【トピック】免税事業者必見!インボイス制度に伴う独占禁止法等との関係が公正取引委員会から公表されました。
2023/08/11
はじめに
インボイス制度の開始まで、残り2ヶ月を切りました。当記事をご覧になっている方の中には、まだインボイスの課税事業者になるか否かについて検討をしている最中の方もいるかもしれません。当ブログにおいても、インボイスに関する様々な解説をしていますので、ぜひ一度ご覧いただけると幸いです。
『【消費税】インボイス制度って何?免税事業者が考えるべきポイントは?』
『【消費税】農業従事者が知っておきたいインボイスの特例制度を解説!』
『【税制改正】インボイスの令和5年税制改正を税理士が解説!その1』
『【消費税】インボイスに関する国税庁Q&Aのポイントを税理士が解説!その1(適格請求書等保存方式の概要・適格請求書発行事業者の登録制度)』
さて、免税事業者がインボイスの課税事業者になることを選択する大きな理由として「課税事業者にならなければ、現在の取引先から価格減額交渉のリスクや、そもそもの取引の継続有無に関するリスクが生じるため」ということが挙げられてきましたが、先日、公正取引委員会のHPにおいて、公正取引委員会の対応等がまとめられましたので、今回はその概要を解説していきます。(なお、当記事はインボイス制度に伴う買い手と売り手の交渉過程を画一的に決定づけるものではなく、個別具体的な案件とは必ずしも合致しないことがありますが、当該記事に起因してご利用者様および第三者に損害が発生したとしても、当社は責任を負わない旨をあらかじめご了承ください。)
過度な取引価格の減額は違法!?
独占禁止法においては、自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として問題となることがあります。今回のインボイス制度開始に伴う取引価格の交渉についても、同様の注意を払う必要があります。例えば以下の例が挙げられます。
①買い手が、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、免税事業者である売り手に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合には、消費税相当額を取引価格から引き下げると文書で伝えるなど一方的に通告を行った場合
②買い手が、免税事業者である売り手に対して、一方的に、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しく低い取引価格を設定し、不当に不利益を与えることとなる場合であって、これに応じない相手方との取引を停止した場合
③買い手が、売り手から商品を購入する契約をした後において、売り手が免税事業者であることを理由に、商品の受領を拒否する場合
④買い手が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である売り手に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、その代わりに、取引の相手方に別途、協賛金、販売促進費等の名目での金銭の負担を要請する場合
⑤買い手が売り手に対し、課税事業者になるよう要請することにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告する場合
なお、上記において独占禁止法上問題となるのは、行為者の地位が相手方に優越していること、また、免税事業者が今後の取引に与える影響等を懸念して、行為者による要請等を受け入れざるを得ないことが前提となります。
どのような価格交渉が必要?
インボイス制度の開始を受けて、上記のような注意点がありますが、それでは実際に、買い手と売り手はどのような交渉を進めて行く必要があるのでしょうか。
まず大切なことは、「一方的な通告」だけで決定するのではなく、「2社間で協議をする」ことが非常に重要となります。対等な立場において交渉を行なった記録が残っていれば、独占禁止法上はクリアになる可能性は高くなります。
次に、価格の減額交渉をする場合は、「経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められている割合を考慮して交渉を行う」ということです。例えば、「インボイス制度開始から3年間は80%の仕入れ税額控除が認められるため、消費税分に対する減額は20%までにする。」といったかたちです。重要なのは、増加することになる消費税負担について、これを買い手と売り手の間で適切に分担するための価格引下げの要請を行うということです。
なお、買い手が多数の事業者の中から取引先を自由に選定できる立場の場合で、継続的契約でない場合は、不利益を示唆して一方的に取引を打ち切るようなことがない限り、取引際の変更による独占禁止法上で問題になるリスクは低いと考えられます。
売り手の立場としては、上記のような対応がしっかりと取られているかを確認するとともに、独占禁止法上で問題となるケースが発生している場合には、公正取引委員会や商工会議所等に連絡を取ることをお勧めします。
まとめ
いかがだったでしょうか。
売り手側としては、今回の公正取引委員会の公表に伴って、免税事業者のままでもデメリットが少なくなる場合があります。今一度取引先との話し合いを進めたり、課税事業者になることに伴う影響を試算し直したりし、自社にとってベストな選択ができるようにしましょう。
磯会計センターでは、顧問先に対して、インボイス課税事業者の登録申請だけでなく、インボイスの課税事業者になるべきか否かの相談も承っております。
インボイスのことについてもっとよく知りたい!インボイスの登録申請をしたほうが良いのかわからない!といった茨城の事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。
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