【補助金】業務改善助成金について税理士が解説!
2023/09/08
はじめに
皆さんは、「業務改善助成金」をご存知でしょうか。
業務改善助成金とは、生産性向上に資する設備投資等を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。要件を満たすことによって最大9割の助成がされる大変魅力的な制度ですが、今回はこの業務改善助成金の支給を受けるための要件などを解説します。
対象事業者
業務改善助成金の支給を受けるためには、下記の3つの要件を満たしている必要があります。
①下記の資本金・出資金要件と従業員数要件を満たす事業対象者であること
業種 | 資本金・出資金及び常時使用する労働者数 |
小売業(飲食店含む) |
5000万円以下、かつ、50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下、かつ、100人以下 |
卸売業 | 1億円以下、かつ、100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下、かつ、300人以下 |
②事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
なお、茨城県の令和5年7月6日現在の最低賃金は911円で、毎年10月ごろに改定されます。
事業場内最低賃金は、その事業場で最も低い時間給を指します。その中で最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金であり、次の額を除外したものが対象となります。
(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)時間外割増賃金
(4)休日割増賃金
(5)深夜割増賃金
(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
例えば、茨城県で働く労働者Aさんは、月給で、基本給が月140,000円、職務手当が月20,000円、通勤手当が月5,000円、時間外手当が25,000円支給され、合計が190,000円となりました。
この場合、Aさんの賃金は、「190,000円-(5,000円+25,000円)=160,000円」となり、この金額を時間額に換算し、茨城県の最低賃金額と比較すると、「(160,000円×12か月)÷(240日×8時間)=1,000円」となるため、最低賃金額より50円以上高くなっており、申請不可となります。
(その他、それぞれの賃金形態等によっても算出方法が異なる場合があるため、詳しくは管轄の労働局雇用環境・均等部室または賃金課室に相談することをお勧めします。)
③解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
助成率、助成上限額
助成率は、引き上げ前の事業場内最低賃金によって下記のとおり異なります。(後ほど説明する生産性要件に該当する場合、括弧内の助成率となります。)
900円未満 | 900円以上950円未満 | 950円以上 |
9/10 | 4/5(9/10) | 3/4(4/5) |
助成上限額は、引き上げる最低賃金額及び引き上げる労働者の人数によって次のように異なります。(後ほど説明する特例事業者に該当する場合、10人以上の要件が適用できます。)
事業場内最低賃金の 引き上げ額 |
引き上げる労働者数 |
助成上限額 | |
事業場規模30人以上の 事業者 |
事業場規模30人以上の 事業者 |
||
30円以上 | 1人 |
30万円 |
60万円 |
2〜3人 | 50万円 | 90万円 | |
4〜6人 | 70万円 | 100万円 | |
7人以上 | 100万円 | 120万円 | |
10人以上 | 120万円 | 130万円 | |
45円以上 | 1人 | 45万円 | 80万円 |
2〜3人 | 70万円 | 110万円 | |
4〜6人 | 100万円 | 140万円 | |
7人以上 | 150万円 | 160万円 | |
10人以上 | 180万円 | 180万円 | |
60円以上 | 1人 | 60万円 | 110万円 |
2〜3人 | 90万円 | 160万円 | |
4〜6人 | 150万円 | 190万円 | |
7人以上 | 230万円 | 230万円 | |
10人以上 | 300万円 | 300万円 | |
90円以上 | 1人 | 90万円 | 170万円 |
2〜3人 | 150万円 | 240万円 | |
4〜6人 | 270万円 | 290万円 | |
7人以上 | 450万円 | 450万円 | |
10人以上 | 600万円 | 600万円 |
※特例事業者とは、以下のア~ウのいずれかに該当する事業者です。
ア.事業場内最低賃金が950円未満の事業場に係る申請を行う事業者
イ.新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高や生産量等の事業活動を示す指標の直近3か月間の月平均値が、前年、前々年又は3年前同期に比べ、15%以上減少している事業者
ウ.原材料費の高騰など社会的・経済的慣行の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1月の利益率(売上高総利益率又は売上高営業利益率)が、前年同期に比べ、3%ポイント以上低下している事業者
助成対象経費
助成対象となる経費は「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資等」であり、具体的な項目は記載されていませんが、厚生労働省のサイトでは下記のような例が挙げられております。
助成対象経費 | 一般事業者 |
特例事業者 (イ・ウのみ) |
助成対象経費の例 |
生産性向上に資する設備投資など | ○ | ○ |
(設備投資) ・POSレジシステム導入による在庫管理の短縮 ・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮 (経営コンサルティング) ・専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上 (その他) ・店舗改装による配膳時間の短縮 |
生産性向上に資する設備投資などのうち、 ・定員7人以上または車両本体価格 ・PC、スマホ、タブレット等の端末と |
× | ○ | |
「関連する経費」 (広告宣伝費、汎用事務機器、 事務室の拡大、机・椅子の増設など) |
× | ○ | (デリバリーを行っている飲食店が3輪バイク を導入した場合における)デリバリーサービスを周知するチラシ代など |
※「関連する経費」とは
生産性向上等に資する設備投資等に該当しない経費のうち、生産性向上に資する設備投資等を行う取り組みに関連する費用として、業務改善計画で計上された経費を指します。
なお、「関連する経費」への助成は生産性向上等に資する設備投資の額を上回らない範囲に限られます。(そのため、関連する経費のみでの申請を行うことはできません。)
まとめ
いかがだったでしょうか。
業務改善助成金の申請を検討する際はまず、ご自身の事業の事業場の事業場内最低賃金を算定して、要件に該当するかどうかを確認するようにしましょう。また、原則として、事業場内最低賃金の引き上げや設備投資などを交付申請書を提出するよりも前に実施してしまうと、交付の対象外となってしまうためご注意ください。
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