【会計処理】圧縮記帳について税理士が解説!①〜適用要件及び会計処理〜
2024/08/22
はじめに
みなさんは「圧縮記帳」という会計処理をご存知でしょうか。圧縮記帳とは、節税対策のうち繰延節税を目的として行われる会計処理であり、固定資産の取得等をした際に、一定の要件を満たした場合に、取得等のために享受した利益に対する課税を繰り延べる効果を持っています。
今回はこの圧縮記帳の全体像として、適用要件及び会計処理方法について解説します。
圧縮記帳とは
圧縮記帳は、節税対策のうち繰延節税を目的として行われる会計処理です。例えば、固定資産の取得のために補助金等の交付を受けた場合、補助金は受領時に「国庫補助金受贈益」という、企業の利益として計上されます。つまり、その補助金を受領したことにより法人税等の負担が大きくなってしまいます。よって、せっかく補助金をもらったとしても、一部しか固定資産の取得のために使用できなくなってしまいます。そこで、圧縮記帳という会計処理を用いることによって、当該利益に対する課税を繰り延べることができるという仕組みです。
圧縮記帳の適用要件
圧縮記帳が適用できるケースは、前述した補助金の交付を受けた場合など限られているのですが、そもそもその前提として、圧縮記帳を適用するためには下記の要件を満たしている必要があります。
① 圧縮限度額※の範囲内で次のA〜Cのどれかの経理方法によること
A. 固定資産の帳簿価額を損金経理により直接減額する方法(直接減額方式①)
B. 損金経理により積立金を積み立てる方法(直接減額方式②)
C. 剰余金の処分により積立金を積み立てる方法(積立金方式)
② 確定申告書に国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書を添付すること
③ 清算中の法人でないこと
※ 圧縮限度額とは、圧縮記帳の種類によって設定されている、控除できる金額の上限値を指します。
圧縮記帳の会計処理
上述した通り、圧縮記帳を適用するためには、次の3つの経理方法のいずれかを採用する必要があります。
A. 直接減額方式
直接減額方式は、固定資産の取得原価を直接減額する経理処理です。積立金方式と比べると比較的簡便的な方法ですが、一部のケースにおいては直接減額方式は採用できません。なお、直接減額方式には、固定資産の帳簿価格をそのまま減額する「直接減額法」と、「固定資産圧縮額」という科目を用いて間接的に減額する「間接減額法」があります。
直接減額方式(直接減額法)の具体的な経理処理は以下のとおりです。
(例)補助金:500万円
機械装置の取得価格:1,500万円
耐用年数:5年(定額法)
仕訳 | |
補助金の交付を受けた | 現預金 500万円 / 国庫補助金収入 500万円 |
機械装置を取得した | 機械装置 1,500万円 / 現預金 1,500万円 |
圧縮損の計上 | 固定資産圧縮損 500万円 / 機械装置 500万円 |
減価償却の計上 | 減価償却費 200万円 / 減価償却費累計額 200万円 |
B. 積立金方式
積立金方式は、固定資産を減額せずに、圧縮積立金として純資産の部に計上し、以後、減価償却期間にわたって圧縮積立金を取り崩していく経理処理です。さらに法人税の申告書で調整(申告調整)をしていくことによって、直接減額方式と同額の損金が毎期計上される仕組みです。直接減額方式と比較して、本来の固定資産の計上額が認識されることからより正確な決算書となるメリットがある一方、経理処理は少々煩雑で、一部のケースにおいては間接減額方式は採用できない場合があります。
間接減額方式の具体的な経理処理は以下のとおりです。
(例)
補助金:500万円
機械装置の取得価格:1,500万円
耐用年数:5年(定額法)
仕訳 | |
補助金の交付を受けた | 現預金 500万円 / 国庫補助金収入 500万円 |
機械装置を取得した | 機械装置 1,500万円 / 現預金 1,500万円 |
圧縮積立金の計上 | 繰延利益剰余金 500万円 / 圧縮積立金 500万円 |
減価償却の計上 | 減価償却費 300万円 / 減価償却費累計額 300万円 |
圧縮積立金の取り崩し | 圧縮積立金 100万円 / 繰延利益剰余金 100万円 |
(別表四の調整) |
圧縮積立金認定損 △500万円 圧縮積立金取崩額 100万円 |
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は圧縮記帳の全体像として、適用要件及び会計処理方法について解説しました。次回以降で具体的な適用ケースについても解説する予定ですので、お待ちいただければと思います。
次回は国庫補助金等の交付を受けた場合の圧縮記帳の論点について解説します。
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