えることができる。 |
災害時等の時間外労働 (労基第33条) |
非常災害や公務のため臨時の必要がある場合に、例外として時間外労働や休日労働をさせることができる。 |
36協定による時間外労働 (労基第36条) |
労働者と書面による協定をし、行政長官に届け出ることによって、時間外労働や休日労働をさせることができる。 |
労働時間等の適用除外 (労基第41条) |
① 農業・水産業等に従事する労働者、② 管理監督者、③ 社長秘書などの機密の事務を取り扱うもの、④ 監視または断続的労働に従事するもの(行政長官の許可を得たもの)については、労働時間や休憩休日の規定の対象外となっている。 |
高度プロフェッショナル制度 (労基第41条の2) |
高度プロフェッショナル制度の対象者については、さまざまな要件のもと、労働時間や休憩休日の規定の対象外となっている。 |
まとめ
いかがだったでしょうか。
特に、労働時間の対象となるか否かについては、個別具体的な事象を考慮して、総合的に判断されることから、今回解説したケース以外でもさまざまな論点があるかと思います。経営者においては、今一度自身の会社の業務を見直し、労働時間の対象となる業務が、実は今まで労働時間に含まれていなかったといった事象がないかについて、専門家に相談の上検討することをお勧めします。
次回は労働時間の把握方法について解説します。
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