【インボイス】インボイス制度における費用の概算計上の是非を税理士が解説！

 

はじめに

　インボイス制度の開始まで残りわずかとなりました。登録事業主としても最終準備の段階をしている頃かと思います。インボイスに関連する事項で、決算時に対価が確定していない費用について、見積額等の概算金額により経費を計上しているものがあるかと思います。消費税法によると、「資産の譲渡等を行った場合において、その資産の譲渡等をした日の属する課税期間の末日までにその対価の額が確定していないときは、同日の現況によりその金額を適正に見積もり、当該金額を資産の譲渡等の対価の額としなければならず、その後確定した対価の額が見積額と異なるときは、その差額は、その確定した課税期間において、その課税期間における資産の譲渡等の対価の額の合計額に加算し、又は控除することとなる。」と記載されていますが、インボイスの開始に伴い、これらの概算計上額の仕入税額控除が認められるのかどうかを詳しく解説していきます。

 

インボイス制度における費用の概算計上に対する仕入税額控除の取り扱い

　課税期間の末日までにその支払対価の額が確定せず、概算計上額で仕入税額控除を行う場合、インボイス制度における取扱いについては、見積額が記載された適格請求書の交付を受ける場合と見積額が記載された適格請求書の交付を受けない場合とで異なります。ただしいずれの場合においても、その後確定した対価の額が概算計上額と異なるときは、その差額を確定した日の属する課税期間における課税仕入れに係る消費税額に加算又は減算する処理は同様となります。

 

①見積額が記載された適格請求書の交付を受ける場合

　適格請求書の記載事項が全て記載されている見積書など、取引の相手方から見積額が記載された適格請求書の交付を受ける場合、これを保存することで見積額による仕入税額控除が認められます。 なお、見積額を記載した仕入明細書を自ら作成し、相手方の確認を受けた場合は、当該仕入明細書をもって適格請求書の要件を満たすことができるため、当該仕入明細書を保存することで概算計上額による仕入税額控除が認められます。

 

②見積額が記載された適格請求書の交付を受けられない場合

　見積額が記載された適格請求書の交付を受けられない場合であっても、電気・ガス・水道の供給のような適格請求書発行事業者から継続して行われる取引や、機械等の保守点検、弁護士の顧問契約のように契約等に基づき継続的に課税資産の譲渡等が行われ、金額が確定した際に適格請求書の交付を受ける蓋然性の高い取引については、見積額が記載された適格請求書や仕入明細書の保存がなくとも、その後、金額が確定したときに交付される適格請求書を保存することを条件として、課税仕入れを行う事業者が課税期間の末日の現況により適正に見積ることができる場合に限り、概算計上額による仕入税額控除を行うことができます。一方上記以外の取引については、概算計上額で仕入税額控除を行うことはできないこととなります。

 

まとめ

　いかがだったでしょうか。

　2023年10月以降、未確定の費用に対する概算計上額の仕入税額控除を行うためには、そもそも同日の現況によりその金額を適正に見積もる必要があることから、継続取引以外に関しては見積書の入手は必須かと思われます。インボイス導入により請求書や領収書のインボイス対応は検討が進んでいるかと思いますが、このように見積書においてもインボイスの要件を満たす必要があるケースが出てきますので、これまで概算計上を経常的に行なっているような事業者の方は、これを機に先方から送られてくる見積書の様式についても見直してみてください。

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