【税金】同じ年に2箇所以上から退職金をもらう場合の退職所得を税理士が解説!
2023/05/29
はじめに
退職金は老後の生活のために重要な資金源となるため、退職所得の計算上、退職所得控除を差し引けたり、課税所得を1/2できたりと、税制上も非常に優遇されています。
退職所得の計算式
退職所得の金額=(退職金の金額-退職所得控除額)×1/2
勤続年数 |
退職所得控除額 |
勤続年数20年以下の場合 | 勤続年数×40万円(最低80万円) |
勤続年数20年超の場合 | 800万+(勤続年数-20年)×70万円 |
設例
勤続年数14年1カ月の従業員に退職金650万円を支給したときの税金
勤続年数:15年(1年未満の端数切り上げ)
退職所得控除額:40万円×15年=600万円
退職所得の金額(650万円-600万円)×1/2=25万円
所得税:250,000円×5%=12,500円
しかし、同じ年に2箇所以上から退職金をもらう場合、退職金ごとに上記の算定するわけではなく、退職金の合計金額に、退職所得控除の額が調整されることとなります。
なお、この退職所得には、会社から支給される退職金のほかに、iDeCoの返戻金や生命保険会社から一時金なども該当する場合があるため、「自分は1箇所でしか働いてないから関係ない」と思っていると、思わぬ落とし穴にハマってしまいます。
今回は、同じ年に2箇所以上から退職金をもらう場合の退職所得の計算方法を解説します。
同じ年に2箇所以上から退職金をもらう場合の退職所得の計算方法
①退職金支給額を合算
それぞれの退職金ごとに計算するのではなく、2箇所以上から退職金を合算します。
②退職所得控除を調整
退職所得控除における勤続年数は、それぞれの会社の勤続年数を合算することはできず、複数の勤続期間中の最も長い期間の勤続年数を適用します。ただし、その最も長い期間以外の期間のうちにその最も長い期間と重複していない期間がある場合は、その重複しない部分の期間を最も長い期間に加算して勤続年数を計算します。
(設例)
令和5年にA社とB社を退職、勤続期間及び受給する退職金は次のとおり。
A社 就職日:平成26年4月1日 退職予定日:令和5年3月31日
退職金支給予定月:令和5年5月
退職金支給予定額:400万円
(「受給に関する申告書」を支払者へ提出予定。)
B社 就職日:平成28年4月1日 退職予定日:令和5年7月31日
退職金支給予定月:令和5年9月
退職金支給予定額:180万円
(「受給に関する申告書」及びA社から交付を受ける退職所得の源泉徴収票は支払者へ提出予定。)
退職所得控除額:40万円×10年=400万円
(平成26年4月1日~令和5年3月31日の9年+令和5年7月31日までの4ヶ月=9年4ヶ月(1年未満切り上げ))
退職所得の金額(400万円+180万円-400万円)×1/2=90万円
(A社の400万円+B社の180万円)
所得税:900,000円×5%=45,000円
2箇所以上の退職金を支払うこととなった企業の手続き
ここまでは退職金を受け取った人が払う所得税という目線で解説しましたが、ここからは退職金を支払う企業側の目線で源泉徴収の方法を解説します。なお、開設にあたっては上記の設例をそのまま用います。
①A社の手続き
最初に退職金を払うこととなるA社は、通常通り勤続年数を計算し退職所得控除額を計算した上で、源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額を計算します。
(設例)
退職所得控除額:40万円×9年=360万円
退職所得の金額(400万円-360万円)×1/2=20万円
源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額:200,000円×5%×102.1%=10,210円
②B社の手続き
後に退職金を支払うこととなるB社は、A社からの退職金を把握する必要があります。こちらに関しては、退職者から提出してもらう「退職所得の受給に関する申告書」の「B欄」の記載内容から把握可能です。
その後の計算方法は下記のとおりです。
(設例)
退職所得控除額:40万円×10年=400万円
(平成26年4月1日~令和5年3月31日の9年+令和5年7月31日までの4ヶ月=9年4ヶ月(1年未満切り上げ))
退職所得の金額(400万円+180万円-400万円)×1/2=90万円
(A社の400万円+B社の180万円)
源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額:900,000円×5%×102.1%-10,210円=35,735円
(A社で源泉徴収された所得税及び復興特別所得税の額10,210円を差し引きます。)
まとめ
いかがだったでしょうか。
同じ年に2箇所以上から退職金をもらう場合は、合計の退職金総額につき、退職所得控除が算定されます。したがって、別々に計算した場合と比較して、退職所得控除額が小さくなり、多くの所得税を払うこととなります。
iDeCo等の老齢一時金などは、受取時期を調整することも可能なため、退職時期が重なってしまう場合には検討することをおすすめしますが、過去数年内に他の退職金がある場合の退職所得控除についても別途調整があるため、こちらについては次回解説いたします。
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(本記事は、掲載時点の税制等に基づき記載しております。)
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