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【会計処理】圧縮記帳について税理士が解説!③〜交換差益〜

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【会計処理】圧縮記帳について税理士が解説!③〜交換差益〜

【会計処理】圧縮記帳について税理士が解説!③〜交換差益〜

2024/09/02

はじめに

 みなさんは「圧縮記帳」という会計処理をご存知でしょうか。圧縮記帳とは、節税対策のうち繰延節税を目的として行われる会計処理であり、固定資産の取得等をした際に、一定の要件を満たした場合に、取得等のために享受した利益に対する課税を繰り延べる効果を持っています。

 今回はこの圧縮記帳のうち、交換差益の概要及び論点について解説します。

 

圧縮記帳とは

 圧縮記帳は、節税対策のうち繰延節税を目的として行われる会計処理です。例えば、固定資産の取得のために補助金等の交付を受けた場合、補助金は受領時に「国庫補助金受贈益」という、企業の利益として計上されます。つまり、その補助金を受領したことにより法人税等の負担が大きくなってしまいます。よって、せっかく補助金をもらったとしても、一部しか固定資産の取得のために使用できなくなってしまいます。そこで、圧縮記帳という会計処理を用いることによって、当該利益に対する課税を繰り延べることができるという仕組みです。

 

交換により取得した資産の圧縮記帳

 例えば、法人がとある固定資産を他の固定資産と交換した場合、時価で譲渡し、時価で取得をしたものとして扱われますます。よって、譲渡資産の帳簿価額よりも時価が高い場合は、その差額は譲渡益として計上されることになり、譲渡益に対して法人税が課せられることとなります。しかし、固定資産の交換は、それに紐づく現金収入がないため、会社に資金力がない場合当該法人税がとても重い負担となってしまいます。

 ここで、その交換が一定の要件を満たすときは、圧縮限度額の範囲内で交換により取得した資産の帳簿価額を減額し、損金の額に算入する圧縮記帳の適用を受けることができることとされています。

 ここでいう一定の要件とは、下記のすべての条件を満たすものをいいます。

① 譲渡資産と取得資産が、土地(借地権を含む。)、建物(付属する設備や構築物を含む。)する、機械および装置、船舶、鉱業権のいずれかに該当するものであり、かつ、互いに同じ種類の資産であること。

② 譲渡資産も取得資産もいずれも固定資産であること。⇨棚卸資産としての土地や建物の交換は対象外

③ 譲渡資産も取得資産も、いずれもそれぞれの所有者が1年以上所有していたものであること。

④ 取得資産は、相手方が交換するために取得したものでないこと。

⑤ 取得資産を譲渡資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。

交換差益等の額(交換時の取得資産の時価と譲渡資産の時価との差額)が、交換時の取得資産の時価と譲渡資産の時価のいずれか高い方の時価の20%以下であること。

⑦ 清算中の法人でないこと

 また、圧縮限度額は交換差金等の有無等により、次の算式によって計算します。

 

圧縮限度額

・交換差金等がない場合

圧縮限度額 = 取得資産の価額 -(譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額 + 譲渡経費の額)

・交換差金等を受け取った場合(交換時の取得資産の時価の方が、譲渡資産の時価よりも低かった場合)

・交換差金等を支払った場合(交換時の取得資産の時価の方が、譲渡資産の時価よりも高かった場合)

圧縮限度額=取得資産の価額-(譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額+譲渡経費の額+交換差金等の額)

 

 

具体例1(直接減額方式)

取得資産の時価 : 900万円

譲渡資産の時価 : 1,000万円

譲渡資産の帳簿価格 : 450万円

取得した交換差金 : 100万円

譲渡経費:50万円

  仕訳
 固定資産を交換した  

 取得資産     900万円 / 譲渡資産    450万円 

 経費       50万円 / 現預金       50万円

 現預金      100万円 / 交換差益    550万円

 圧縮記帳の適用

 固定資産圧縮損① 450万円 / 取得資産     450万円

 

① 圧縮限度額 = 900万円 ー((450万円 + 50万円)× 900万円)÷(900万円 + 100万円)

 

複数の固定資産を交換した場合

 

① 2以上の種類の固定資産を交換した場合

 例えば、土地付建物をそれぞれ交換した場合のように、土地と建物の2以上の種類の固定資産を同時に交換した場合は、土地と土地、建物と建物をそれぞれ交換したものとして判定及び計算を行います。

 よって、土地付建物の合計の時価が等しくても、土地と土地、建物と建物のそれぞれの時価が異なっているときは、その時価の差額は交換差金とされ、当該交換差金を持って、20%以下がどうかの判定を行ったり、圧縮限度額の計算を行います。

 なお、この時譲渡経費が発生している場合は、圧縮限度額の計算上は、譲渡資産の時価の割合で按分することとされています。

 

具体例2

取得する土地付建物の時価 : 1,000万円(土地の時価:550万円、建物の時価:450万円)

譲渡する土地付建物の時価 : 1,000万円(土地の時価:500万円、建物の時価:500万円)

 

・交換差金が20%以内かどうかの判定

 ① 建物に係る交換差金の判定

 500万円 - 450万円 = 50 ≦ 500万円 × 20% = 100万円

 ② 土地に係る交換差金の判定

 550万円 - 400万円 = 50 ≦ 550万円 × 20% = 110万円

 

① 1種類の固定資産を複数交換した場合

 例えば、複数の土地を合算して交換した場合のように、1種類の固定資産を複数同時に交換した場合は、適用要件の判定においては、複数の土地を合算して判定を行い、圧縮限度額の計算においては、それぞれの土地ごとに譲渡益の生じるもののみを対象として計算を行います。

 

具体例3

取得する土地の時価 : 1,000万円(土地Aの時価:400万円、土地Aの帳簿価格:200万円)

               (土地Bの時価:600万円、土地Bの帳簿価格:400万円)

譲渡する土地の時価 : 1,000万円(土地Cの時価:200万円、土地Cの帳簿価格:100万円)

               (土地Dの時価:800万円、土地Dの帳簿価格:400万円)

 

土地C⇨時価が簿価を下回り譲渡損が計上されるため、圧縮記帳の適用対象外。

土地D⇨圧縮記帳の適用対象

   ⇨土地Aの一部(時価200万円部分)及び土地Bとを等価交換したものと考える※ 

  仕訳
 固定資産を交換した  

 土地A       400万円 / 土地C      600万円 

 土地B       600万円 / 土地D      300万円

 固定資産譲渡損  300万円 / 交換差益      400万円

 圧縮記帳の適用

 固定資産圧縮損① 100万円 / 土地A       100万円

 固定資産圧縮損② 300万円 / 土地B       300万円

 

① 圧縮限度額 = 200万円 ー 400万円 ×(200万円 ÷ 800万円)

② 圧縮限度額 = 600万円 ー 400万円 ×(600万円 ÷ 800万円)

 

なお、相手方は土地A及び土地Bいずれも時価が帳簿価格を上回るため、いずれも圧縮記帳の適用対象となります。

 

※ 今回のケースでは土地Aの一部を切り出したが、実務上は当事者間の契約内容によって判断するものとする。

 

 

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 今回はを交換差益が発生した際の圧縮記帳について、一部の論点を解説しました。固定資産の交換自体が何度も経験することがない事例かと思いますので、適用にあたってはお近くの専門家に相談の上、誤りのないようにしましょう。

 磯会計センターでは、茨城でお困りの中小事業主様や個人事業主様に、会計・税務から補助金・融資など幅広くサポートをしておりますので、お悩み事がございましたらぜひお気軽にご相談ください。

 

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