【基礎論点】所得税の仕組みを税理士が解説!⑦事業所得
2024/01/24
はじめに
所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。(平成25年からは復興特別所得税も併せて徴収されています。)
今回は確定申告を予定している方や、確定申告が必要かどうかわからない人向けに、所得税の基本論点や計算の流れ等を複数回に分けて解説します。第7回は事業所得についてです。
事業所得とは
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。その他本来の事業活動による収入に他に、事業の遂行に付随して生ずる収入も事業所得の総収入金額に含まれます。一方、事業として行なっているものの中にも、下記のように事業所得にならないものもあります。
・外交員の報酬のうち固定給部分→給与所得
・不動産貸付業から生ずる所得→不動産所得
・保有期間が5年超の山林の伐採・譲渡による所得→山林所得
・事業用固定資産(店舗など)の譲渡による所得→譲渡所得
事業所得の計算
事業所得は、「総収入金額ー必要経費ー青色申告特別控除」で計算できます。
総収入金額
総収入金額は所得税法においては「収入すべき金額」を計上することとされていますが、その他含むもので代表的なもの及び計上すべき金額は下記の通りです。
・家事消費:取得価格もしくは通常の販売価格の70%のいずれか多い金額
・贈与:取得価格もしくは通常の販売価格の70%のいずれか多い金額
・低額譲渡:通常の販売価格の70%ー譲渡対価
必要経費
必要経費は所得税法においては「①売上原価等、②販売費、③一般管理費その他その業務について生じた費用」とされていますが、その他に資産損失や貸倒引当金繰入額など、別段の定めにより必要経費に算入するものとされています。
必要経費に算入する上で注意すべき論点をいくつか解説します。
・棚卸資産の取得価格
棚卸資産の評価方法は特段の選択をしない場合には最終仕入原価法により評価が行われます。ただし棚卸資産について次の事実が生じた場合には、その年の12月31日における処分可能価格をもって、評価額の基礎となる取得価格とすることができます。
①災害により著しい損傷
②著しい陳腐化(季節商品の売れ残りや、新型製品の登場によって、その商品が今後通常の方法により販売することができなくなる場合など)
③破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化等により、今後通常の方法により販売することができなくなる場合
一方、単なる物価変動、過剰生産による価格の低下では当該特例を適用することはできません。
・同一生計親族が事業から受ける対価
同一生計親族が事業に従事したことなどにより対価の支払いをする場合には、その対価は本来必要経費に算入されますが、所得税法においては恣意的な所得分散を避けるため、次の通り別段の取り扱いを定めています。
事業主の所得計算 | 同一生計親族に支払う対価は事業主の必要経費に算入しない。 | |
同一生計親族が支払っている必要経費は事業主の必要経費に算入できる。 | ||
親族の所得計算 | 支払いを受けた対価について、収入はないものとみなす。 | |
必要経費に算入されるべき金額について、費用はないものとみなす。 |
ただし、次に解説する『青色事業専従者給与』『事業専従者控除』を適用することによって、一定額必要経費に算入することができます。
『青色事業専従者給与』とは、青色申告者の同一生計親族(年齢15歳未満のものを除く)で、もっぱらその者の事業所得等を生ずべき事業に従事するものに対する給与のことをいい、支払った給与のうち、労務の対価として相当であると認められる金額を必要経費に算入することができます。
この適用を受けるためには、その年の3月15日までに一定の事項を記載した「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所管税務署長に提出する必要があります。
『事業専従者控除』とは、白色申告者の同一生計親族(年齢15歳未満のものを除く)で、もっぱらその者の事業所得等を生ずべき事業に従事する者がある場合に受けられる控除のことであり、『青色事業専従者給与』と違い、給与の支払いは要件とされていません。当該控除を適用することにより、事業専従者1人につき次の金額のうち低い金額を必要経費に算入することができます。
① 500,000円(配偶者の場合は860,000円)
② この規定適用前の事業所得等の金額÷(事業専従者+1)
この適用を受けるためには、確定申告書にこの規定の適用を受ける旨及び必要経費とみなされる金額に関する事項の記載をする必要があります。
また、上記でいう「もっぱらその者の事業に従事する」かどうかの判定は、原則としてその事業に専ら従事する期間がその年を通じて6月を超えるかどうかで判断します。ただし、青色事業専従者については、次のいずれかに該当するときは、その従事可能期間の2分の1を超える期間、事業に従事すれば足ります。
① 事業が、年の中途における開業、廃業等により、1年を通して営まれなかったこと
② 親族が、長期にわたる病気、婚姻等により1年を通して同一生計親族として事業に従事できなかったこと
青色申告特別控除
こちらは『【基礎論点】所得税の仕組みを税理士が解説!④不動産所得』を参考にしてください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
事業所得は個人事業主にとってのメインの所得になります。今回解説したもの以外にもさまざまな論点があり、事業によってはとても複雑になります。計算や申告に関して不安がある方は専門家に相談するようにしましょう。
次回は山林所得について解説します。
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