意外と知らない労働時間の落とし穴について社労士が解説!⑦〜時間外労働・休日労働〜
2025/01/09
はじめに
企業の労働時間問題に関しては、コロナ禍で加速した働き方改革をはじめ、最近ではさまざまな業種での残業の上限規制が制定されたりと、日々変化が激しい論点であり、かつ適切に労働時間を管理することは、継続的な企業の発展の根底となる事項です。
当ブログでは今回から、このような労働時間問題の中でも、意外と知られていない論点や間違えやすい事項を複数回にわたって解説します。
第7回は時間外労働・休日労働についてです。
時間外労働・休日労働
労働基準法において、時間外労働・休日労働に関しては次のような条文があります。
(時間外及び休日の労働) (出典:e-Gov 法令検索 労働基準法) |
法定労働時間を超える時間外労働・休日労働を行う場合には、上記の規定に基づく協定を締結しますが、第36条の規定に基づく協定であることから、一般的に36協定と呼ばれています。この36協定を締結し、行政長官に届け出ることによって、下記の時間まで労働させることができます。
・可能となる時間外労働及び休日労働(限度時間)
労使協定の種類 |
右記以外の場合 |
1年単位の変形労働時間制 (対象期間3か月超のみ)の場合 |
36協定 (第36条3項、4項) |
「1か月45時間以内」かつ 「1年360時間以内」 |
「1か月42時間以内」かつ 「1年320時間以内」 |
特別条項付き36協定 (第36条5項、6項) |
「1年720時間以内」かつ 「休日労働含め単月100時間未満」かつ 「2か月〜6か月平均で休日労働含め月80時間以内」 |
なお、上記の表において、「休日労働含め」と記載のないものについては、休日労働は含みません。
また、特別条項付き36協定(いわゆる「エスケープ条項」)は通常予見することのできない業務量の大幅な増加等によって、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合に発動するものであり、1年について6か月が限度となります。
時間外労働・休日労働の採用要件
時間外労働・休日労働の労使協定にて定める事項は下記のとおりです。
労使協定に定める事項 | 内容 |
対象の労働者の範囲 | 全社員以外にも、特定の部署や職種とするのも可能です。 |
対象期間 |
1年間に限ります。 |
時間外または休日労働をさせることができる場合 |
どういった場合に時間外労働・休日労働を行うのかを記載します。 |
対象期間における1日、1か月及び1年についての 時間外労働または休日労働の日数 |
1日、1か月、1年の全てについて延長時間を定める必要があります。 (フレックスタイム制の場合のみ、1か月、1年のみで問題ありません。) |
その他の必要事項 |
・有効期限 ・対象期間の起算日 ・特別条項を附す場合、限度時間の要件を遵守する定め ・特別条項を附す場合、そのための手続、割増賃金の率、健康や福祉を 確保するための措置 |
まとめ
いかがだったでしょうか。
2018年6月の改正労働基準法により、36協定の届出をしないまま法定労働時間を超えた労働をさせると労働基準法違反となり罰則が科されることとなっています。また、正確な割増賃金を支払う必要がありますので、当ブログ内の『意外と知らない賃金の落とし穴を社労士が解説!④〜割増賃金〜』も参考に、正しい社内環境整備を心がけるようにしましょう。
次回は事業場外みなし労働時間制について解説します。
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