【法人税】役員社宅の活用で賢く節税しよう!
2023/04/19
はじめに
会社経営をされている事業主さんの中には、従業員の福利厚生のために社宅を設けている会社もあると思います。
この社宅という制度の中で、役員が利用する社宅制度のことを「役員社宅」と言います。
役員社宅は、会社の節税だけでなく、役員の家賃負担の軽減など、様々なメリットがあります。今回は役員社宅の概要と、活用する際の注意点を解説していきたいと思います。
役員社宅の概要
役員社宅は、①役員の住む物件を法人名義で賃借契約を行い、法人が家主に家賃を支払い、②その物件を社宅として役員に貸与し、役員から家賃の一部を受け取ることによって、③法人が支払った家賃と、役員から受け取った賃料との差額を経費にすることで、法人税の節税をすることができるという仕組みです。
①役員の住む物件を法人名義で賃借契約を行い、法人が家主に家賃を支払う
⇨ポイントは、「個人事業主はこの制度を利用できない」ということです。個人事業主は、事業者名義で社宅を契約したとしても、社宅として住めるのは従業員だけです。
また、法人が家主に支払いを行いますので、後述する役員の自己負担分は、役員報酬から天引きするのが一般的です。
②その物件を社宅として役員に貸与し、役員から家賃の一部を受け取る
⇨ポイントは個人負担分については、国税庁が定める「賃貸料相当額」以上を役員が自己負担する必要があるということです。
③法人が支払った家賃と、役員から受け取った賃料との差額を経費にすることで、法人税の節税をすることができる
⇨役員社宅は法人税の節税以外にも様々なメリットがあります。
「賃借料相当額」とは?
役員の負担額である「賃借料相当額」は床面積で3タイプに分けられており、それぞれで計算式が決められています。
住宅のタイプ | 床面積 | 賃借料相当額 |
---|---|---|
小規模な住宅 |
・法定耐用年数30年以下の場合: 132平方メートル以下 99平方メートル以下 ※区分所有の建物は、共用部分の床面積をあん分して専用部分の床面積に加える |
次の①~③の合計額 ①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント ②12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル)) ③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント |
小規模でない住宅 | 上記以外 |
・自社所有の社宅の場合 ・他から借り受けた住宅の場合 |
豪華住宅 |
・240平方メートル超の場合: 取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定 一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては該当 |
家賃全額 |
もし、無償や上記の金額以下の金額で貸与した場合には法人が支払う家賃も給与報酬として判断されてしまいますのでご注意ください。
役員社宅で得られるメリットとは?
役員社宅は大きく、下記の3つのメリットがあります。
①経費の損金算入が可能
会社側の負担分について「地代家賃」として損金算入できるだけでなく、仲介手数料や引っ越し費用も、規定に定めておくことで経費計上ができます。しかし、水道光熱費や駐車場代などは経費にはできません。
②社会保険料の負担が減少する
法人の家賃負担に応じて役員報酬を引き下げることで、標準報酬月額が下がり、社会保険料額も下がるため、会社側も役員側も、社会保険料の負担を減らすことができます。
③役員の可処分所得が増える
家賃の一部を法人負担とすることで、役員の家賃負担が減り、さらに上述した社会保険料の減少等により手取り額が増えることとなります。
役員社宅を活用する際の注意点
このように様々なメリットがある役員社宅ですが、下記の注意点を無視してしまった結果、思ったようにメリットが享受できなかったということにならないように注意しましょう。
①初期費用がかかるため、キャッシュフローが一時的に悪化する。
⇨敷金礼金や仲介手数料など、法人の資金繰りを一時的に圧迫させるため、初期費用が無理なく支払えるかを十分に検討しましょう。
②社内ルールを定める
⇨従業員の社宅規定とは別に役員社宅規定を作成していないと、税務調査の際に問題視されてしまう可能性があります。
③既に居住している住宅を法人契約にするのは難しい
⇨手続き上は可能ですが、社宅の趣旨は従業員の住環境を保つためですので、すでに家賃も支払えている住宅に対し、社宅として法人から家賃補助を出すのは本来の主旨から外れてしまい、税務署から住宅手当と判断されて課税されてしまう恐れがあります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
役員社宅を活用すれば様々なメリットがありますが、賃借料相当額の計算や規定の整備方法などは少々複雑で、計算を誤るとメリットを得られない可能性があります。役員社宅を活用する際は専門家に相談することをお勧めします。
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