【事業】中小企業倒産防止共済制度のメリット・デメリットを税理士が解説!
2023/09/06
はじめに
皆さんは、『中小企業倒産防止共済(別名:経営セーフティ共済)』をご存知でしょうか。
『中小企業倒産防止共済』とは、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。中小企業倒産防止共済前回の中小企業退職金共済、前々回の小規模企業共済制度と並び、節税対策として古くから勧められてきた制度です(これら3つの制度を総称して3共済制度と呼びます。)が、今回はこの中小企業倒産防止共済制度の加入資格者からメリット・デメリットまで、詳しく解説します。
加入資格者・掛金
加入資格は、業種により下記の通り異なります。もちろん、個人事業であっても加入資格はあります。
業種 | 要件 |
製造業、建設業、運輸業その他の業種 |
常用従業員数300人以下 または 資本金・出資金3億円以下 |
卸売業 |
常用従業員数100人以下 または 資本金・出資金1億円以下 |
サービス業 |
常用従業員数100人以下 または 資本金・出資金5,000万円以下 |
小売業 |
常用従業員数50人以下 または 資本金・出資金5,000万円以下 |
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く。) |
常用従業員数900人以下 または 資本金・出資金3億円以下 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 |
常用従業員数300人以下 または 資本金・出資金3億円以下 |
旅館業 |
常用従業員数200人以下 または 資本金・出資金5,000万円以下 |
ただし、上記の要件を満たしていても、以下のいずれかに該当する場合はご加入できません。
・住所または主たる事業の変更を繰り返し行ったため、継続的な取引の状況の把握が困難な場合
・事業にかかわる経理内容が不明の場合
・すでに借入れを受けた共済金または一時貸付金の返済を怠っている場合
・中小機構から返還請求を受けた共済金、一時貸付金、早期償還手当金、解約手当金の返還を怠っている場合
・納付すべき所得税または法人税を滞納している場合
・12か月分以上掛金の納付を怠ったため、または偽りその他不正の行為等のため、中小機構によって共済契約を解除され、解除された日から1年を経過していない場合
・偽りその他不正の行為により共済金もしくは一時貸付金の借入れ、または早期償還手当金もしくは解約手当金の支給を受け、または受けようとした日から1年を経過していない場合
・現に共済契約者となっている場合(重複加入はできません)
また、掛金月額は、5,000円から20万円までの範囲(5,000 円単位)で自由に選択できます。掛金は掛金総額が800万円に達するまで積み立てることができます。
メリット
企業倒産防止共済制度のメリットの主なものは3つです。
①取引先の倒産時に借入れができる
取引先が倒産したことにより売掛金債権等の回収が困難となった場合に、借入れが無利子・無担保・無保証人で受けられます。借入上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額となります。(例えば現在の掛金が200万円で、1,000万円の売掛債権が回収できないという場合、200万円×10倍 = 2,000万円か、1,000万円のいずれか少ないほうの金額ということで、1,000万円を借り入れることができます。
②掛金が全額損金算入できる
拠出した掛金はその全額が損金として認められるため、節税効果が期待できます。
③取引先が倒産していなくても借り入れができる
取引先が倒産していなくても、契約者が臨時に事業資金を必要とする場合に、下記の金額を限度に借入をすることができます。(最低借入額は30万円で、5万円単位での借入れができ、1年内の期限で一括償還する必要があります。なお、現時点の利率は「年0.9%」担保や保証人は不要となっています。)
掛金納付月数 | 一時貸付金の借入限度額 |
1か月~11か月 |
0円 |
12か月~23か月 |
掛金総額 × 75% × 95% |
24か月~29か月 |
掛金総額 × 75% × 95% |
30か月~35か月 |
掛金総額 × 75% × 95% |
36か月~39か月 |
掛金総額 × 75% × 95% |
40か月以上 |
掛金総額 × 75% × 95% |
掛金総額が800万円の場合 |
800万円 × 100% × 95%(760万円 |
デメリット
企業倒産防止共済制度のデメリットの主なものは3つです。
①倒産による借入れの場合、利息見合いの掛金が減額される。
メリットの①で、取引先が倒産したことにより借入れした場合は無利子で借入れができると解説しましたが、借入額の10分の1に相当する額が払い込んだ掛金から控除されてしまうため、借入時に10%利息を取られている計算になります。(例えば200万円拠出していて、1,000万円借りた場合、100万円が拠出金から減額されてしまいます。)
②掛け捨て・元本割れリスクがある
企業倒産防止共済も解約時に解約返戻金を受け取ることができますが、掛金の納付月数が11ヵ月以下の場合、解約返戻金は支給されず、掛け捨てとなってしまいます。また、12ヵ月以上40ヵ月以下の場合は、解約返戻金が掛金拠出総額を下回り、元本割れとなります。なお、40ヶ月以上納付した場合でも解約返戻金は拠出額以上になることはなく、最大でも返戻率は100%となります。
③解約返戻金の受給時は利益として課税される
メリットの②で、掛金はその全額が損金として認められると解説しましたが、解約返戻金を受け取る際は反対に利益として課税されてしまいます。そのため、赤字の場合など、経営状態が悪化した場合に受給して、損失と相殺するなどの工夫が必要になるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
企業倒産防止共済は、取引先の倒産に対するリスクヘッジと節税対策の両立ができるという魅力的な制度ですので、興味のある方は検討をお勧めします。加入の際は、法人の場合は登記事項証明書や確定申告書、納税証明書(その1)を、個人の場合は確定申告書、納税証明書(その1)を準備して、お近くの金融機関に申し込みに行きましょう。
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