【基礎論点】所得税の仕組みを税理士が解説!②利子所得
2024/01/12
はじめに
所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。(平成25年からは復興特別所得税も併せて徴収されています。)
今回は確定申告を予定している方や、確定申告が必要かどうかわからない人向けに、所得税の基本論点や計算の流れ等を複数回に分けて解説します。第2回は利子所得についてです。
利子所得とは
利子所得とは、代表的なものでいうと、預貯金の利子に係る所得のことです。その他にも、公社債の利子や、合同運用信託、公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいいます。
下記は、利子所得と似ていますが、異なる所得となりますので注意しましょう。
項目 | 所得区分 | |
学校債、組合債の利子 | 雑所得 | |
貸金の利子 | 貸金業 | 事業所得 |
得意先、従業員に対するもの | 事業所得 | |
友人に対するもの | 雑所得 | |
所得税等の還付加算金 | 雑所得 |
利子所得の計算
利子所得は利子等の収入金額そのままの金額となりますが、利子所得は、原則として、その支払を受ける際、利子所得の金額に一律所得税15.315%、地方税5%の税率を乗じて算出した所得税・復興特別所得税が源泉徴収されているため、正確には源泉徴収される前の利子等の収入金額が、利子所得の金額となります。
利子所得は所得税法においては他の所得と総合して課税することとしていますが、簡素で中立的な制度にする目的で、租税特別措置法において上記のように源泉分離課税、もしくは申告分離課税とされています※1。つまり、ほとんどの利子所得は源泉徴収された所得税及び住民税だけで課税関係が完結し、確定申告書に記載する必要はありません※2。
※1 源泉分離課税とされる利子
①預貯金の利子
②合同運用信託の収益の分配
③同族会社が発行した特定公社債以外の社債の利子で、同族株主以外のものが受け取るもの
④私募公社債投資信託の収益の分配
申告分離課税とされる利子
①公募公社債投資信託の収益の分配又は上場公社債投資信託の収益の分配
②公募公社債等運用投資信託
③特定公社債の利子
※2 下記は例外として総合課税の対象となります。
①特定公社債以外の公社債の利子のうち、平成28年1月1日以後に支払いを受けるべき同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の判定の基礎となる一定の株主およびその親族等が支払を受けるもの
②令和3年4月1日以後に支払いを受けるべき同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の判定の基礎となる株主である法人と特殊の関係のある個人(法人との間に発行済株式等の50パーセント超の保有関係がある個人等)およびその親族等が支払を受けるもの
③海外の銀行に預金があり、その預金に対する利子を受け取った場合
非課税とされる利子所得
利子所得の中でも、納税貯蓄組合預金の利子、納税準備預金の利子やいわゆる子供銀行の預貯金等の利子については非課税とされています。また、次のような非課税制度もあります。
・障害者等の少額貯蓄非課税制度
この非課税制度には、障害者等の少額預金の利子所得等の非課税制度、障害者等の少額公債の利子の非課税制度があり、それぞれの元本の額が350万円までの利子等について非課税とされます。
この制度は、国内に住所を有する個人で、身体障害者手帳の交付を受けている人、遺族年金を受け取ることができる妻である人などに限られています。
また、郵政民営化前に非課税の適用を受けて預入された一定の郵便貯金の利子については、満期(または解約)までの間、引き続き非課税とされています。
・勤労者財産形成住宅貯蓄および勤労者財産形成年金貯蓄の利子非課税制度
勤労者の持家取得の促進するための財形住宅貯蓄と、勤労者の老後の生活安定のための勤労者財産形成年金貯蓄について、両方の貯蓄の元本の額の合計が550万円までの利子等について非課税とされます。
この制度を利用できる人は、年齢55歳未満の勤労者で、「給与所得者の扶養控除等申告書」を勤務先に提出している人に限られています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ほとんどの方は、利子所得を確定申告書において検討する必要はありませんが、海外の銀行に預金がある方などは、申告が必要なため注意するようにしましょう。
次回は配当所得について解説します。
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