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意外と知らない賃金の落とし穴を社労士が解説!④〜割増賃金〜

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意外と知らない賃金の落とし穴を社労士が解説!④〜割増賃金〜

意外と知らない賃金の落とし穴を社労士が解説!④〜割増賃金〜

2024/10/14

はじめに

 従業員を雇用する企業であればどこでも、従業員に対して労働の対価として賃金を支払うかと思います。賃金の金額や支払い方などは企業によってさまざまかと思いますが、この賃金には、知っておかないとトラブルになる落とし穴がたくさん存在します。

 当ブログでは賃金に関するさまざまな注意点について、複数回にわたって解説します。

 今回は割増賃金についてです。

 

割増賃金の概要

 割増賃金とは、労働者に時間外労働休日労働深夜労働をさせた場合に、通常の賃金とは別に支払わなければいけない賃金のことを指します。

 それぞれの支払い条件と割増率をまとめると次の通りです。

具体的には、原則として下記のように算定されます。

割増事項 支払い条件 割増賃金率
時間外労働  法定労働時間を超えて労働させたとき 25%
 法定労働時間を超える労働が1か月60時間を超えたときの、その超える部分

50%

休日労働  法定休日に労働させたとき 35%
深夜労働  22時から翌日5時までの間に労働させたとき 25%

 ※ 例えば、時間外労働と深夜労働が重複する場合には、50%(75%)の割増賃金を支払う必要があります。

 

 それでは、割増事項ごとの詳細な条件を解説します。

 

時間外労働

 労働基準法32条において、法定労働時間は原則として1日8時間、1週40時間と定められています。この法定労働時間を超えて労働者を労働させた時間について、割増賃金が発生します。よって、会社独自で別途所定労働時間を1日7時間、1週35時間などと設定している場合は、仮に所定労働時間を超えて労働したとしても、法定労働時間を超えていなければ、割増賃金を支払う必要はありません(しかし、通常の賃金は支払わなければなりません。)。また、変形労働時間制を採用している場合で、あらかじめ労働時間を1日10時間等と定めている場合は、仮に8時間を超えたとしても、定めた時間を超えていなければ割増賃金を支払う必要はありません。

 もう一つ注意点として、法定労働時間を超える労働が1か月60時間を超えたときの、その超える部分については、割増賃金率が50%に増加しています。そして、この60時間のカウントには法定休日労働は含まれないため注意が必要です。

 

休日労働

 労働基準法35条において、法定休日として、毎週少なくとも1回、または4週間で4回以上の休日を与えなければならないと定められています。この法定休日に労働者を労働させた時間について、割増賃金が発生します。よって、会社独自で週休2日制のように、別途休日を定めている(この休日を法定外休日と言います。)場合、仮に休日労働したとしても、割増賃金を支払う必要はありません。しかし、法定外休日に労働したことにより、法定労働時間を超えている場合には、時間外労働としての割増賃金を支払う必要があります。また、あらかじめ法定休日と別の労働日を振り替えて労働させた場合も、割増賃金を支払う必要はありません。

 

深夜労働

 労働基準法37条において、原則22時から翌日5時までの間の労働を深夜労働と定めています。この時間帯に労働者を労働させた時間について、割増賃金が発生します。これは、所定労働時間が深夜の時間であっても発生するため注意が必要です。

 

割増賃金の計算方法

 割増賃金は前回解説した「平均賃金」ではなく、「通常の労働時間又は労働日の賃金」をもとに算定されます。この「通常の労働時間又は労働日の賃金」は次のように算定されます。

割増賃金 = 時間単価 × 残業時間 × 割増率

 このうち、時間単価については、賃金形態ごとに次のように定められています。(労基則19条1項)

 

賃金形態 計算方法
時給制  時間給の金額
日給制

 日給の金額 ÷1日の所定労働時間数

(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日平均所定労働時間数)

週給制

 週給の金額 ÷1週間の所定労働時間数

(週によって所定労働時間数が異なる場合には、4週間における1週平均所定労働時間数)

月給制

 月給の金額 ÷1か月の所定労働時間数

(月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)

旬給

半月給等

 当該期間の金額 ÷ 当該期間の所定労働時間数

(期間によって所定労働時間数が異なる場合には、一定期間における平均所定労働時間数)

請負給  賃金算定期間の賃金総額 ÷ 賃金算定期間における総労働時間数

上記複数

の形態

 各部分につき、それぞれ上記の計算方法によって算定した金額の合計額

 

 また、それぞれの賃金から下記の手当等は除かれます。(労基法37条5項)

家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、夜間看護手当(ただし、一律に同額支給されている場合は賃金に含まれます。)

臨時に支払われた賃金(結婚手当等)

・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)

 

割増賃金を支払わない場合の罰則

 割増賃金の規定に違反した場合、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されます(労働基準法119条1号)

 

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 最近では、労働者が賃金未払い請求の裁判を起こすケースも増えており、場合によっては多額の損害金が発生することもあるため、労働時間及び割増賃金の管理は適切に行い、トラブルを事前に防ぐようにしましょう。

 次回は賃金の端数処理について解説します。

 磯会計センターでは、茨城でお困りの中小事業主様や個人事業主様に、会計・税務・労務から補助金・融資など幅広くサポートをしておりますので、お悩み事がございましたらぜひお気軽にご相談ください。

 

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