【基礎論点】所得税の仕組みを税理士が解説！⑩一時所得

はじめに

　所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。（平成25年からは復興特別所得税も併せて徴収されています。）

　今回は確定申告を予定している方や、確定申告が必要かどうかわからない人向けに、所得税の基本論点や計算の流れ等を複数回に分けて解説します。第10回は一時所得についてです。

 

一時所得とは

　一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。

　一時所得の範囲は次のとおりです。

　①　懸賞や福引きの賞金品（業務上のものを除きます。）

　②　競馬や競輪の払戻金（営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます。）

　③　生命保険の一時金(業務上のものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等

　④　法人から贈与された金品（業務上のもの、継続的に受けるものを除きます。）

　⑤　人格のない社団等の解散により受ける清算分配金等

　⑥　借家人が受ける立退料

　⑦　売買契約解除により取得する違約金（業務上のものを除きます。）

　⑧　移転等に充てるための交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの

　⑨　遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等

　⑩　住民税の前納報奨金及び固定資産税（業務用固定資産にかかるものを除きます。）の前納報奨金

　

　ただし、例えば次のものについては、一時所得に該当するものであっても非課税とされます。

　①　宝くじの当選金品

　②　ノーベル賞の賞金、学術奨励金等

　③　相続、遺贈又は個人からの贈与による所得

　④　心身又は資産（棚卸資産等を除きます。）に加えられた損害を補填する損害保険金、損害賠償金等

　⑤　オリンピック又はパラリンピックの成績優秀者を表彰する金品　など

 

一時所得の計算

　一時所得の金額は、「総収入金額ー収入を得るために支出した金額ー特別控除額（最高50万円）」で計算されます。

 

総収入金額

　一時所得のうち、支払いを受ける際に源泉徴収がされている場合は、源泉徴収される前の金額が総収入金額となります。

　また、懸賞金のうち金前以外のものによる賞品の収入額は下記のとおりとなります。

賞品の種類	評価
商品券	券面額
宝石等、書画、骨董等	時価
その他	通常の販売価格×60％

　

収入を得るために支出した金額

　その収入を生じた行為をするため、または、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額に限ります。

　例えば競馬の払戻金については、各レースごとに計算するため、複数のレースで馬券を購入した場合、払戻金が発生したレースのみ購入代金が支出した代金とすることができます。

 

特別控除額

　総収入金額ー収入を得るために支出した金額が限度とされます。

 

税金の課税方法

　一時所得は、原則その所得金額から2分の1されたものについて、総合課税により超過累進課税の適用を受けます。ただし、一時所得のうち源泉徴収されているものについては、源泉分離課税により課税関係が完結します。

 

まとめ

　いかがだったでしょうか。

　一時所得はその範囲が非常に細かく、中には一時所得に該当するとは思わずに申告をしていなかったせいで、のちに無申告が判明し追徴されるケースもあります。臨時に収入を得た場合には、専門家に相談することをおすすめします。

　次回は雑所得について解説します。

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