【税制改正】定額減税の仕組みを税理士が解説!その3 〜給与所得に係る定額減税の月次減税額の計算(所得税)〜
2024/03/27
はじめに
令和5年12月22日に「令和6年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。その中でも特に重要な項目となっているのは、所得税と住民税が一定金額減額されるという『定額減税』の制度です。今後閣議決定された大綱に沿った国税の改正法案が成立し、施行された場合には、令和6年分の定額減税が実施されることとなります。当ブログでは定額減税についての概要から詳細まで、複数回にわたって解説します。第3回は所得税における給与所得に係る月次減税額の計算についてです。
給与所得に係る定額減税の概要(所得税)
給与所得に係る定額減税の流れ
給与の支払者(事業主)は給与を支給する際に源泉徴収を行い、従業員から所得税を預かりますが、その際に今回の定額減税の金額を考慮した上で源泉徴収をする必要があります。定額減税のために事業主が実際に行う作業は下記のとおりです。
① 控除対象者の確認
② 月次減税額の計算
③ 給与等支払時の控除
④ 年末調整時の精算
月次減税額の計算
同一生計配偶者及び扶養親族の数の確認
給与の支払者は、従業員の定額減税額を計算するため、最初の月次減税事務を行うときまでに提出された扶養控除等申告書等により、以下のA及びBの確認を行い、同一生計配偶者及び扶養親族の数の確認をします。なお、月次減税額を計算するに当たって、従業員から新たに申告書を提出してもらう必要はありません。
なお、月次減税額は、最初の月次減税事務までに提出された扶養控除等申告書等により確認した事実によって決定しますので、その後に同一生計配偶者や扶養親族の数に異動等があったとしても、途中で月次減税額を変更することはせず、年末調整で調整することになります。
A.居住者である同一生計配偶者※1の確認
扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者が居住者であり、かつ、所得の見積額が48万円以下であるかどうかを確認します。
B.居住者である扶養親族※2の確認
扶養控除等申告書に記載された控除対象扶養親族及び16歳未満の扶養親族のうち、居住者である人の人数を確認します。
※1「同一生計配偶者」は、居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの(青色事業専従者等を除く。)のうち、合計所得金額が48万円以下である者をいいます。
配偶者控除の適用がないような、合計所得金額が 900 万円超である居住者の同一生計配偶者も含みます。
なお、合計所得金額48万円超の配偶者は、配偶者自身が減税の対象となります。
※2「扶養親族」は、次の4つの要件のすべてに当てはまる人をいいます。
・配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族。)又は里子や市町村長から養護を委託された老人であること。
・納税者と生計を一にしていること。
・年間の合計所得金額が48万円以下であること。
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと 又は白色申告者の事業専従者でないこと。
定額減税額の計算
同一生計配偶者及び扶養親族の数の確認が終わったら次は、各従業員の定額減税額の計算を行います。定額減税額は、次の①②の金額の合計額です。
① 本人:30,000円
② 居住者である同一生計配偶者及び扶養親族1人につき: 30,000円
例えば、同一生計配偶者が1人、扶養親族が1人いる給与所得者の定額減税額は90,000円となります。
なお、合計所得金額が900万円を超えるため、源泉控除対象配偶者を記載していない場合など、扶養控除等申告書に記載していない同一生計配偶者や扶養親族については、最初の月次減税事務を行うときまでに、従業員が「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出をすることで月次減税額の計算のための人数に含めることができます。従って、従業員に対して、定額減税額の通知を事前に行い、同一生計配偶者及び扶養親族の数が合っているのかについて確認を行い、相違がある場合には、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出を受けると良いでしょう。
ただし、令和6年1月1日以後に死亡した同一生計配偶者や扶養親族についても、その死亡の日の現況で同一生計配偶者や扶養親族であると判定される場合、月次減税額の計算に含めることとされていますので注意しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
定額減税額の計算にあたっては、同一生計配偶者や扶養親族を正しく把握する必要がありますので、定額減税が始まる前までに早めに確認・計算をしておくようにしましょう。
次回は所得税における給与所得に係る給与等支払時の控除について解説します。
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