意外と知らない労働時間の落とし穴について社労士が解説!③〜休憩・休日の考え方〜
2024/12/12
はじめに
企業の労働時間問題に関しては、コロナ禍で加速した働き方改革をはじめ、最近ではさまざまな業種での残業の上限規制が制定されたりと、日々変化が激しい論点であり、かつ適切に労働時間を管理することは、継続的な企業の発展の根底となる事項です。
当ブログでは今回から、このような労働時間問題の中でも、意外と知られていない論点や間違えやすい事項を複数回にわたって解説します。
第3回は休憩及び休日の考え方についてです。
休憩
労働基準法において、休憩に関しては次のような条文があります。
(休憩)
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
(出典:e-Gov 法令検索 労働基準法)
休憩時間とは、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間であり、前回『意外と知らない労働時間の落とし穴について社労士が解説!①〜原則の労働時間(労働時間となるもの・ならないもの)〜』で解説したような、手待ち時間は休憩時間には含まれません。
では、その他の論点についても解説します。
休憩時間の長さ
休憩時間は、原則として①6時間以内の場合は付与の義務はなく、②6時間を超え、8時間以内の場合は少なくとも45分、③8時間を超える場合は少なくとも1時間付与する必要があります。あくまでこれは最低基準であるからそれ以上の休憩を付与することも可能ですし、反対に、8時間を超える労働については、たとえ労働時間がどれだけ長くても、法的には1時間で構いません。
途中付与の原則
休憩時間は、労働時間の途中に与えなければなりません。そのため、始業直後や就業直前に付与することはできないとされています。
一斉付与の原則
原則として、休憩時間は事業場において一斉に付与しなければなりません。しかし、次のような場合は例外が設けられています。
・労使協定(届出の必要なし)を締結し、「一斉に休憩を与えない労働者の範囲」及び、「当該労働者に対する休憩の与え方」を定めた場合
・一定の業種(接客娯楽業・広告業・運輸交通業・官公署・保険衛生業・商業・金融業・映画観劇業・通信業)に該当する場合
・坑内労働を行なう場合
自由利用の原則
原則として、休憩時間は自由に利用させなければなりません。しかし、次のような場合は例外が設けられています。
・坑内労働を行なう場合
・休憩自由利用が法律で適用除外とされている職種(例:警察官、消防史員、常勤の消防団員、准救急隊員)
また、休憩時間は労働者の自由が保障されているものではありますが、休憩時間中に職場外で外出することを届出制にするような規定など、事業場の規律保持上必要な制限を加えることは許されると解されています(行政通達(昭22.9.13基発17号))。また、休憩時間であっても、職場内の規律秩序を乱すような行為は就業規則に違反する可能性があるため注意しましょう。(目黒電報電話局事件(最高裁判所昭和52.12.13))
休日
労働基準法において、休日に関しては次のような条文があります。
(休日)
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
(出典:e-Gov 法令検索 労働基準法)
労働基準法における休日は、原則として、暦日休日制(午前0時から午後12時までの24時間)を指します。ただし「8時間3交代制で一定の場合」や、「旅館業のフロント係、調理係、仲番、客室係」などは、現実的に暦日休日制が困難な場合は、継続24時間で休日を与えれば大丈夫です。
また、休日は、原則として、毎週1日以上与えることが原則で、4週間を通じ4日以上の休日を与える変形休日制は例外規定となります。変形休日制は、連続勤務日数が増加し、最大48日連続勤務が可能となってしまうため、労働者にとって厳しい制度となりますので、採用する際は、「4週間の起算日」を明確にして労働者に周知させる必要があります。なお、この変形休日制は現在厚生労働省で改正の検討が進められており、2026年までに、14日以上の連続勤務を禁止するような法改正に向けた検討が進められています。
なお、現在は週休2日制を採用している企業も多いかと思われますが、時間外労働・割増賃金の算定などで用いられる「休日労働」とは、週1回の休日に労働させることを言いますので、たとえば土曜日を法定外休日、日曜日を法定休日と定めた場合に、土曜日に労働させることは休日労働には該当しません。
休日の振替・代休
「休日の振替」とは、あらかじめ休日と定められていた日を労働日とし、もともと労働日であった日を休日とすることをいい、「代休」とは、休日労働をさせた後で、特定の労働日の労働義務を免除することをいいます。休日の振替を行なうと、もともと休日であった日は労働日としてカウントされますので、原則として割増賃金の支払いは必要ありません。反対に代休によって休日に労働した場合はあくまで休日労働となりますので、割増賃金の支払いが必要となります。
一方、休日の振替によって新たに休日となった日は、そのまま休日としてカウントされますが、代休の場合は、すでに休日の割増賃金の支払いをしていることから、労働基準法上は代休を与える義務はなく、労働者も代休を請求する権利はありません。
まとめ
いかがだったでしょうか。
特に、休憩時間の考え方については、前回解説したように、休憩時間か労働時間化の境目が曖昧となっているケースが多々あります。実は今まで休憩時間と考えていたものが、実は労働時間だったといった事象がないかについて、専門家に相談の上検討することをお勧めします。
次回は1ヶ月単位の変形労働時間制について解説します。
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