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【インボイス】インボイス制度において適格請求書が不要になるケースを税理士が解説!

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【インボイス】インボイス制度において適格請求書が不要になるケースを税理士が解説!

【インボイス】インボイス制度において適格請求書が不要になるケースを税理士が解説!

2023/09/25

はじめに

 インボイス制度の開始まで約1週間となりました。登録事業主としても最終準備の段階をしている頃かと思います。インボイス制度の中で、インボイスが必要になる取引、必要とならない取引の区分は非常に細かく、一つ一つを覚えるのに苦労をするかと思います。今回は一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるケースを詳しく解説していきます。

 

請求書等の交付を受けることが困難である取引

 以下の請求書等の交付を受けることが困難である取引については、 一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

1 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
2 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(1に該当するものを除きます。)
3 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の購入
4 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の取得
5 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の購入
6 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の購入
7 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
8 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
9 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

 

1 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送

 3万円未満の単位は、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判断します。例えば一人当たり13,000 円の新幹線代で4人で移動した場合、4人×13,000円=52,000円と判定されることとなるため、3万円未満とはなりません。また、特急料金は適格請求書の交付義務の免除特例の対象になりますが、入場料金は特例の対象になりません。

 また、当該公共交通機関の中には、タクシーや航空機は対象となっていないため留意が必要です。

 

2 適格簡易請求書の記載事項が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引

 当該規定が適用される場面は極めて限定的かもしれませんが、スポーツ観戦や映画鑑賞などの際に、仮に要件を満たすものが入場券しかなく、それが回収されてしまう場合には、適格請求書は不要になるということです。

 

3 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入

 古物営業とは、中古車販売業者などの古物商だけでなく、リサイクルショップ運営、インターネットオークション業者が当たります。これらのものが、適格請求書発行事業者以外から古物を仕入れる場合は最終消費者からの仕入れであることが多いことから、その者からの適格請求書は不要になります。ただし、仕入れた古物を棚卸資産として計上している必要があります。

 

4 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得

 考え方は3と同様です。質屋を営むものが、適格請求書発行事業者以外から質物を取得する場合は適格請求書は不要になります。ただし、取得した質物を棚卸資産として計上している必要があります。

 

5 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入

 考え方は3と同様です。宅地建物取引業を営むものが、適格請求書発行事業者以外から建物を取得する場合は適格請求書は不要になります。ただし、取得した建物を棚卸資産として計上している必要があります。

 

6 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の購入

 考え方は3と同様です。適格請求書発行事業者以外から再生資源及び再生部品を取得する場合は適格請求書は不要になります。3と違い、業種の縛りは設けられていませんが、取得した再生資源及び再生部品を棚卸資産として計上している必要があるため、実質的に利用できるのは、廃棄物処理業者やリサイクル業者などの再生資源業に限られてくるかと思います。

 

7 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

 適格請求書の交付義務の免除特例の対象になる「3万円未満の自動販売機や自動サービス機による商品の販売等」は、自動販売機やコインロッカー、金融機関のATMなどの、機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものが該当するため、コインパーキングや単なる自動券売機のように、代金の受領のみを機械装置が行なっているものについては特例の対象にはなりません。また、インターネットバンキングの振込手数料についてもこちらには該当しません。

 

8 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス

 郵便切手類の購入は、購入時においては原則非課税取引に該当することから、消費税率および消費税額の記載がない領収書が交付されます。これはインボイスに該当しないものの、法人税および所得税の計算において必要となるため、保存自体は必要です。その後、郵便切手が貼付された郵便物等の郵便ポストへの投函は課税取引に該当しますが、こちらが適格請求書が不要になる取引ということになります。実務においては購入した物品切手を継続して購入する日の属する課税期間における課税仕入れとして処理しているときは、当該処理が認められているため、大きな影響はないものと思われます。

 

9 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

 当該出張旅費等は、会社規定による一定額の支給だけでなく、実費精算であっても、「その旅行に通常必要であると認められる部分」で、「出張旅費や日当、通勤手当が所得税法上非課税となる範囲で」あれば当該特例が利用できます。(出張を伴わない単なる経費精算の場合、1に該当しないものは適格請求書が必要であるため注意しましょう。)

 なお、SuicaなどのICカードで公共交通機関を利用している場合、チャージ自体は不課税取引であり、それによる移動に関しても、上記1または9に当てはまる限りにおいては適格請求書は不要となります。ただしICカードは公共交通機関以外でも利用できるため、通勤においてICカードを用いる場合は、利用明細書も併せて取得し、通勤のみに利用していることを明確にしておきましょう。

 

少額特例の場合

 基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1億円以下又は特定期間(個人事業者については前年1月から6月までの期間をいい、法人については前事業年度の開始の日以後6月の期間)における課税売上高が5千万円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日まで、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。

 なお、税込1万円未満の課税仕入れに該当するか否かについては、一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満かどうかで判定するため留意が必要です。

 例① 4,000円の商品と7,000円の商品を別々の日に購入した場合、それぞれ1万円未満の取引となり、本経過措置の対象となります。
 例② 4,000円の商品と7,000円の商品を同時に購入した場合、1万円以上の取引となり、本経過措置の対象外となります。
 例③ 月額200,000円の清掃業務を21日稼働してもらった場合、1日あたりは1万円未満ですが、1万円以上の取引となり、本経過措置の対象外となります。

 

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 読んでいただきご理解いただけたかと思いますが、実際に適格請求書の保管が不要になるケースは限定的であり、基本的には適格請求書の保管が必要と認識いただくのが良いかと思います。適格請求書は、必ずしも、請求書や領収書でなければならないわけではなく、一定期間の取引をまとめて交付することもできますので、相手方から一定期間についての適格請求書の交付を受け、それを保存することによる対応も可能ですし、また、一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになりますので、契約書等に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、実際 に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。これらを踏まえ、会社内での取り扱いを検討いただければと思います。

 磯会計センターでは、茨城でお困りの中小事業主様や個人事業主様に、会計・税務から補助金・融資など幅広くサポートをしておりますので、お悩み事がございましたらぜひお気軽にご相談ください。

 

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