【補助金】持続化補助金の概要を税理士が解説!
2023/05/22
(2024年2月9日改訂)
はじめに
皆様は「持続化補助金」をご存知でしょうか。小規模事業者の販路開拓や生産性向上のために設けられているこの補助金ですが、申請にあたっては、様々な書類を作成する必要があります。さらに、申請枠も複数あり、採択のための加点項目なども気をつけなければならないとなると、注意すべき点が多く存在します。
今回は、この「持続化補助金」の概要から、補助対象者や対象事業、申請方法や必要書類に関すること等のポイントを解説します。
概要
「持続化補助金」とは、小規模事業者自らが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。補助金の交付までの流れは下記のとおりです。(赤字が事業者が実施する項目です。)
①申請の準備
②申請手続き
③申請内容の審査
④採択・交付決定
⑤補助事業の実施
⑥実績報告書の提出
⑦確定検査・補助金額の確定
⑧補助金の請求
⑨補助金の入金
⑩事業効果報告
①申請の準備
ー補助金対象者
下記に該当する、法人、個人事業、特定非営利活動法人が対象です。
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
※1 上記には、役員や一定条件を満たすパートタイマー等は含みません。
※2 その他、子会社要件や課税所得要件(15億円以下)等があります。
ー補助率、補助上限額
下記の枠からいずれか一つの枠のみ申請可能です。
類型 | 通常枠 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 |
補助率 |
2/3 | 2/3※1 | 2/3 | ||
補助上限 |
50万円 |
200万円 | |||
インボイス特例 | +50万円※2 | ||||
追加申請要件 | ー | ※3 | ※4 | ※5 | ※6 |
※1 赤字事業者は3/4
※2 2021年9月30日から2023年9月30日までの課税期間のうち1度でも免税事業者であったものが、適格請求書発行事業者の登録をした場合に加算される
※3 補助事業の終了時点で、支給賃金を+30 50円すること(地域別最低賃金以上であることが前提)
※4 従業員数を、小規模事業者の従業員数を超えるように雇用すること
※5 「アトツギ甲子園」のファイナリストおよび準ファイナリストになった事業者であること
※6 「認定市区町村」等から「特定創業支援等事業」を受け、過去3年内に開業した事業者であること
ー補助対象経費
補助対象経費科目 |
活用事例 |
1. 機械装置等費 |
補助事業の遂行に必要な製造装置の購入等 |
2. 広報費 | 新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置等 |
3. ウェブサイト関連費 | ウェブサイトやECサイト等の構築、更新、改修、開発、運用にかかる経費 |
4. 展示会等出展費 | 展示会・商談会の出展料等 |
5. 旅費 | 販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための旅費 |
6. 開発費 | 新商品の試作品開発等に伴う経費 |
7. 資料購入費 | 補助事業に関連する資料・図書等 |
9. 借料 | 機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
10. 設備処分費 | 新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分等 |
11. 委託・外注費 | 店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼(契約必須) |
※1 ウェブサイト関連費は補助率1/4となり、ウェブサイト関連費のみでの申請はできない。
※2 設備処分費は補助率1/2となり、設備処分費のみでの申請はできない。
※3 汎用性が高く目的外使用になり得るもの(車・文房具・パソコン等)は補助対象外です。
※4 10万円を超える支払いについて現金支払いはできません。
※5 相殺や小切手、商品券等による支払いは補助対象外です。
※6 クレジットカード払い等で、口座から引き落とされた日が、補助事業実施期限を過ぎている支払いについては補助対象外です。
※7 中古品および100万円を超える支払いについては2社以上の見積もりが必要です。
※8 オークションによる購入は補助対象外です。
ー事業支援計画書(様式4)の交付
申請書類は、事前に地域の商工会または商工会議所に提出して「事業支援計画書」の交付を受けなければなりません。そのため、余裕を持った申請が必要となります。
ーその他必要書類の準備
書類には「必須書類」と「申請枠ごとに追加提出が必要な書類」があります。下記では法人の例を記載いたします。
【必須書類】
1.小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書(様式1)の原本(電子申請の場合は不要)
2.経営計画書兼補助事業計画書①(様式2)の原本
3.補助事業計画書②(様式3)の原本
4.事業支援計画書(様式4)の原本
5.補助金交付申請書(様式5)の原本
6.宣誓・同意書の原本
7.電子媒体(様式1~様式6(様式7~様式9))(電子申請の場合は不要)
8.貸借対照表および損益計算書(直近1期分)の写し
9.株式名簿の写し(該当者のみ)
【特別枠への申請時に追加提出が必要な書類】
ー賃金引上げ枠
1.賃金引上げ枠の申請に係る誓約書(様式7)の原本
2.労働基準法に基づく賃金台帳の写し
3.全従業員の雇用条件が記載された書類の写し
4.直近1期に税務署へ提出した税務署受付印のある、法人税申告書の別表一・別表四の写し(赤字事業者のみ)
ー卒業枠
1.卒業枠の申請に係る誓約書(様式8)の原本
2.直近1か月間における、労働基準法に基づく労働者名簿の写し
ー創業枠
1.「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を受けたことの証明書の写し
2.現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書(申請書の提出日から3か月以内の日付のもの)の写し
3.税務署受付印のある開業届の写し
ーインボイス特例
1.インボイス特例の申請に係る申請・同意書(様式9)の原本
2.適格請求書発行事業者の登録通知書の写し
②申請手続き
電子申請または郵送によって提出できますが、郵送の場合減点調整がなされるため電子申請をおすすめします。
電子申請に際しては、「GビズIDプライムアカウント」という電子申請手続きにて使用するIDの取得が必要です。アカウントの取得までに2週間ほどの期間が必要なため、事前に手続きを行なっておきましょう。申請はGビズIDのウェブサイトより行います。
電子申請にあたっては、独自の電子システムを使用します。
③申請内容の審査
持続化補助金は、支援金等とは異なり、すべての事業主が採択されるわけではありません。下記の審査ポイントを踏まえ綿密な申請書を提出するよう心がけましょう。
審査のポイント |
○自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。 ○経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。 ○経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。 ○補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。 ○補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。 ○補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。 ○補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。 ○補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。 ○事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。 |
また、申請にあたっては、加点項目もあり、【重点政策加点】、【政策加点】からそれぞれ1種類、合計2種類まで選択することができるため、該当する加点項目はもれなく記載するようにしましょう。
【重点政策加点】
加点項目 | 概要 |
赤字賃上げ加点 |
賃金引上げ枠に申請する事業者のうち、赤字である事業者に対して加点 |
事業環境変化加点 |
ウクライナ情勢や原油価格、LPガス価格等の高騰による影響を受けている 事業者に対して加点 |
東日本大震災加点 |
福島第一原子力発電所による被害を受けた水産加工業者等に対して加点 |
【政策加点】
加点項目 | 概要 |
パワーアップ型加点 |
●地域資源型 地域資源等を活用し、良いモノ・サービスを高く提供し、付加価値向上を 図るため、地域外への販売や新規事業のたち上げを行う計画に加点 提供する小規模 事業者による、地域内の需要喚起を目的とした取組等を行う計画に加点 |
経営力向上計画加点 |
中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業 者に対して加点 |
事業承継加点 |
代表者の年齢が満60歳以上の事業者で、かつ、後継者候補が補助事業を中心になって行う場合に加点 |
過疎地域加点 |
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に定める過疎地域に所在 し、地域経済の持続的発展につながる取り組みを行う事業者に対して、加点 |
④採択・交付決定
採択者に対して「交付決定通知書」が通知されます。
⑤補助事業の実施
「交付決定通知書」を受領後、補助事業計画に沿って事業を実施します。申請内容等を変更する場合は「計画変更申請書」を行います。補助事業実施期限までに支払いを完了したもののみが補助対象となるため、補助事業実施期限の変更は特に忘れないようにしましょう。
⑥実績報告書の提出
補助事業終了後、その日から起算して30日を経過した日又は最終提出期限のいずれか早い日までに補助事業の実施内容と支出内容をまとめた「実績報告書」を郵送します。最終締切までに提出がないと、補助金の支払ができなくなるため注意しましょう。
⑦確定検査・補助金額の確定
実績報告書のほか、支出ごとの証拠書類(見積書、発注書、契約書、納品書、請求書、領収書、預金通帳の該当部分 の写し等)について、事務局が審査・確認を行い、補助金額を確定します。証拠書類のないものは補助対象経費として認められないため、支出項目について、どの証拠書類が必要になるかを事前に確認しておきましょう。
⑧補助金の請求
補助金額が確定した後、「補助金確定通知書」が送付されます。金額を確認して、「精算払請求」を補助金事務局に対して行います。
⑨補助金の入金
請求後、振り込み手続き等を行うため、数週間程度かかります。
⑩事業効果報告
補助事業の完了から1年後、30日以内に「事業効果および賃金引上げ等状況報告」を提出します。これですべて完了となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
活用できる経費項目も多く、他の補助金制度と比較すると申請に関する手続きも多くないため、小規模事業者の方は積極的に活用されることをおすすめします。現状は第13回受付締切分(2023年9月7日締切)まで公表されてますが、今後も継続されるかどうかは未確定のため、早めに検討しましょう。
磯会計センターでは、持続化補助金の申請から、採択後までトータルサポートを実施しています。茨城でお困りの小規模事業者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
(本記事は掲載時点の税制等に基づいて掲載しています。)
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