グループ法人税制を税理士が解説!〜①譲渡損益の繰延〜
2024/04/08
はじめに
皆様はグループ法人税制をご存知でしょうか。
グループ法人税制は、一定の企業グループで行なわれる特定の取引について、税務上損益を認識しない仕組みのことをいいます。グループ法人税制をうまく活用することによって、グループ内の資源を有効に活用・移転することができますが、当該税制は強制適用であるため、税制を知らないと、思わぬところで税額の計算に誤りが生じる可能性もあります。
当ブログでは、今回から複数回にわたって、グループ法人税制について解説します。第一回は譲渡損益の繰延についてです。
グループ法人税制〜譲渡損益の繰延〜
概要
内国法人※1が、その有する譲渡損益調整資産をその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人※1に譲渡したことにより生じた譲渡利益額又は譲渡損失額に相当する金額は、譲渡利益額の場合は損金の額に、譲渡損失額の場合は益金の額に算入することとされています。これを譲渡損益の繰延といいます。この規定によって、当該取引における譲渡利益額又は譲渡損失額はプラスマイナスゼロになります。当該繰り延べられた譲渡損益は、一定の事由が発生した場合は戻入れが行われ、税務上の損益が計上されることとなります。
※1 普通法人又は協同組合等に限ります。
譲渡損益調整資産
譲渡損益調整資産とは、固定資産、棚卸資産たる土地、売買目的有価証券を除く有価証券、金銭債権及び繰延資産で、その譲渡直前の帳簿価額が1,000万円以上である資産をいいます。
完全支配関係
完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係(以下、『当事者間の完全支配の関係』と言います。)、又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係(以下、『当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係』と言います。)を指します。さらに当事者間の完全支配の関係には、一の者が法人の発行済株式等の100%を直接保有する関係(以下、『直接完全支配関係』と言います。)と、一の者が法人の発行済株式等の100%を間接保有する関係(以下、『みなし直接完全支配関係』と言います。)があります。
具体的には下記のようなケースを指します。
注意点としては、一の者は、法人である場合には内国法人・外国法人が該当しますが、個人である場合にはその個人と特殊関係のある個人(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族など)を含みます。よって次のような場合でも完全支配関係があるとみなされます。
繰り延べられた譲渡損益の戻入れ
繰り延べられた譲渡損益について、次の事由が生じた際に、益金の額又は損金の額に戻入れすることとなります。
① 譲受法人が完全支配関係グループ内の他の法人へその譲渡損益調整資産を譲渡したとき
② 譲受法人が完全支配関係グループ外の第三者へその譲渡損益調整資産を譲渡したとき
③ 譲受法人においてその資産の償却、評価換え、貸倒れ、除却等を行ったとき
④ 譲渡法人が譲受法人との間に完全支配関係を有しないこととなったとき
⑤ 譲渡法人が通算制度の開始・加入・離脱等に伴う時価評価を行うこととなったとき
まとめ
いかがだったでしょうか。
グループ法人税制は、普段取引がない場合は特に見落としがちな論点ですので、100%グループの会社に高額な資産を譲渡する場合は、繰り延べが行われるということをぜひ覚えておいてください。
次回は寄付金の損金不算入について解説します。
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