【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その5(適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件①)
2023/05/15
はじめに
インボイス制度の開始まであと半年を切りました。皆様は、インボイス制度の対応について、どこまで検討が進んでいますでしょうか。ある程度概略を押さえて準備万端な方も、登録しかしてない方も、まだ登録していない方も様々かと思います。
国税庁には、コールセンター等へ問い合わせがあった件について、Q&A形式で回答が記載されており、その数は2023年4月27日時点で127個とかなりの数が掲載されています。このQ&Aの中には、事業主にとってとても重要な回答や、見落としがちな回答が数多く含まれているのですが、一つ一つ確認していくのはとても労力が必要になるかと思います。
このブログでは、複数回にわたって国税庁Q&Aの回答の中で特に重要となるポイントをピックアップして解説していきます。今回は適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件のQ82〜Q100について解説します。インボイス制度について確認漏れが起こることのないよう、当ブログでしっかり確認していってください。
(参考:国税庁Q&A )
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm
Q83.提供された適格請求書に係る電磁的記録の書面による保存
Point
適格請求書が電子データで送られてきた場合、令和6年1月1日以後は要件に従った電子データの保存が必要です。
Q84.仕入明細書の相手方への確認
Point
適格請求書に代わって仕入明細書を保存することによって、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たしますが、この仕入明細書は相手方の確認を受けたものに限られ、「相手方の確認」は、仕入明細書等の記載事項が相手方に示され、その内容が確認されている実態にあることが明らかであることが必要となります。(例えば、仕入明細書に「送付後一定期間内に連絡がない場合、確認があったものといたします。」といった記載をし、相手方に送付することが考えられます。)
Q88.仕入明細書において対価の返還等について記載した場合
Point
仕入明細書は、適格請求書だけでなく、適格返還請求書の役割を担うことも可能です。(ただし、適格返還請求書の要件を満たす必要があります。)
Q89.適格請求書と仕入明細書を一の書類で交付する場合
Point
例えば、相手方から請求書が来ない場合に、自社で支払通知書を発行して、それを仕入明細書とすることは認められていますが、この場合に例えば相手方の商品を自社で配送したため、支払通知書から配送料部分を控除して、その配送料については、自社の売上とするケースが存在するかと思います。インボイス制度においてはこのように、支払通知書が一方では自社が交付する適格請求書を兼ねることも認められています。(ただし、仕入税額控除の要件と、的確請求書の要件のいずれにも該当する支払通知書の作成が必要です。)
Q90.交付を受けた適格請求書に誤りがあった場合の対応
Point
実務上は請求書に誤りがあった場合には再交付を要請するのが一般的かと思いますが、それに代わって、受領側が適格請求書の記載事項の誤りを修正した仕入明細書等を作成し、売手である適格請求書発行事業者の確認を受けた上で、その仕入明細書等を保存することもできます。
Q92.立替金
Point
自社(以下A社とする)が、仕入先であるB社から商品を購入する際に、別のC社を経由してC社が代金を一旦立て替えるケースがあるかと思いますが、この場合仮にB社からの請求書の宛名がA社ではなくC社だった場合、A社の適格請求書とすることはできません。この場合は立替えをしたB社から、立替金精算書等の交付を受けるなどにより、C社から行った課税仕入れがA社のものであることが明らかにされている場合には、その適格請求書及び立替金精算書等の書類の保存をもって、A社は、C社からの課税仕入れに係る請求書等の保存要件を満たすこととなります。
Q93.口座振替・口座振込による家賃の支払
Point
通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要です。
適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することもできますので、相手方から一定期間についての適格請求書の交付を受け、それを保存することによる対応も可能ですし、また、一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになりますので、契約書等に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、実際 に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
Q94.見積額が記載された適格請求書の保存等
Point
課税期間の末日までにその支払対価の額が確定せず、見積額で仕入税額控除を行う場合の取扱いについては、適格請求書発行事業者から継続して行われる取引については、金額が確定したときに交付される適格請求書を保存することを条件として、適正に見積もった金額で、仕入税額控除を行うことができます。継続して行われる取引でない取引については、見積額が記載された適格請求書の交付を受けるか、見積額を記載した仕入明細書を自ら作成し、相手方の確認を受ける必要があります。
Q96.短期前払費用
Point
例えば毎年更新する1年間の保守料金などについて、支出した事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応する金額部分についても、法人税法上損金算入が認められていますが、消費税法上も支出した日の属する課税期間において行ったものとして取り扱うこととしておりますので、インボイスにおいても同様の保存方法で問題ありません。
Q97.所有権移転外ファイナンス・リース取引で賃借人が賃貸借処理した場合の適格請求書の保存
Point
所有権移転外リース取引について賃借人が賃貸借処理している場合、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理することができます。 この時はリース資産の引渡し時に交付される当該リース取引の全額に対する適格請求書を保存することにより、仕入税額控除の適用要件を満たすこととなります。 なお、当該適格請求書については、リース料の最終支払期日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する必要があります。
また、令和5年10月1日前に行われた移転外リース取引について、同日以後に賃貸借処理により計上する課税仕入れについては、別途適格請求書の交付は不要です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件のQ82〜Q100について解説しました。次回は適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件及び適格請求書等保存方式の下での税額計算のQ101〜Q127を解説します。
磯会計センターでは、インボイス対応含め、各種税金のご相談を承っています。茨城で事業を営んでいる事業主様はぜひ一度ご相談ください。
参考
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その1(適格請求書等保存方式の概要・適格請求書発行事業者の登録制度)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その2(適格請求書発行事業者の義務等①)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その3(適格請求書発行事業者の義務等②)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その4(適格請求書発行事業者の義務等③)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その6(適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件②・適格請求書等保存方式の下での税額計算)
(本記事は掲載時点の税制等に基づいて掲載しています。)
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