【税金】役員退職金の実務①(支給方法及び計算方法)
2023/07/03
はじめに
『役員退職金』は、取締役または監査役が退任した場合に、就任から退任までの期間に応じて支払われる金銭です。役員退職金の支給や計算に関する手続きは、一般の従業員に対する退職金の手続きとは異なる部分があります。ここでは役員退職金の実務上の取り扱いについて、テーマごとに複数回に分けて解説していきます。
第1回は支給方法及び計算方法についてです。
支給方法
役員退職金は就業規則などによる退職金規程は必要ありません。ただし、支給や支給時期について定款に記載するか、株主総会の決議が必要です。
なお、一般の従業員に対する退職金規定の作成も義務ではありませんが、合理的な労働条件を明確にし、従業員とのトラブルを事前に防止するため、就業規則等に退職金規程を設けるのが一般的となっています。
計算方法
役員退職金にはいくつか算定方法がありますが、今回は主な計算方法を二つ紹介します。
・功績倍率法
功績倍率法の計算式は以下の通りです。
役員退職金額=最終報酬月額×勤続年数×功績倍率
最終報酬月額:退職する前月の報酬金額
勤続年数:役員として在籍した年数
功績倍率:役職別の会社に対する貢献度
功績倍率は基準で定められているものではなく、企業ごとに決定して良いものとなっていますが、決定された役員報酬額が税務調査によって「不相当に高額」な金額であるとみなされた場合、「不相当に高額」な金額は損金に算入されません。そのため実務においては、東京高裁で過去に示された以下の判決内容を元に計算されるケースが多いです。
社長 :3.0
専務 :2.4
常務 :2.2
平取締役:1.8
監査役 :1.6
しかし、「不相当に高額な金額」であるかどうかの判断基準は、法令上「その法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員退職給与の支給状況」と比較して、「不相当に高額な金額」でないことが求められます。過去の判例においては、功績倍率3.0で計算した退職金が「不相当に高額な金額」であるとされた判例も多数存在するため、不安な場合には、専門家に依頼して「その法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員退職給与の支給状況」のデータを収集することが望ましいです。
・1年あたり平均法
1年あたり平均法の計算式は以下の通りです。
役員退職金額=類似する企業役員の退職給与の1年当たりの平均額×勤続年数
なお1年当たり平均額法は、基本的に、功績倍率法での計算に合理性がないケースにおいて、裁判等で用いられる計算方法であるため、一般的には用いられていません。
まとめ
いかがだったでしょうか。
役員退職金を適法に支給し、「不相当に高額な金額」であると税務調査で指摘されないためにも、支給方法や計算方法を押さえておくようにしましょう。
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(本記事は、掲載時点の税制等に基づき記載しております。)
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