【企業防衛】保険税務の取り扱いを税理士が解説!③〜定期保険〜
2024/08/05
はじめに
前回から、保険商品ごとの会計処理について解説しています。
今回はそのうち、契約者が法人のケースにおける定期保険についての会計処理を解説します。なお、投稿日現在の税制に基づく処理となることご了承ください。
定期保険とは
定期保険とは、契約時に定めた契約時に定めた一定期間について、死亡保障や重大疾病を患った場合に保障される保険です。法人向けとしては長期平準定期保険※1、もしくは逓増定期保険※2によって、死亡保障と併せて、資金繰り対策、退職金づくりとして活用する例が多いです。
※1 保障と保険料が一定である保険で、払い込んだ保険料の一部が返戻金として受け取ることができます。
※2 経過年数に応じ保障と保険料がともに増加していく保険で、払い込んだ保険料の一部が返戻金として受け取ることができます。
定期保険の会計処理
定期保険は、最高解約返戻率によって払込時の会計処理が異なります。
① 最高解約返戻率50%以下の場合※1
定期保険を払込した際は、その全額を費用計上します。
② 最高解約返戻率50%超70%以下の場合
定期保険を払込した際は、保険期間の当初4割相当の期間を経過する日まで、支払保険料の40%を資産計上し、60%を費用計上します。その後は支払保険料の全額を費用計上し、当初資産に計上した金額は、保険期間の7.5割相当の期間経過後から、保険期間の終了の日までにわたって均等償却します。
③ 最高解約返戻率70%超85%以下の場合
定期保険を払込した際は、保険期間の当初4割相当の期間を経過する日まで、支払保険料の60%を資産計上し、40%を費用計上します。その後は支払保険料の全額を費用計上し、当初資産に計上した金額は、保険期間の7.5割相当の期間経過後から、保険期間の終了の日までにわたって均等償却します。
④ 最高解約返戻率85%超の場合
定期保険を払込した際の、資産計上期間と計上金額は以下のとおりです。
・資産計上期間:次のAとBのうちいずれか長い期間(5年未満となる場合は5年)
A:保険期間開始日から最高解約返戻率となる期間の終了の日まで
B:Aの期間経過後において「(当年の解約返戻金相当額 - 前年の解約返戻金相当額)÷ 年換算保険料相当額※2」が70%を超える期間
資産計上金額:
・保険期間の当初10年経過する日までは、「当期支払保険料 × 最高解約返戻率の90%」
・保険期間の11年目以降残りの資産計上期間は、「当期支払保険料 × 最高解約返戻率の70%」
その後は支払保険料の全額を費用計上し、当初資産に計上した金額は、解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後※3 から保険期間の終了の日までにわたって均等償却します。
定期保険の死亡保険金(解約返戻金)受取時の会計処理
満期保険金や死亡保険金・解約返戻金を受け取った際は、それまで資産計上していた保険積立金を取り崩し、保険積立金と保険金の差額を雑収入(雑損失)として計上します。
定期保険の名義人を変更した際の会計処理
役員や従業員の退職に伴い、保険金の受取人を役員や従業員の遺族に変更した際は、退職時に解約返戻金を当該役員や従業員に支給したものと捉え、それまで資産計上していた保険積立金を取り崩し、保険積立金と保険金の差額を雑収入(雑損失)として費用計上します。
また、解約返戻金相当額は退職金とみなされるため、その他現金等で支給している退職金がある場合には、合算して源泉徴収を行う必要があることに留意してください。
会計処理設例(最高解約返戻率70%超85%以下の場合)
No. | 設例 | 仕訳 |
①-1 |
定期保険の保険料(年払)を3,000千円支払った。 (保険期間の当初4割まで) |
保険積立金 1,800千円 / 現金 3,000千円 保険料 1,200千円 |
①-2 |
定期保険の保険料(年払)を3,000千円支払った。 (保険期間の当初4割から保険期間の7.5割まで) |
保険料 3,000千円 / 現金 3,000千円 |
①-3 |
定期保険の保険料(年払)を3,000千円支払った。 (保険期間の当初7.5割から保険期間の終了の日まで) |
保険料 3,000千円 / 現金 3,000千円 保険料 X千円 / 保険積立金 X千円 |
②-1 | 定期保険を解約した。 |
現金 25,000千円 / 保険積立金 27,000千円 雑損失 2,000千円 / |
②-2 |
被保険者が退職したため、退職金を10,000千円支払うとともに、 受取人を役員に変更した。 |
退職金 35,000千円 / 保険積立金 27,000千円 雑損失 2,000千円 / 現金 9,950千円 / 預り金 50千円 |
②-3 | 役員が死亡した。 |
現金 50,000千円 / 保険積立金 45,000千円 / 雑収入 5,000千円 |
※1 保険期間3年未満のものや、最高解約返戻率が50%超70%以下かつ一被保険者あたりの年換算保険料相当額が30万円以下(全ての保険会社の契約を合算したもの)のものを含みます。
※2 その保険の保険料の総額 ÷ 保険期間の年数
※3 資産計上期間が5年未満のため5年となった場合には、5年経過後となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は定期保険の会計処理について解説しました。定期保険は解約返戻率によって細かく会計処理が異なるため、会計処理を誤りやすいです。前述したように、死亡保障と併せて、節税対策、資金繰り対策、退職金づくりとして、法人の保険商品としてはとてもメジャーなものとなっていますので、お近くの専門家とも相談の上、ご自身の事業の状態やライフスタイルに合わせて商品を検討することをお勧めします。
次回は医療保険の会計処理について解説します。
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