【企業防衛】保険税務の取り扱いを税理士が解説!②〜養老保険〜
2024/08/01
はじめに
前回から、保険商品ごとの会計処理について解説しています。
今回はそのうち、契約者が法人のケースにおける養老保険についての会計処理を解説します。なお、投稿日現在の税制に基づく処理となることご了承ください。
養老保険とは
養老保険とは、死亡保障と満期保険金の両方を備えている保険で、「生死混同保険」とも言われます。終身保険とは異なり、一定の期間を定め、保険期間中に被保険者が死亡等の状態となった場合、もしくは保険期間が終了した場合に、保険金が支払われます。終身保険と比較すると満期の保険金があるため保険料は割高となるものの、一定の保障を確保しながら老後資金を確保するといった貯蓄性があるという特徴があります。
養老保険の会計処理① 満期保険金と死亡保険金の受取人が法人の場合
満期保険金と死亡保険金の受取人を法人としている場合、会計処理は終身保険と同様となります。
養老保険の払込時の会計処理
養老保険を払込した際は、その全額を保険積立金として資産計上します。
養老保険の死亡保険金(解約返戻金)受取時の会計処理
満期保険金や死亡保険金・解約返戻金を受け取った際は、それまで資産計上していた保険積立金を取り崩し、保険積立金と保険金の差額を雑収入(雑損失)として計上します。
養老保険の名義人を変更した際の会計処理
役員や従業員の退職に伴い、保険金の受取人を役員や従業員の遺族に変更した際は、退職時に解約返戻金を当該役員や従業員に支給したものと捉え、それまで資産計上していた保険積立金を取り崩し、保険積立金と保険金の差額を雑収入(雑損失)として費用計上します。
また、解約返戻金相当額は退職金とみなされるため、その他現金等で支給している退職金がある場合には、合算して源泉徴収を行う必要があることに留意してください。
会計処理設例
No. | 設例 | 仕訳 |
① | 養老保険の保険料(年払)を3,000千円支払った。 | 保険積立金 3,000千円 / 現金 3,000千円 |
②-1 | 9年後、養老保険を解約した(解約返戻金25,000千円)。 |
現金 25,000千円 / 保険積立金 27,000千円 雑損失 2,000千円 / |
②-2 |
9年後、被保険者が退職したため、退職金を10,000千円支払うととも に、受取人を役員に変更した(解約返戻金25,000千円)(源泉50千円)。 |
退職金 35,000千円 / 保険積立金 27,000千円 雑損失 2,000千円 / 現金 9,950千円 / 預り金 50千円 |
②-3 | 15年後、役員が死亡した。(死亡保険金50,000千円) |
現金 50,000千円 / 保険積立金 45,000千円 / 雑収入 5,000千円 |
養老保険の会計処理② 満期保険金と死亡保険金の受取人が従業員(役員、遺族)の場合
満期保険金と死亡保険金の受取人を法人としている場合も、会計処理は終身保険と同様となります。
養老保険の払込時の会計処理
養老保険を払込した際は、その全額を給与として費用計上します。
養老保険の死亡保険金(解約返戻金)受取時の会計処理
満期保険金や死亡保険金・解約返戻金を受け取った際は、特に会計処理は不要です。
会計処理設例
No. | 設例 | 仕訳 |
① | 養老保険の保険料(年払)を3,000千円支払った。 | 保険積立金 3,000千円 / 現金 3,000千円 |
②-1 | 9年後、養老保険を解約した(解約返戻金25,000千円)。 |
ー |
②-2 | 15年後、役員が死亡した。(死亡保険金50,000千円) |
ー |
養老保険の会計処理③ 満期保険金の受取人が法人で、死亡保険金の受取人が従業員(役員)の遺族の場合
満期保険金の受取人が法人で、死亡保険金の受取人を法人としている場合は福利厚生プランとも呼ばれ、終身保険と一部異なる会計処理となります。
養老保険の払込時の会計処理
養老保険を払込した際は、保険料のうち1/2を保険料積立金として資産計上し、1/2を損金算入します。
養老保険の死亡保険金受取時の会計処理
死亡保険金を従業員・役員の遺族が受け取った場合、法人が積み立てていた保険積立金は雑損失として損金算入します。
養老保険の満期保険金(解約返戻金)受取時の会計処理
満期保険金や解約返戻金を受け取った際は、それまで資産計上していた保険積立金を取り崩し、保険積立金と保険金の差額を雑収入(雑損失)として計上します。
養老保険を払い済み保険に変更した際の会計処理
保険期間中に養老保険から同種類の払済保険に変更した場合、払済時点での資産計上額は満期・解約等により契約が消滅するまで特に処理は不要となります。
会計処理設例
No. | 設例 | 仕訳 |
① | 養老保険の保険料(年払)を3,000千円支払った。 | 保険積立金 3,000千円 / 現金 3,000千円 |
②-1 | 9年後、養老保険を解約した(解約返戻金25,000千円)。 |
現金 25,000千円 / 保険積立金 27,000千円 雑損失 2,000千円 / |
②-2 |
15年後、役員が死亡した。(死亡保険金50,000千円) |
現金 50,000千円 / 保険積立金 45,000千円 / 雑収入 5,000千円 |
②-3 | 20年後、養老保険の満期が到来した。(満期保険金70,000千円) |
現金 70,000千円 / 保険積立金 60,000千円 / 雑収入 10,000千円 |
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は養老保険の会計処理について解説しました。養老保険も終身保険と同様、会計処理は保険の種類の中でも比較的簡単とも言えますが、福利厚生プラン以外では、保険料の支払い時には経費とすることができないため、繰延節税としての節税効果を期待する場合には、福利厚生プランがお勧めです。お近くの専門家とも相談の上、ご自身の事業の状態やライフスタイルに合わせて商品を検討することをお勧めします。
次回は定期保険の会計処理について解説します。
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