【税金】役員退職金の実務②(損金算入時期及び税額計算)
2023/07/05
はじめに
『役員退職金』は、取締役または監査役が退任した場合に、就任から退任までの期間に応じて支払われる金銭です。役員退職金の支給や計算に関する手続きは、一般の従業員に対する退職金の手続きとは異なる部分があります。ここでは役員退職金の実務上の取り扱いについて、テーマごとに複数回に分けて解説していきます。
第2回は損金算入時期及び税額計算についてです。
損金算入時期
第1回でご説明したように、役員退職金は、実務上は株主総会の決議により、支給額が決定されることがほとんどです。役員退職金の損金算入時期は原則として、株主総会の決議等により具体的な金額が確定した日が属する事業年度になります。退職した日ではないため注意しましょう。
ただし、法人が退職金を実際に支払った事業年度において、損金経理をした場合は、その支払った事業年度において損金の額に算入することも認められます。
高額な退職金が支給される場合、業績の悪い企業では、資金繰りの関係で相当程度遅れて退職金が支払われるケースがあるかと思いますが、退職後何年以内に支給しないといけないというルールは規定されていません。しかし、明らかに長期にわたってしまう場合、退職所得として認められないケースが考えられます。ここで相続税法においては、相続財産とみなされる退職手当金は「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」までという規定がある(相法3条1項2号)ため、法人税法上も目安となると考えられます。
税額計算
役員退職金から計算された退職所得に対しては、「所得税」と「住民税」の2つの税金が課せられます。
まず、役員退職金の退職所得は、次の計算式で求めます。
役員退職金の退職所得=(役員退職金支給額-退職所得控除)×1/2
ただし、勤続年数が5年以下で退職した役員の場合には2分の1の優遇が受けられず、次の計算式となります。
役員退職金の退職所得=(役員退職金支給額-退職所得控除)
続いて、上記の退職所得控除については、次の計算式で求めます。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合は80万円) |
20年超 | 800万円×70万円×(勤続年数-20年) |
※勤続年数は、役員としての勤続年数
上記の計算式で求めた役員退職金の退職所得に対し、所得税法上の所得税率(最大45%の累進課税)を乗じることによって所得税が計算されます。なお、現在は所得税額(基準所得税額)に2.1%の税率を乗じて算出する「復興特別所得税額」も併せて課税されます。また、住民税については、課税退職所得金額に住民税率(都道府県民税4%、市区町村税6%)を乗じることによっておおよその税額を計算することができます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
役員退職金を適切な時期に損金算入していないと、税務上否認されるケースがあるため、損金算入時期は押さえておくようにしましょう。また、勤続年数5年以下の役員の場合の退職所得の計算も、原則とは異なるため注意する必要があります。
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(本記事は、掲載時点の税制等に基づき記載しております。)
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