【基礎論点】所得税の仕組みを税理士が解説!⑤給与所得
2024/01/19
はじめに
所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。(平成25年からは復興特別所得税も併せて徴収されています。)
今回は確定申告を予定している方や、確定申告が必要かどうかわからない人向けに、所得税の基本論点や計算の流れ等を複数回に分けて解説します。第5回は給与所得についてです。
給与所得とは
給与所得とは、主に雇用先から受ける給料、賃金、賞与などの所得をいいます。それ以外にも、雇用関係又はそれに類する関係において、使用者の指揮命令のもとに提供される労務の対価は基本的に全て給与所得となります(例えば役職手当、家族手当、住宅手当など。)。
ただし一定の趣旨から非課税とされているものがあり、代表的なものは下記の通りです。※1
通勤手当
・電車やバスなどの交通機関だけを利用して通勤している場合
この場合の非課税となる限度額は、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額で、1か月当たり15万円までです。新幹線や特急列車を利用した場合の運賃等の額も、その通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合には非課税の通勤手当に含まれますが、グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められません。
・電車やバスなどの交通機関のほか、併せてマイカーや自転車なども使って通勤している場合
この場合の非課税となる限度額は、電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額と、電車やバスなどの交通機関を利用する場合の1か月間の通勤定期券などの金額の合計で、1か月当たり15万円までです。
・マイカーや自転車などだけを利用して通勤している場合
この場合の非課税となる限度額は、片道の通勤距離に応じて、次のように定められています。
片道の通勤距離 | 1か月当たりの限度額 |
2km未満 | 全額課税 |
2km以上10km未満 | 4,200円 |
10km以上15km未満 | 7,100円 |
15km以上25km未満 | 12,900円 |
25km以上35km未満 | 18,700円 |
35km以上45km未満 | 24,400円 |
45km以上55km未満 | 28,000円 |
55km以上 | 31,600円 |
出張旅費等
転勤や出張等のための旅費のうち、通常必要と認められるものは実費弁償的なものであるため非課税となっています。なお、社内の出張旅費規定に基づくものであれば、実際支出額を超えている部分にも課税されません。
宿直、日直手当
下記のような宿直や日直の手当を除き、その支給の基因となった勤務1回につき支給される金額が4,000円(宿直又は日直の勤務をすることにより支給される食事がある場合には、4,000円からその食事の価額を控除した残額)以下のものは非課税となっています。※2
・休日又は夜間の留守番だけを行うために雇用された者及びその場所に居住し、休日又は夜間の留守番をも含めた勤務を行うものとして雇用された者に当該留守番に相当する勤務について支給される宿直料又は日直料
・宿直又は日直の勤務をその者の通常の勤務時間内の勤務として行った者及びこれらの勤務をしたことにより代日休暇が与えられる者に支給される宿直料又は日直料
・宿直又は日直の勤務をする者の通常の給与等の額に比例した金額又は当該給与等の額に比例した金額に近似するように当該給与等の額の階級区分等に応じて定められた金額により支給される宿直料又は日直料
食事の支給
こちらは、『【税務】従業員に対する食事代支給の注意点を税理士が解説!』を参考にしてください。
職務上必要な現物給与
制服など、職務上必要な現物給与は非課税となっています。
学資に充てるための費用
使用人(役員や使用人と特別の関係がある者、個人事業者の親族を除きます。)に、学資に充てるための費用を支給する場合は、非課税となります。
勤務先より支給された一定の記念品
創業記念で支給する記念品や永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品(現金、商品券を除き、本人が自由に記念品を選択できる場合も除きます。)などは、次に掲げる要件をすべて満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。
・創業記念などの記念品の場合
①支給する記念品が社会一般的にみて記念品としてふさわしいものであること。
②記念品の処分見込価額による評価額が10,000円以下であること。
③創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給をするものは、概ね5年以上の間隔で支給するものであること。
・永年勤務者に支給する記念品や旅行や観劇への招待費用の場合
①その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。
②勤続年数が概ね10年以上である人を対象としていること。
③同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときから概ね5年以上の間隔があいていること。
勤務先が指定をする社宅、寮
使用人に対して社宅や寮などを貸与する場合には、使用人から1か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額の50%以上)を受け取っていれば非課税となります。賃貸料相当額とは、次の①から③の合計額をいいます。
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
②12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント
なお、使用人から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合は、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が給与として課税されます。
また、役員に社宅等を貸し付ける場合は、『【法人税】役員社宅の活用で賢く節税しよう!』を参考にしてください。
※1 上記以外にも、研修費用、従業員レクリエーション旅行や研修旅行、税制適格ストック・オプションに係る経済的利益など、一定の要件のもとに非課税となるものがあります。詳細は専門家に相談するようにしましょう。
※2 同一人が宿直と日直とを引き続いて行った場合には、通常の宿直又は日直に相当する勤務時間を経過するごとに宿直又は日直を1回行ったものとして、
非課税とされます。
給与所得の計算
給与所得の金額は、「収入金額-給与所得控除額」で計算できます。給与所得控除額は収入によって下記の通りです。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
まとめ
いかがだったでしょうか。
給与所得は、非課税になるかどうかが細かく定められているため、判断が伴うケースが少なくありません。計算や申告に関して不安がある方は専門家に相談するようにしましょう。
次回は退職所得について解説します。
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