【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その4(適格請求書発行事業者の義務等③)
2023/05/12
はじめに
インボイス制度の開始まであと半年を切りました。皆様は、インボイス制度の対応について、どこまで検討が進んでいますでしょうか。ある程度概略を押さえて準備万端な方も、登録しかしてない方も、まだ登録していない方も様々かと思います。
国税庁には、コールセンター等へ問い合わせがあった件について、Q&A形式で回答が記載されており、その数は2023年4月27日時点で127個とかなりの数が掲載されています。このQ&Aの中には、事業主にとってとても重要な回答や、見落としがちな回答が数多く含まれているのですが、一つ一つ確認していくのはとても労力が必要になるかと思います。
このブログでは、複数回にわたって国税庁Q&Aの回答の中で特に重要となるポイントをピックアップして解説していきます。今回は適格請求書発行事業者の義務等のQ52〜Q81について解説します。インボイス制度について確認漏れが起こることのないよう、当ブログでしっかり確認していってください。
(参考:国税庁Q&A )
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm
Q53.屋号による記載、Q54.記号、番号による適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号の記載
Point
請求書に記載する書類の作成者の氏名又は名称については、電話番号を記載するなどし、適格請求書を交付する事業者を特定することができれば、屋号や省略した名称などの記載でも問題ないため、この場合はたとえ現状で略称などを請求書に記載していた場合でも変更する必要はありません。
Q55.適格請求書に記載する消費税額等の端数処理
Point
請求書の端数処理は、税率ごとに1回行う必要があり、商品ごとに端数処理はできません。なお、切上げ、切捨て、四捨五入などは任意の方法で構いません。
Q57.税抜価額と税込価額が混在する場合
Point
商品を販売する際に、税込み商品と税抜き商品が混在する場合は、適格請求書においてはいずれかに統一して記載する必要がありますが、タバコなど、法令等で税込表示が義務付けられている場合は税抜き化する必要はありません。ただしその場合であっても、税率の異なる商品ごとの合計金額を表示し、端数処理することとされています。
Q58.適格返還請求書の記載事項、Q59.売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日の記載、Q60.適格請求書と適格返還請求書を一の書類で交付する場合
Point
課税事業者に返品等を行う場合に義務付けられている適格返還請求書の記載事項は、次のとおりです。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません。)
③ 売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率
②の課税期間の範囲で一定の期間の記載については、「○月~△ 月分」という記載や、「前月末日」、「最終販売年月日」を記載することも可能です。
また、④について、適格請求書と適格返還請求書を一の書類で交付する場合において、継続的な記載を要件に、売上金額から返還金額を控除した金額に基づく合計金額の記載方法も認められています。
Q61.販売奨励金等の請求書
Point
仮に販売奨励金の精算方法が、取引先から交付される奨励金請求書に基づいた支払いである場合、その奨励金請求書が適格返還請求書として必要な事項が記載されていれば、改めて適格返還請求書を交付しなくても大丈夫です。
Q63.一定期間の取引をまとめた請求書の交付、Q65.複数書類で適格請求書の記載事項を満たす場合の消費税額等の端数処理
Point
日々商品の納品を行い、1ヶ月分の取引をまとめて請求する場合でも、適格請求書の要件を全て満たす必要はありますが、請求書だけで要件を満たす必要はなく、日々の納品書等と併せて要件を満たすことも可能です。ただしこの場合は、すべての書類をインボイスとして保管する必要があります。また、納品ベースで消費税の端数処理を実施したい場合は、納品書に税率ごとに区分した消費税額等を記載する必要があります。
Q64.複数の取引をまとめた請求書の交付
Point
複数の契約を締結している顧客に対し、複数の契約の取引をまとめた請求書を交付する場合であっても、消費税額の計算においては、契約ごとに消費税を計算することはできず、合計金額に対して消費税を算出し、端数処理を行うこととなります。
Q66.外貨建取引における適格請求書の記載事項
Point
外貨建てによる取引であっても、適格請求書に記載が必要な事項は同様ですが、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」については、円換算した金額を記載する必要があります。(円換算後に消費税を計算しても、消費税計算後に円換算しても大丈夫です。)
Q67.一括値引きがある場合の適格簡易請求書の記載
Point
割引券等の利用により、商品から値引きを行う場合は、税率ごとに区分した値引き後の課税資産の譲渡等の対価の額に対してそれぞれ消費税が課されることとなります。この時、値引き額が8%に係るものなのか、10%に係るものなのか明らかでない時は、値引き額を販売金額で按分して算出することになります。
Q71.軽減対象資産の譲渡等である旨の記載方法
Point
適格請求書の記載事項である「軽減対象資産の譲渡等である旨」の記載に決まりはなく、客観的に明らかであるといえる程度の表示であれば形式は問わないこととなっています。
Q73.任意組合が交付する適格請求書の記載事項
Point
任意組合の場合、その組合員全てが適格請求書発行事業者ですが、任意組合が請求書を発行する場合、①いずれかの組合員の氏名及び登録番号、②任意組合の名称を記載すれば良いこととなっています。
Q77.適格請求書の写しの保存期間等
Point
適格請求書の写しの保存期間は7年間です。
Q78.適格請求書の写しの電磁的記録による保存
Point
適格請求書の写しをシステム等で作成している場合には、必ずしも書面で出力した写しを保存する必要はなく、電子帳簿保存法に則りシステムで作成したデータを保存することも可能です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は適格請求書発行事業者の義務等のQ52〜Q81のポイントについて解説しました。次回は適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件のQ82〜Q100を解説します。
磯会計センターでは、インボイス対応含め、各種税金のご相談を承っています。茨城で事業を営んでいる事業主様はぜひ一度ご相談ください。
参考
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その1(適格請求書等保存方式の概要・適格請求書発行事業者の登録制度)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その2(適格請求書発行事業者の義務等①)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その3(適格請求書発行事業者の義務等②)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その5(適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件①)
【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その6(適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件②・適格請求書等保存方式の下での税額計算)
(本記事は掲載時点の税制等に基づいて掲載しています。)
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