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【税務】出向者給与の取り扱いについて税理士が解説!

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【税務】出向者給与の取り扱いについて税理士が解説!

【税務】出向者給与の取り扱いについて税理士が解説!

2023/05/03

はじめに

 コロナ禍をきっかけに、人材のシェアを目的にグループ会社や子会社に出向を行う企業が増えてきました。

 今回は出向者の給与に関する税務上の取り扱いや注意点について解説していきます。

 

そもそも出向とは?派遣との違いは?

 出向と似た用語に「派遣」という言葉がありますが、法律上の2つの取り扱いは完全に異なります。

 「派遣」とは、派遣元企業に雇用された派遣社員を派遣先企業で働かせる雇用形態のことをいいます。この場合、派遣社員と雇用契約を交わしているのは派遣元の企業となり、派遣先では雇用契約を交わさず、指揮命令関係があるだけとなります。

 一方「出向」とは、自社の社員を自社と関連のある別の企業(出向先)で働かせる雇用形態のことをいいます。さらに出向には「在籍出向」と「転籍出向」がありますが、いずれも出向先が従業員と雇用契約を交わします。(以下では、出向元との雇用契約を交わしながら出向先とも雇用契約を交わす「在籍出向」をベースに解説します)

 労働者派遣を行う場合には、「労働者派遣事業」をするために厚生労働大臣の許可が必要なのに対し、出向は許可が不要となっています。さらに労働者派遣では、雇用期間や労働時間について細かなルールが「労働派遣法」に定められておりますが、出向に関しては定めが設けられておらず、、出向元と出向先で話し合って出向者に関する取り扱いを決めていくこととなります。

 

出向者給与に関する税務上の取り扱い

 1.給与の負担者は出向元か出向先か

 税務上、出向者給与は、労働を提供した場所をもとに負担者を決定します。出向の場合は、基本的に出向先で労働力を提供しているため、出向者の給料は出向先が100%負担するのが原則です。そのため、出向元が給与を負担した場合、原則として出向先へ寄付を行なったとして寄付金課税の対象となります。

 2.給与の支払は出向元か出向先か

 在籍型出向の場合、出向元と出向先のどちらとも雇用契約を締結しているため、どちらから給与を支給しても問題ありません。ただし、出向元が支給する場合は、給与相当額について出向先から出向元へ給与負担金を支払うこととなります。

 3.会計処理や給与控除に関する取り扱い

 給与負担金については会計上の勘定科目の決まりはないため、出向先で支払った給与負担金を「給与」としても「支払手数料」としても問題ありませんし、出向元で受け取った給与負担金を「雑収入」としても「給与」のマイナスとしても問題ありません。なお、いずれにしても給与負担金は消費税上は不課税となります。

 次に源泉所得税・社会保険料・雇用保険ですが、こちらは直接従業員に給料支払う側に徴収・支払義務があります。

 一方労災保険については、実際就業している会社に納付義務があるためご注意ください。

 4.較差補填金の取り扱い

 「較差補填金」とは、出向元の給与額に比べて出向先の給与額が低いときに、差額分を出向元が補填することをいいます。上記のように原則は出向元が負担した給与は寄付金として取り扱われますが、出向先が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため出向元が出向者に対して賞与を支給する場合など、合理的な理由がある場合には損金として認められます。

 5.出向元が出向者に支払う給与より出向先からもらう給与負担金の方が多い場合

 この場合には差額金についての合理的な理由がない場合、寄付金として取り扱われることとなります。

 さらに当該ケースにおいては、後述する「労働者供給事業」に該当しないように注意する必要があります。

 

労働者供給事業とは?偽装出向とならないための注意点

 「労働者供給事業」とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、原則として禁止されています。出向のような形で労働力を供給し、対価を得ることを「偽装出向」といい、このような出向は労働者供給事業とみなされます。

 偽装出向とみなされるのは主に「事業として行なっている場合」であり、利益を得ることを目的に出向を行なっていたり、複数の企業に社員を出向させていたりすると、偽装出向とみなされてしまいます。そうならないためには、以下の厚生労働省で定めている在籍型出向の目的に沿った出向をさせるようにしましょう。

 ①労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する
 ②経営指導、技術指導を実施する
 ③職業能力開発の一環として行う
 ④企業グループ内の人事交流の一環として行う

 

まとめ

 いかがだったでしょうか。

 労働者派遣と出向は近似する部分もあるかと思いますが、実態や運用方法は大きく異なります。正しく理解し、法律違反とならないように注意する必要があるでしょう。

 また、出向に関する税務の取り扱いについては、当記事の内容以外にも様々ですので、詳しくは専門家に相談することをお勧めします。

 磯会計センターでは、茨城でお困りの中小事業主様や個人事業主様に、会計・税務から補助金・融資など幅広くサポートをしておりますので、お気軽にご相談ください。

 

(本記事は、掲載時点の税制等に基づき記載しております。)

 

 

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