【税制改正】定額減税の仕組みを税理士が解説！その2　〜給与所得に係る定額減税の適用対象者（所得税）〜

はじめに

　令和５年12月22日に「令和6年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。その中でも特に重要な項目となっているのは、所得税と住民税が一定金額減額されるという『定額減税』の制度です。今後閣議決定された大綱に沿った国税の改正法案が成立し、施行された場合には、令和6年分の定額減税が実施されることとなります。当ブログでは定額減税についての概要から詳細まで、複数回にわたって解説します。第２回は所得税における給与所得に係る定額減税の適用対象者についてです。

 

給与所得に係る定額減税の概要（所得税）

　給与所得に係る定額減税の流れ

　給与の支払者（事業主）は給与を支給する際に源泉徴収を行い、従業員から所得税を預かりますが、その際に今回の定額減税の金額を考慮した上で源泉徴収をする必要があります。定額減税のために事業主が実際に行う作業は下記のとおりです。

　① 控除対象者の確認

　② 月次減税額の計算

　③ 給与等支払時の控除

　④ 年末調整時の精算

 

給与所得に係る定額減税の対象者

　給与所得者に対する定額減税は、扶養控除等申告書を提出している給与所得者(いわゆる甲欄適用者)に対して、その給与の支払者のもとで、その給与等を支払う際に、源泉徴収税額から定額減税額を控除する方法で行われます。つまり、主たる給与等の支払者のみが実施することとし、従たる給与等の支払者は行いません。

　主たる給与の支払者は、令和6年6月1日現在で在職している従業員のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される従業員（以下「基準日在職者」といいます。）を抽出します。

この基準日在職者が月次減税額の控除の対象となる人（以下「控除対象者」 といいます。）となります※1。

　なお、この時点においては、合計所得金額を勘案しないため、合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる基準日在職者に対しても、月次の減税調整を行い、その後、年末調整の際にそれまで控除した額の精算を行います。

なお、一の給与の支払者からの給与収入が 2,000 万円を超える人は年末調整の対象外となっているため、その人は確定申告で最終的な精算を行うこととなります。

　また、公的年金等の支払を受ける人は、公的年金等に係る源泉徴収税額から定額減税の適用を受けますが、その人についてもその主たる給与の支払者のもとで、 月次の減税調整を行います。 つまり、年金と給与から二重で減額されることとなりますが、当該重複控除については、確定申告で最終的な精算が行われることとなります。

　

　⚪︎基準日在職者に該当しない従業員まとめ

• ・令和6年6月1日以後支払う給与等の源泉徴収において、源泉徴収税額表の乙欄や丙欄が適用される人

• ・令和6年6月2日以後に採用し、勤務することとなった人

• ・令和6年5月31日以前に退職した人

• ・令和6年5月31日以前に非居住者となった人

 

　※1 給与所得者が定額減税の適用を受けるか受けないかを自分で選択することはできません。

 

まとめ

　いかがだったでしょうか。

　定額減税を行う従業員は、令和6年6月1日現在で在職している従業員のうち、甲欄が適用される従業員ということを覚えておきましょう。

　次回は所得税における給与所得に係る定額減税の計算について解説します。

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