【節税】事前確定届出給与の概要やメリットデメリットを税理士が解説!
2024/03/11
はじめに
経営者の皆様は毎月の役員報酬をどのように決めているでしょうか。役員報酬は、従業員給与とは異なり、不相当に高額な役員給与を支給することにより利益調整を行うことを防ぐため、様々な規制が設けられています。
役員報酬を損金として計上するためには「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかの要件を満たす必要があります。今回はこのうち「事前確定届出給与」の内容や要件、メリットデメリットなどを解説します。
事前確定届出給与とは
「事前確定届出給与」とは、役員の方が報酬の支払時期や支払金額等を定め、事前に税務署に届出をすることで、損金算入することができる役員報酬のことを言います。
事前確定届出給与を損金とするためには、所轄の税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、届出書に記載した支給日に届出書に記載した金額を支払う必要があります。これは毎年届出が必要なものであるため、届出を忘れてしまったり、届出書と異なる支給日に支払ったり、届出書と異なる金額で支払ったりした場合には、事前確定届出給与を損金算入することはできないため、注意しましょう。
メリット・デメリット
メリット①:社会保険料が節約できる可能性がある。
社会保険料の金額は、原則4月~6月の3か月間に支給された報酬をベースに決定されますので、年間で支給する報酬の総額は変えずに、毎月の役員報酬(定期同額給与)の金額を抑え、事前確定届出給与として支給することによって、毎月支払う社会保険料を抑えることができます。また、賞与に対する社会保険料については、計算上上限が設定されており(健康保険料 は報酬の上限が年間573万円、厚生年金保険料は報酬の上限が1回あたり150万円。)、上限を超えた金額には社会保険料がかからないため、設定額次第では全体としての社会保険料も節約することができる可能性があります。
極端な例ですが、年収1,200万円の役員(役員報酬月額100万円)の方が、役員報酬月額(定期同額給与)を10万円にし、事前確定届出給与を1,080万円にするとした場合、社会保険料の負担は約半分程度に抑えることが可能です。
メリット②:高額療養費制度上で有利になる
高額療養費制度とは、医療機関等で支払う医療費が一定の上限額を超えた場合、一定の金額が払い戻される制度です。この高額療養費制度の上限額というのも、原則4月~6月の3か月間に支給された報酬をベースに決定されますので、年間で支給する報酬の総額は変えずに、毎月の役員報酬(定期同額給与)の金額を抑え、事前確定届出給与として支給することによって、少額の医療費でも高額療養費制度が利用できるようになります。
デメリット①:将来の年金やけがをした時の傷病手当金が少なくなる
メリット①で説明したように事前確定届出給与を使うことによって社会保険料を抑えることが可能ですが、社会保険料を抑えるということは将来の年金やけがをした時の傷病手当金、出産時の出産手当金の金額も少なくなるということです。負担と給付の関係を考慮したうえで判断をする必要があるということです。
デメリット②:役員退職金が少なくなる
役員退職金は無条件にいくらでも支給することができるわけではなく、不相当に高額な役員退職金は損金に算入できません。この相当な金額を決定するにあたって実務上用いられている計算方法が、功績倍率に基づいた計算です。功績倍率は、「退職時の月額給与×功績倍率×勤続年数」で計算されるため、毎月の報酬額を抑えてしまうと、いざ退職するときにもらえる役員退職金の金額が少なくなってしまいます。
デメリット③:所得税が増える
社会保険料は、所得税の計算上「社会保険料控除」として所得の金額から差し引くことができます。つまり、支払う社会保険料を減らすということは、その分社会保険料控除の金額も少なくなるため、所得が大きくなり、所得税の負担が増えることとなります(具体的には社会保険料の減少額×所得税率分だけ所得税が増えます。)。所得税の税率が高い人は特に負担が大きくなるため、社会保険料の減少によるメリットが小さくなってしまいます。
デメリット④:税務署・年金事務所に否認されるリスク
事前確定届出給与は前述したように、届出書に記載した支給日に届出書に記載した金額を支払う必要があります。例えば、会計上は届出日に支給したようにして、実際は役員貸付金としておき、給与支給月に一定額返済しているというような不適切な処理をしていると、税務署から当該支出が損金不算入とみなされてしまうリスクがあります。また、このような不適切かつ極端な社会保険料の削減目的のためのスキームは、年金事務所からも否認されるリスクもゼロではありません。
まとめ
いかがだったでしょうか。
事前確定届出給与は上記のようにメリットデメリットがさまざまあるため、特徴をよく理解した上で、導入するか否かを検討するようにしましょう。
次回は「事前確定届出給与に関する届出書」の記載方法について解説します。
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