【労務】年収の壁支援パッケージを税理士兼社労士が解説!①〜年収の壁の種類〜
2024/09/05
はじめに
2023年10月から、「年収の壁・支援パッケージ」という政策がスタートしているのを皆さんはご存知でしょうか。
「年収の壁・支援パッケージ」とは、パートやアルバイトの方で、年収の壁によって労働時間を抑えている人向けに、年収の壁を意識せずに働くことができるようにする施策のことです。当ブログでは、この「年収の壁・支援パッケージ」の内容について、複数回にわたって詳しく解説します。
今回はその前段階として、年収の壁の種類について解説します。
年収の壁とは
年収の壁とは「税金や社会保険料の負担がかからなくなる上限の金額」を指します。年収の壁と聞いて一番に思い浮かぶのは「103万円の壁」と「130万円の壁」かと思いますが、実はそのほかにも年収の壁には複数の種類があります。
年収 | 住民税 | 所得税 | 配偶者控除 | 社会保険料 | 配偶者特別控除 |
100万円以下 | 非課税 | 非課税 | 対象 | 加入義務なし | 対象外 |
100万円超103万円以下 |
課税 |
||||
103万円超106万円未満 | 課税 | 対象外 | 対象 | ||
106万円以上130万円未満 |
条件付きで 加入義務あり |
||||
130万円以上150万円以下 | 加入義務あり ※ | ||||
150万円超201万円以下 | 段階的に控除減 | ||||
201万円超 | 対象外 |
※ 60歳以上や障害者の場合は、130万円以上ではなく、180万円以上で控除ありとなります。
100万円の壁
一般的には年収が100万円を超えると、住民税の負担が生じます※。住民税は「所得割」と「均等割」で構成されており、茨城県の場合、「所得割」は、課税標準額に税率10%(市民税6%,県民税4%)を乗じた金額が、「均等割」は5,000円が徴収されます。
茨城県在住のパートさんで、年収が101万円の場合で基礎控除以外の所得控除がないケースの住民税は下記となります。
<所得割> 年収101万円 - 給与所得控除55万円 - 住民税の基礎控除43万円 = 3万円(課税標準額) <均等割> 5,000円 【住民税】 所得割3,000円+均等割5,000円=住民税8,000円 |
103万円の壁
一般的には年収が103万円を超えると、上記の住民税に加え、所得税の負担が生じます※。所得税は、課税標準額に累進課税による税率を乗じた金額が徴収されます。
茨城県在住のパートさんで、年収が105万円の場合で所得控除がないケースの住民税は下記となります。
【所得税】 年収105万円 - 給与所得控除55万円 - 住民税の基礎控除48万円 = 2万円(課税標準額) |
106万円の壁
以下のすべての要件を満たすパートやアルバイトの人は、社会保険の加入義務が生じます。要件のうち「所定内賃金が月額8万8,000円」を年収に換算すると約106万円になることから、「106万円の壁」といわれています。
・勤務先の従業員数が101人以上(2024年10月以降は51人以上となります。)
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・勤務期間が2ヵ月を超える見込みがある
・学生ではない
・賃金が月額8万8,000円以上※2
茨城県在住のパートさんで、50歳で障害等はなく、協会けんぽ加入の会社に勤務し、月額9.8万円(年収117.6万円)のケースの令和6年3月以降の個人負担の社会保険料は下記となります。
【健康保険料率】4.83% 【厚生年金保険料率】9.15% 【介護保険料率】0.8% 【合計】14.78% 9.8万円 × 14.78% = 14,484.4円 ... 14,484円 |
130万円の壁
年収130万円を超えると、106万円の壁で解説した要件で対象外となった場合であっても、家族の扶養から外れることとなるため、国民健康保険や勤務先の社会保険に加入する義務が生じることになります。
なお、一時的な増加であれば、扶養は取り消されない場合もありますが、一般的に130万円の壁における年収には、残業代や通勤手当等も含まれるため、注意するようにしましょう。
150万円の壁
年収が150万円を超えると、これまでその人を扶養していた家族の配偶者特別控除が段階的に減少するため、世帯合計として所得税や住民税の負担が増えることとなります。
配偶者特別控除は下記の通りとなります。
納税者の合計所得金額 | ||||
900万円以下 |
900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 額 |
48万円超95万円以下(年収103万円超150万円以下) |
38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下(年収150万円超155万円以下) |
36万円 | 24万円 |
12万円 |
|
100万円超105万円以下(年収155万円超160万円以下) |
31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超110万円以下(年収160万円超166.6万円以下) |
26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超115万円以下(年収166.6万円超175万円以下) |
21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超120万円以下(年収175万円超182.8万円以下) |
16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超125万円以下(年収182.8万円超190万円以下) |
11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超130万円以下(年収190万円超197.1万円以下) |
6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超133万円以下(年収197.1万円超201.4万円以下) |
3万円 | 2万円 | 1万円 |
201万円の壁
上記の表のように、年収が201.4万円になると、段階的に減少していた配偶者特別控除がゼロになってしまいます。配偶者特別控除がゼロになってしまうために、「201万円の壁」と呼ばれています。
※1 医療費控除等の所得控除がある場合には、100万円の壁や103万円の壁を超えた場合でも各種税金が発生しない場合があります。
※2 残業代・賞与・最低賃金に含まれないとされた手当(通勤手当・家族手当等)は含まれません。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は年収の壁の種類について、解説しました。皆さんが思っているよりも多くの壁があったかと思います。
次回はこれらの壁に対応するための「年収の壁・支援パッケージ」の内容について解説します。
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