意外と知らない賃金の落とし穴を社労士が解説!⑤〜賃金の端数処理〜
2024/10/17
はじめに
従業員を雇用する企業であればどこでも、従業員に対して労働の対価として賃金を支払うかと思います。賃金の金額や支払い方などは企業によってさまざまかと思いますが、この賃金には、知っておかないとトラブルになる落とし穴がたくさん存在します。
当ブログでは賃金に関するさまざまな注意点について、複数回にわたって解説します。
今回は賃金の端数処理についてです。
賃金の端数処理
以前解説した平均賃金や割増賃金を計算する際に、円未満の端数が生じることがよくあるかと思います。この端数処理は、経営者が恣意的に処理してしまうと、労働者の不利となってしまう可能性があります。しかし、以下の方法によって行われる端数処理は、事務処理の簡便を目的としてものであり労働基準法上認められている処理となります。
① 1か月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した残額)に100円未満の端数が生じた場合は、四捨五入して支払うこと
② 1か月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した残額)に1,000円未満の端数が生じた場合は、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと
③ 平均賃金の算定において、賃金の総額を総暦日数で除した金額の銭未満の端数を切り捨てること
④ 平均賃金及び割増賃金の算定において、1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、四捨五入して支払うこと
⑤ 割増賃金の計算において、1か月における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、四捨五入して支払うこと
⑥ 割増賃金の計算において、1か月における時間外労働、深夜労働、休日労働の各々の時間数の合計に、1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を切り上げること
なお、①②の方法を採用する場合には、その旨を就業規則に定めることが必要となります。
よく、関与先から「1日あたりの残業時間で、10分未満の端数が出ちゃうのを、集計するのがとても手間だから、切り捨ててしまって大丈夫かな?」と質問が来ることがありますが、当該方法は上記には該当していませんので、1日あたりの時間外労働等は1分単位で算定しなければなりません(もちろん、『10分未満を切り上げる』といった、労働者に有利な方法を採用することは可能です。)。
まとめ
いかがだったでしょうか。
端数処理に関しては、金額は大きくないかもしれませんが、知らないうちに労働基準法違反となっているケースも少なくなく、注意が必要な論点となります。今一度自身の会社の賃金の計算方法を見直してみてはいかがでしょうか。
次回は休業手当について解説します。
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