【企業防衛】保険税務の取り扱いを税理士が解説!①〜終身保険〜
2024/07/29
はじめに
前回、企業の標準保証額について解説しましたが、標準保証額の確保のためには専ら保険商品が活用されます。これは企業の経営者や役員に不測の事態が生じた際に保険金として受け取れるためですが、そもそも一言で保険と言ってもその種類は様々で、保険会社もそれぞれ多種多様な保険商品を展開しています。また保険の種類によって会計処理も異なり、正確に経理処理を行う必要があります。
今回はそのうち、契約者が法人のケースにおける終身保険についての会計処理を解説します。なお、投稿日現在の税制に基づく処理となることご了承ください。
終身保険の会計処理
終身保険とは
終身保険とは、加入してから一生涯にわたり、死亡保障や高度障害保障が継続する保険のことです。保険料は他の保険と比べて割高となりますが、終身保険は保険期間が終身(一生涯)のため、被保険者が何歳で死亡したとしても、保険金受取人は保険会社から死亡保険金を受け取ることができます。
終身保険の払込時の会計処理
保険金の受取人を法人としている場合、終身保険を払込した際は、その全額を保険積立金として資産計上します。
保険金の受取人を役員や従業員の遺族としている場合、終身保険を払込した際は、その全額を給与として費用計上します。
終身保険の死亡保険金(解約返戻金)受取時の会計処理
保険金の受取人を法人としている場合、死亡保険金や解約返戻金を受け取った際は、それまで資産計上していた保険積立金を取り崩し、保険積立金と保険金の差額を雑収入(雑損失)として費用計上します。
保険金の受取人を役員や従業員の遺族としている場合、特に会計処理は不要です。
終身保険の名義人を変更した際の会計処理
これまで保険金の受取人を法人としていたが、役員や従業員の退職に伴い、保険金の受取人を役員や従業員の遺族に変更するケースがあるかと思います。この場合には、退職時に解約返戻金を当該役員や従業員に支給したものと捉え、それまで資産計上していた保険積立金を取り崩し、保険積立金と保険金の差額を雑収入(雑損失)として費用計上します。
また、解約返戻金相当額は退職金とみなされるため、その他現金等で支給している退職金がある場合には、合算して源泉徴収を行う必要があることに留意してください。
会計処理設例(保険金の受取人が法人のケース)
No. | 設例 | 仕訳 |
① | 終身保険の保険料(年払)を3,000千円支払った。 | 保険積立金 3,000千円 / 現金 3,000千円 |
②-1 | 9年後、終身保険を解約した(解約返戻金25,000千円)。 |
現金 25,000千円 / 保険積立金 27,000千円 雑損失 2,000千円 / |
②-2 |
9年後、被保険者が退職したため、退職金を10,000千円支払うととも に、受取人を役員に変更した(解約返戻金25,000千円)(源泉50千円)。 |
退職金 35,000千円 / 保険積立金 27,000千円 雑損失 2,000千円 / 現金 9,950千円 / 預り金 50千円 |
②-3 | 15年後、役員が死亡した。(死亡保険金50,000千円) |
現金 50,000千円 / 保険積立金 45,000千円 / 雑収入 5,000千円 |
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は終身保険の会計処理について解説しました。終身保険の会計処理は保険の種類の中でも比較的簡単とも言えますが、保険料の支払い時には経費とすることができないため、繰延節税としての節税効果はない形態ともいえます。お近くの専門家とも相談の上、ご自身の事業の状態やライフスタイルに合わせて商品を検討することをお勧めします。
次回は養老保険の会計処理について解説します。
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