【基礎論点】所得税の仕組みを税理士が解説!⑭所得控除その2(障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・基礎控除)
2024/02/12
はじめに
所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。(平成25年からは復興特別所得税も併せて徴収されています。)
今回は確定申告を予定している方や、確定申告が必要かどうかわからない人向けに、所得税の基本論点や計算の流れ等を複数回に分けて解説します。第14回は所得控除のうち人的控除(障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除・配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・基礎控除)についてです。
所得控除とは、一定の要件の該当する場合に、所得金額の合計から一定の金額を差し引くことができる制度です。
所得控除は全部で15種類あり、それぞれに要件がありますので、下記にて詳しく解説します。
障害者控除
障害者控除とは、納税者自身、同一生計親族が一定の要件に当てはまる場合に一定の控除を受けることができる制度です。
障害者控除の範囲
内容 | 特別障害者となる範囲 |
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人 | 全員 |
知的障害者と判定された人 | 重度の知的障害者と判定された人 |
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人 | 障害等級が1級と記載されている人 |
身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人 | 障害の程度が1級または2級と記載されている人 |
満65歳以上かつ市区町村等によって障害者控除の対象と認められている人 |
特別障害者に準ずるものとして市区町村長等の認定を受けている人 |
戦傷病者手帳の交付を受けている人 |
障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人 |
原子爆弾被爆者として厚生労働大臣の認定を受けている人 | 全員 |
12月31日の現況で引き続き6か月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人 | 全員 |
障害者控除の計算
区分 | 控除額 |
---|---|
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者※ | 75万円 |
※ 同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計親族で、納税者自身、同一生計親族のいずれかとの常に同居している人です。
寡婦控除
寡婦控除とは、納税者自身が寡婦の場合に一定の控除を受けることができる制度です。
寡婦控除の範囲 その年の12月31日時点で、「ひとり親(下記参照)」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人
・夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
・夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
※ 納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象となりません。
障害者控除の金額
・27万円
ひとり親控除
ひとり親控除とは、納税者自身がひとり親の場合に一定の控除を受けることができる制度です。寡婦控除と異なり、性別は問いません。
寡婦控除の範囲 その年の12月31日時点で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人
・婚姻をしていないまたは配偶者はいるが生死の明らかでない場合
・納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいない
・生計を一にする子供がいる
※当該子供は、総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人のみが対象となります。
・合計所得金額が500万円以下
寡婦控除の金額
・35万円
勤労学生控除
勤労学生控除とは、納税者自身が勤労学生の場合に一定の控除を受けることができる制度です。
寡婦控除の範囲 その年の12月31日時点で、次の3つの要件のすべてに当てはまる人
・勤労による所得がある(給与所得・事業所得など)
・合計所得金額が75万円以下、かつ、勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下
・特定の学校の学生、生徒である
勤労学生控除の金額
・27万円
配偶者控除
配偶者控除とは、納税者に控除対象配偶者がいる場合に一定の控除を受けることができる制度です。
控除対象配偶者の範囲 その年の12月31日時点で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人
・民法の規定による配偶者である
・納税者と生計を一にしている
・年間の合計所得金額が48万円以下
・青色事業専従者として一度も給与を受けていないこと又は、白色事業専従者でない
配偶者控除の金額
納税者の合計所得金額 | |||
900万円以下 |
900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
|
控除対象配偶者 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
老人控除対象配偶者※ | 48万円 | 32万円 | 16万円 |
※ その年12月31日現在の年齢が70歳以上の控除対象配偶者をいいます。
配偶者特別控除
配偶者特別控除とは、配偶者控除を受けられない場合に、配偶者の所得金額に応じて、一定の控除を受けることができる制度です。
控除対象配偶者の範囲 その年の12月31日時点で、次の6つの要件のすべてに当てはまる人
・民法の規定による配偶者である
・納税者と生計を一にしている
・年間の合計所得金額が48万円超133万円以下
・配偶者特別控除を適用していない
・青色事業専従者として一度も給与を受けていない又は、白色事業専従者でない
・扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていない(給与や年金)
配偶者特別控除の金額
納税者の合計所得金額 | ||||
900万円以下 |
900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 額 |
48万円超95万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下 |
36万円 | 24万円 |
12万円 |
|
100万円超105万円以下 |
31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超110万円以下 |
26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超115万円以下 |
21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超120万円以下 |
16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超125万円以下 |
11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超130万円以下 |
6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超133万円以下 |
3万円 | 2万円 | 1万円 |
扶養控除
扶養控除とは、納税者に控除対象扶養親族がいる場合に一定の控除を受けることができる制度です。
控除対象扶養親族の範囲 その年の12月31日時点で、次の5つの要件のすべてに当てはまる人
・配偶者以外の親族、里子、市町村長から養護を委託された老人のいずれかである
・納税者と生計を一にしている
・年間の合計所得金額が48万円以下
・青色事業専従者として一度も給与を受けていないこと又は、白色事業専従者でない
・その年12月31日現在の年齢が16歳以上※
※ 該当の扶養親族が非居住者である場合は、次に掲げるいずれかに該当する必要があります。
・その年12月31日現在の年齢が16歳以上30歳未満
・その年12月31日現在の年齢が70歳以上
・その年12月31日現在の年齢が30歳以上70歳未満であって次に掲げるいずれかに該当すること
a. 留学中である場合
b. 障害者である場合
c. 納税者から38万円以上の生活費を受けている
扶養控除の金額
区分 | 控除額 | |
控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族※1 | 63万円 | |
老人扶養親族※2 | 同居老親等※3 | 58万円 |
上記以外 | 58万円 |
※1 特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満の方をいいます。
※2 老人扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、12月31日時点の年齢が70歳以上の方をいいます。
※3 同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者や配偶者の直系尊属で、納税者や配偶者と常に同居している方をいいます。
なお、扶養控除については、児童手当の拡充に伴い、廃止や縮小が検討されています。詳細に関しては結論が出次第解説いたします。
基礎控除
基礎控除とは、納税者本人の合計所得金額に応じて一定の控除を受けることができる制度です。
基礎控除の金額
納税者の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
まとめ
いかがだったでしょうか。
所得控除を受けることによって、税金が数十万から数百万も変わってくるケースもありますので、適用できる所得控除は忘れずに申告しましょう。
次回は税額計算及び税額控除について解説します。
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