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【所得税】住宅ローン控除の論点を税理士が解説!〜④増改築をした場合〜

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【所得税】住宅ローン控除の論点を税理士が解説!〜④増改築をした場合〜

【所得税】住宅ローン控除の論点を税理士が解説!〜④増改築をした場合〜

2024/05/06

はじめに

 皆様は住宅ローン控除を利用したことがありますでしょうか。

 マイホームの購入等に当たっては、通常金融機関から借入を行うこととなりますが、住宅ローンは人生においてとても大きな決断であり、相当なプレッシャーがかかるものかと思います。さらに住宅ローンは通常長期間にわたって金利負担が大きくのしかかり、経済的にも圧迫を受けることとなります。こうした負担を軽減するために制定されたのが住宅ローン控除(正式名称は「住宅借入金等特別控除」と言います。)です。

 今回はこの住宅ローン控除について、細かい論点を含め解説いたします。なお、今回は令和5年度の所得税の申告時点に基づく法令にて解説を行いますので、令和6年度の確定申告にあたって改正されたものが公表された場合には、順次解説いたします。

 なお、住宅ローン控除の基礎的な情報をまとめたものや、年末調整時に記入する「住宅借入金等特別控除申告書」の書き方などを、別途当ブログにて解説していますので、ぜひそちらも併せてご覧ください。

 

【基礎論点】所得税の仕組みを税理士が解説!⑮税額計算及び税額控除(住宅借入金等特別控除)

【2023年】年末調整の全てを徹底解説!⑤〜住宅借入金等特別控除申告書の書き方〜

 

住宅ローン控除の概要

 住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得または増改築等(以下「取得等」といいます。)をした場合で、一定の要件を満たすときに、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除する制度のことをいい、細かく「住宅借入金等特別控除」と「特定増改築等住宅借入金等特別控除」に分かれます※ 

 第4回は増改築等をした場合の住宅ローン控除について、要件や控除額について解説いたします。

※ 令和4年以後に住宅ローン等を利用し、特定の増改築等を行い居住の用に供した場合には、特定増改築等住宅借入金等特別控除を受けることができません。

 

増改築等をした場合の住宅ローン控除

 

増改築等とは

 増改築等とは、住宅への増改築のうち、次のいずれかに該当するものを言います。

 

番号 適 用 要 件
1

増築、改築、並びに家屋の壁、柱、床、はり、屋根または階段のいずれか一以

上について行う過半の修繕・模様替えの工事

2

マンションなどにおいて区分所有する部分の床、階段または壁の過半について

行う一定の修繕・模様替えの工事(1に該当するものを除く。)

3

家屋(区分所有するマンションを含む)のうち居室、調理室、浴室、便所、洗

面所、納戸、玄関または廊下の一室の床または壁の全部について行う修繕・模

様替えの工事(1および2に該当するものを除く。)

4

地震に対する安全性に関する基準に適合させるための一定の修繕・模様替えの

工事(1から3に該当するものを除く。)

5 一定のバリアフリー改修工事(1から4に該当するものを除く。)
6 一定の省エネ改修工事(1から5に該当するものを除く。)

 

 ポイントは、「大規模なものかどうか」という点と、「地震・バリアフリー・省エネのいずれかのためのものかどうか」という点です。増改築であればなんでも良いというわけではないので注意しましょう。

 

適用要件

 住宅の増改築等に際し、住宅ローン控除の適用を受けるためには、以下の適用要件を満たしている必要があります。

 

番号 要   件
中古住宅の取得の日から6か月以内に居住の用に供していること。

その年の年分の12月31日まで引き続き居住の用に供していること。

(個人が死亡した年に適用を受ける場合には、死亡した日まで引き続き住んでいること。)

この特別控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下であること。

4 床面積※1 50㎡以上であり、かつ、床面積の2分の1以上が居住用であること。
5 住宅ローン※2 の返済期間が10年以上であること。
6 2以上の住宅を所有している場合には、主として居住の用に供する住宅であること。
7

居住年を含む前3年間に一定の譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと※3 

8

居住年の翌年以後3年以内に居住した住宅以外の一定の資産を譲渡し、当該譲渡について上記6に掲げる譲渡所得の

課税の特例を受けていないこと。

9 自己が所有する家屋について行う増改築等であること。
10

増改築等の額(補助金等を受ける場合は控除後の金額)が100万円を超えており、その2分の1以上が居住用部分の

工事費用であること。

 

 1〜8まではこれまで解説してきた住宅の取得に関する適用要件と同様ですが、新たに9及び10が追加されていますので、今一度確認しておきましょう。

 

※1 床面積の判断基準は、原則登記簿に表示されている床面積により判断します。(マンションの場合は、共有部分については床面積に含めず、登記簿上の専有部分の床面積で判断します。)

  また、店舗や事務所などと併用になっている住宅や、配偶者と共有する場合は、按分等はせずに建物全体の床面積によって判断します。

※2 住宅ローン控除の対象となる借入金は、銀行等の金融機関の借入金だけでなく、建設業者や勤務先に対する債務なども含まれます。

  ただし、勤務先からの借入金の場合には、0.2%に満たない利率による借入金は対象外であり、また、親族や知人からの借入金も対象外となっています。

※3 一定の譲渡所得の課税の特例は次のとおりです。

  ・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例

  ・居住用財産の譲渡所得の特別控除(被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除により適用する場合を除きます。)

  ・特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例

  ・財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例

  ・既存市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例

 

控除額および控除期間

 増改築等をした場合の控除額及び控除期間は、住宅ローンの年末残高の合計額を基に、下記の計算方法により算出します。ただし、年末残高よりも増改築等の金額※1 が小さいときは、住宅ローンの年末残高の合計額ではなく、増改築等の金額を用います。

借入限度額 控除率 税額の最大控除額 控除期間
2,000万円 0.7% 14万円 10年

 

 増改築等の場合には、増改築等の種類によって控除額が変わることはなく、一律となっています。

 

※1 住宅の取得等に関し、補助金等の交付を受けた場合や、「住宅取得等資金の贈与の特例」を適用した場合には、その補助金等の額を控除します。

 

提出書類

 住宅ローン控除の適用を受ける初年度は確定申告が必要となり、さらに下記の提出書類等を添付する必要があります。

 

番号 提  出  書  類

「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」

2

(連帯債務がある場合のみ)

「(付表)連帯債務がある場合の住宅借入金等の年末残高の計算明細書」

3

金融機関等から交付された「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」

4

「登記事項証明書」など、床面積を明らかにする書類※1

5 「工事請負契約書」や「売買契約書」の写しなど、取得対価の額を明らかにする書類
6

(補助金等の交付を受けた場合のみ)

補助金等の額を明らかにする書類

(住宅取得等資金の贈与の特例を受けた場合のみ)

贈与税の申告書など、住宅取得等資金の額を明らかにする書類の写し

建築士等が発行した「増改築等工事証明書」

 

 増改築等をした場合の必要書類で、他の住宅ローン控除と異なる点は、8の「建築士等が発行した「増改築等工事証明書」」です。こちらは住宅ローン控除の対象となる工事を行ったことについての建築士等による証明書ですので、忘れずに受領するようにしてください。

 また、住宅ローン控除の適用を受ける2年目以降は、必要事項を記載した確定申告書に上記の1〜3を添付することで適用を受けることができますが、給与所得者については、年末調整で「住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を勤務先に提出することによって適用を受けることができます。

 

※1 「登記事項証明書」は、計算明細書へ「不動産番号」を記載した場合、添付は不要となります。

 

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 増改築等をした場合の住宅ローン控除は、中古住宅等の取得の住宅ローン控除と併用することも可能です。ライフスタイルの多様化に伴い、必要な増改築等を行うことがあるかと思いますので、住宅ローン控除の要件に該当するかどうか確認するようにしましょう。

 住宅ローン控除の種類別の要件や控除額、必要書類等の解説はここまでです。次回からはその他の住宅ローン控除に関する個別の論点について解説します。

 次回は住宅ローンの借換えを行なった場合について解説します。

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