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【税金】役員退職金の実務③(常勤役員が非常勤役員となった場合・使用人から役員へ昇格した場合)

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【税金】役員退職金の実務③(常勤役員が非常勤役員となった場合・使用人から役員へ昇格した場合)

【税金】役員退職金の実務③(常勤役員が非常勤役員となった場合・使用人から役員へ昇格した場合)

2023/07/07

はじめに

 『役員退職金』は、取締役または監査役が退任した場合に、就任から退任までの期間に応じて支払われる金銭です。役員退職金の支給や計算に関する手続きは、一般の従業員に対する退職金の手続きとは異なる部分があります。ここでは役員退職金の実務上の取り扱いについて、テーマごとに複数回に分けて解説していきます。

 第3回は常勤役員が非常勤役員となった場合及び、使用人から役員へ昇格した場合についてです。

 

常勤役員が非常勤役員となった場合の役員退職金

 企業においては、社長を退任しても、取引先との信用力や認知度などの影響を考慮して、非常勤の役員として残る場合や、相談役として会社に残る場合があります。この時社長を退任した際に退職金相当の金品が支払われた場合は、分掌変更によって役員としての地位や職務の内容が激変して、実質的に退職したと同様の事情にあると認められれば、退職金として取り扱うことができます。具体的には以下の3つのケースが挙げられます。

1 常勤役員が非常勤役員になったこと。

 ただし、常勤していなくても代表権があったり、実質的にその法人の経営上主要な地位にある場合は除かれます。

2 取締役が監査役になったこと。

 ただし、監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている場合や、使用人兼務役員として認められない大株主である場合は除かれます。また、同族会社において、通常の取締役である同族関係者が監査役に移動する場合も、実質的な地位の変更が認められないケースが多いです。

3 分掌変更の後の役員の給与がおおむね50パーセント以上減少したこと。

ただし、分掌変更の後においても、その法人の経営上主要な地位を占めていると認められる場合は除かれます。

 

 上記全てに共通して重要となる、「法人の経営上主要な地位を占めている場合」の考え方については、過去の判例で以下の観点で判断するとされています。

・その役員の出勤状況

・取引先との折衝等

・金融機関との折衝等(借入の申込、金利の条件交渉)

・人事関係の決定等(従業員の採用決定、給料や賞与の査定)

・設備投資や経費支出に関する決裁 など

経営における重要な決定にあたっては、相談にとどめ、前線で関与することは控えることをお勧めします。

また、上記に関しては、実際に退職金を支給した際に損金算入が認められており、未払金に計上したものは、原則として退職金に含まれません。

 

使用人から役員へ昇格した場合の退職金

 法人の使用人が役員に昇格した場合において、退職給与規程に基づき、使用人であった期間について退職金を支給したときは、その支給した事業年度の損金の額に算入することができます。ただし、以下の場合には注意が必要です。

・使用人兼務役員が、使用人兼務役員でない役員となった場合

使用人兼務役員が、使用人兼務役員でない役員となった場合において、使用人兼務役員であった期間について退職金を支給したときは、原則としては給与として扱われます。

 使用人兼務役員であった期間に支給する退職金を退職所得とするためには、以下の要件を満たしている必要があります。

 1 過去において使用人から使用人兼務役員に昇格した者(使用人であった期間が相当の期間であるものに限ります。)であり、その昇格をした時に使用人であった期間に係る退職金の支給をしていないこと。

 2 支給した金額が使用人としての退職給与規程に基づき、使用人であった期間および使用人兼務役員であった期間を通算して、その使用人としての職務に対する退職金として計算され、かつ、退職金として相当な金額であると認められること。

 

・退職給与規程を制定して、使用人から役員に昇格した人に退職金を支給することとした場合

 法人が退職給与規程を制定して、使用人から役員に昇格した人に退職金を支給することとした場合に、その制定等の時に既に使用人から役員に昇格している人の全員に使用人であった期間の退職金をその制定の時に支給して損金の額に算入したときは、その支給が次のいずれにも該当するものについては、退職金として認められます。

 1 過去において、これらの人に使用人であった期間の退職金の支給をしていないこと

 2 支給した退職金の額が、その役員が役員となった直前の給与の額を基礎として、その後のベースアップの状況等をしんしゃくして計算される退職金の額として相当な金額であること。

 

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 特に常勤役員が非常勤役員となった場合の役員退職金の取り扱いに関しては、税務調査においても論点となるケースが多く、税務調査で「法人の経営上主要な地位を占めている」と指摘されないためにも、事前に対策をしておくようにしましょう。

 磯会計センターでは、茨城でお困りの中小事業主様や個人事業主様に、会計・税務から補助金・融資など幅広くサポートをしておりますので、お悩み事がございましたらぜひお気軽にご相談ください。

 

(本記事は、掲載時点の税制等に基づき記載しております。)

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