【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その6(適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件②・適格請求書等保存方式の下での税額計算)
2023/05/17
はじめに
インボイス制度の開始まであと半年を切りました。皆様は、インボイス制度の対応について、どこまで検討が進んでいますでしょうか。ある程度概略を押さえて準備万端な方も、登録しかしてない方も、まだ登録していない方も様々かと思います。
国税庁には、コールセンター等へ問い合わせがあった件について、Q&A形式で回答が記載されており、その数は2023年4月27日時点で127個とかなりの数が掲載されています。このQ&Aの中には、事業主にとってとても重要な回答や、見落としがちな回答が数多く含まれているのですが、一つ一つ確認していくのはとても労力が必要になるかと思います。
このブログでは、複数回にわたって国税庁Q&Aの回答の中で特に重要となるポイントをピックアップして解説していきます。今回は適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件及び適格請求書等保存方式の下での税額計算のQ101〜Q127について解説します。インボイス制度について確認漏れが起こることのないよう、当ブログでしっかり確認していってください。
(参考:国税庁Q&A )
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm
Q104.出張旅費、宿泊費、日当等、Q105.通勤手当
Point
一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる社員に支給する国内の出張旅費等ですが、「通常必要であると認められる部分」の具体的な判定に関しては、出張旅費や日当、通勤手当が所得税法上非課税となる範囲で、インボイスについても認められることとなっています。
Q107.帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項
Point
一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の「一定の事項」とは下記のことを言います。
・ 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨
例:「3万円未満の鉄道料金」「入場券等」
・ 仕入れの相手方の住所又は所在地
例:「〇〇市 自販機」「××銀行□□支店ATM」
ただし、次の場合は帳簿に仕入れの相手方の住所又は所在地の記載が不要となります。
イ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送について、その運送を行った者
ロ 適格請求書の交付義務が免除される郵便役務の提供について、その郵便役務の提供を行った者
ハ 課税仕入れに該当する出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)を支払った場合の当該出張旅費等を受領した使用人等
ニ 下記の課税仕入れ(3から5に係る課税仕入れについては、古物営業法、質屋営業法又は宅地建物取引業法により、業務に関する帳簿等へ相手方の氏名及び住所を記載することとされているもの以外のものに限り、6に係る課税仕入れについては、事業者以外の者から受けるものに限ります。)を行った場合の当該課税仕入れの相手方
3 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
4 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
5 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
6 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入
Q108.一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置
Point
「【税制改正】インボイスの令和5年税制改正を税理士が解説!その2」を参考ください。
Q109.一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置における1万円未満の判定単位
Point
考え方については、「Q43.公共交通機関特例の3万円未満の判定単位」と同様です。
例① 4,000円の商品と7,000円の商品を別々の日に購入した場合、それぞれ1万円未満の取引となり、本経過措置の対象となります。
例② 4,000円の商品と7,000円の商品を同時に購入した場合、1万円以上の取引となり、本経過措置の対象外となります。
例③ 月額200,000円の清掃業務を21日稼働してもらった場合、1日あたりは1万円未満ですが、1万円以上の取引となり、本経過措置の対象外となります。
Q110.免税事業者からの仕入れに係る経過措置
Point
適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、下記の期間については一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。
期間 | 割合 |
---|---|
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで |
仕入税額相当額の 80% |
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで |
仕入税額相当額の 50% |
この要件を受けるためには、帳簿に『80%控除対象』のように「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記載する必要があります。
Q111.小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置〈2割特例〉、Q112.2割特例の適用ができない課税期間①
Point1
2割特例の内容は、「【税制改正】インボイスの令和5年税制改正を税理士が解説!その1」を参考ください。
Point2
今回の改正では、免税事業者がインボイス制度をきっかけにインボイス発行事業者になった場合のみ、2割特例が適用できます。逆をいえば、「今までは免税事業者だけど、今期は基準期間の課税売上高が1千万円超だからインボイスの登録をしなくても課税事業者になる」場合など、もともと当該事業年度が消費税法上課税事業者になるような場合は、例えそれまで免税事業者であったとしても、2割特例は適用できません。
Q114.2割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択
Point
2割特例は申告時に選択適用できるため、届出書等を税務署に提出する義務はありませんが、簡易課税制度については税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。しかしその提出期限について、2割特例の適用を受けた事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間中に納税地を所轄する税務署長にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出したものとみなされます。つまり、令和5年度に簡易課税制度を利用したい場合は、令和5年度中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すれば良いこととなります。
Q120.委託販売等の手数料に係る委託者の売上税額の計算
Point
委託販売において、軽減税率の適用対象以外の商品の委託をしている場合、商品金額から委託販売手数料を控除した残額を売上とすることも認められていますが、その場合においても、当該委託販売手数料に係る適格請求書等の保存が必要となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件及び適格請求書等保存方式の下での税額計算のQ101〜Q127についてポイントとなる点を解説しました。今回で、国税庁のQ&Aのポイントを全て解説しました。ご覧になってくださった方にも関係のあるQ&Aがいくつかはあったかと思いますので、ぜひ参考にしていただき、また、もっと詳細に聞きたい場合は専門家に確認するようにしましょう。
磯会計センターでは、インボイス対応含め、各種税金のご相談を承っています。茨城で事業を営んでいる事業主様はぜひ一度ご相談ください。
参考
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その1(適格請求書等保存方式の概要・適格請求書発行事業者の登録制度)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その2(適格請求書発行事業者の義務等①)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その3(適格請求書発行事業者の義務等②)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その4(適格請求書発行事業者の義務等③)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その5(適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件①)
(本記事は掲載時点の税制等に基づいて掲載しています。)
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